たった一つの言葉・一つの
話で、嬉しくなったり、勇気
づけられたり、心が温かくな
ったり、逆に、落ち込んだり、
涙を流したり、喧嘩をしたり、
仲たがいをしたり・・・。
松下幸之助、稲盛和夫さんを
はじめ、多くの人を成功人生
へと導いた国民的人生哲学者、
中村天風はこんなことを言って
います。
「『もう駄目だ』と言ってばか
りいると本当に死んでしまうし、
どんなに苦しくとも
『オレは大丈夫だ』と口に出し
ていれば病も回復してくれる
ものだ」
殺せばすぐに息絶えてしまう
のが言葉です。
しかし、一度生かせばどこま
でも威力を発揮してくれるの
もまた、言葉の力の不思議で
す。
落語家の落ちこぼれで元商社
マンの私がいうのも変ですが、
取引先の工場の二代目を目指
す方で精神的に不安定の方が
多かった。
ある経営者の息子が、二世の
重圧から拒食症になって入院
しました。お粥の臭いを嗅い
だだけでも、もどすほどの重
症です。
それを見舞った私の上司が、
オロオロするご両親に、お粥
をスプーンで口に持っていっ
たとき、
嘘でもいいから「あっ、少し
入ったね」と言ってあげなさ
い忠告し、ワラにもすがる思
いで、早速その場で実践され
た。
それを続けるうちに、少しず
つ食べられるようになり、見
る間に回復されました。
心のこもった言葉が、相手に
この上ない「生きる力」を
与えた話です。
一つの言葉・一つの話のプラス
面を見つけ、それを自分の力と
するためには、
愛語(優しい心
のこもった言葉や前向きな言葉)
を受け取る側にも感じる力が
ないと、「見れども見えず、
聞けども聞こえず」ではあり
ませんが、
つい見過ごしたり、聞き捨て
たりしてしまい、相手の心を
揺り動かすことはありません。
そのひと言を愛語として受け
取るか否かは、「その人が、
そのとき、何に関心を持って
いるか」に大きく左右される
のです。