佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

手作りのパンによろこぶ君がいて 晩夏の一日 ただエピソード 

2023-08-12 13:10:25 | 日記
小さな嘘をひとつ、つく。
嘘が乾かないうちに、もう一度、
湿った唇を押し当てる。

失いたくない、大切な人を
守るために、必要な嘘というもの
があるのだ。

だから、嘘をついた自分を、責め
たりしない。

わたしは、昔みたいにまっすぐ
じゃない。枝をたまわせておけば、
折れないでいられることを学んだ。




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真夜中にルルル、ルルル、でとぎれたる電話の向こうを長く思えり

2023-08-12 13:07:15 | 日記
好きな人はたくさんいる
の」と答えつつ

答えつつふいになにか寂しい

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さよならに向かって朝がくることの涙の味でオムレツを焼く

2023-08-12 13:05:16 | 日記

イイ女とはどうい女性?
いわゆる大人の女って。
背筋のピンと伸びた女。
不必要に媚を売らない
自立した女。

自分の痛みを通して
人の痛みをおし計れる
女。
ベットの中以外の場所で
何時間も堂々と渡りあえる
女。
それでいて魅力的で女ら
しい大人の女。



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『わたしなしでも平気?』 

2023-08-12 12:18:48 | 日記
「お客様、大丈夫ですか?」
すぐ近くで物音がしたような
気配がして、あなたははっと
我に返る。

「はい?」
問い返したあなたの真正面に
立って、あなたを見つめている
バーテンダーのまなざしにぶつ
かる。が、その目は微妙にぶれ
て、ふたつではなくて四つ、あ
るように見える。おかしい。突
然、乱視になってしまったのか。

あなたはあわてて目をこする。
「少し、お具合が悪そうにお
見受けしましたの・・・・」
「あ、いえ、そんなことない
です、大丈夫です」
強いカクテルのせいなのか、ほ
んのつかのま、カウンターの上
に両肘をついたまま、片足だけ、
夢の世界に引きずりこまれてい
たようだ。

それにしても、気持ちのいい夢
だった。いつまでも見ていたい、
永遠に醒めたくないと思えるよう
な。夢のなかで、ふたりはベット
のなかにいて、彼はあなたに囁い
ていた。

あなたの体を優しく抱きしめて、
「妻にきみのことを打ち明けた」
と。何もかも話したよ。別れる
つもりだ。俺にはもう、きみしか
いない・・・・・。

腕時計を見ると、午後七時を
三十分以上、回っていた。
「同じものを、もう一杯」
あなたは注文する。バーテンダー
の背中に向かって、ため息をつく。
彼はまだやって来ない。どこからも、
姿を見せない。エレベーターの扉は
さっきから何度も、開いたり、閉ま
ったりしている。が。彼は乗って
いない。

あなたは気づく。やっとのことで、
悟る。今夜、彼は来ないのかもし
れない。いや、来ない。来ないに決
まっている。今日の約束は、あの
約束だったのだ。

あの約束――――

いつだったか、このバーのちょうど
真下にあるはずのベットの上で、
交わした指切り。

「いつものように待ち合わせをして、
仮にどちらか現れなかったら、それを
『別れ』のメッセージにしよう。
きれいさっぱり、あと腐れなく、
別れよう」
ついさっき見た、気持ちのいい夢が
一瞬にして、悪魔にすり替わる。

夢のなかで、誰かの体を抱きしめて
いるのは夫だ。夫は恋人の耳に囁い
てる。
「妻にきみのことを打ち明けた。何
もかも話した。別れるつもりだ。
俺にはもう、きみしかいない・・・・」

まぶたをこすっても、こすっても、
あなたの目にはすべて二重に映って
いる。



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この恋が消えてたまるか歌よみの一時の夢となってたまるか 副題「偶然力」

2023-08-12 12:17:47 | 日記
後になって「あれはこうなる
べくしてなったんだ」と思え
るような“偶然”というのが
あります。

偶然の力を信じていると、そ
のような意味のある偶然が
次々と身の回りで起こり始め、

その偶然がまた新たな偶然を
呼ぶようになります。
それを私は」「偶然力」などと
呼んでいるのですが、
この力を身につけるには、な
んでもいいからとにかく行動
することです。

ネットオークションでブランド
物のバックに大金をつぎこむ
なら、少し安いのでガマンして
残りのお金で“弾丸ツアー”に
出かける。

そのほうが、ずっと“活きた
お金“の使い方になると思います。
家でじっとしていても偶然の神さま
はやってきません。




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 二匹の鯉

2023-08-12 12:07:11 | 日記
留守番電話にあのひとの声が残
っていたのは、出会った日の翌
日。

それは、ほとんど空っぽになって
いる部屋で、翌朝には解約して
しまうことになっている電話機
が受信した、最後のメッセージ
だった。
再生ボタンを押したのは、夜中
の十二時ちょっと過ぎ。

四条河原町で友だちの佳代子と
会って、食事をし、お酒を飲ん
で、別れを惜しみつつ、アパー
トに戻ってきたところだった。

「書店でお目にかかった井上で
す。きのうはどうもありがとう。
おかげであの絵本、すごく喜ば
れました。もう一度お礼が言い
たくて、昼過ぎに本屋さんへ
立ち寄ってみました。

アルバイト、きのう辞められた
んですね。それで、お店の人に
無理矢理頼み込んで、電話番号
を教えてもらって、かけてます。
迷惑だったらごめんなさい。
今は、東京からかけてます。

あしたアメリカに戻ってしまい
ますが、今夜はずっとここにい
ます。内田という友人の家です。
よかったら電話下さい。番号は、
東京03の・・・・・」
ああ、なんてことだろうと
思った。
東京から、かけてます?
あしたは、アメリカへ?
昼過ぎに、立ち寄ってみた?

ああなんていうことだろうと、
思った。再会のチャンスが、すぐ
そばまでやってきていたのに、
わたしはそれを、取り逃してしま
ったのだと。なぜならわたしは
お世話になった人たちに挨拶する
ため、十一時少し前に書店を訪ね
ていたのだった。

それに、あしたはわたしも東京へ
戻るのに―――
お酒の酔いがいっぺに、醒めてし
まった。
何度かメッセージを再生しながら、
迷った。こんなに夜遅く電話して、
大丈夫だろうか。

でも、声が聞きたい。もう一度、
話したい。それに、あしたはアメ
リカへ行ってしまうなんて。

電話するなら、今しかないではな
いか。さんざん迷ったあげく、
かけてみることにした。呼び出し
音を五回鳴らして、誰も出なけれ
ば、切ろうと思っていた。

「はい、もしもし」
呼び出し一回で、飛び込んできた。
真夜中の海を照らす、灯台の
明かりのようなあのひとの声。
「待ってたよ」
と、あのひとは言った。

「さっきから電話のそばで、じ
っと待ってた。絶対にかかって
くるはずだと思って」

「どうして・・・・」
そんな、確信が持てたの?わたし
の気持ち、わかってたの?
「どうしてって?そんなの
当たり前じゃん」
火花がぱっと、弾けるような言い方。

遥る気持ちを抑えながら、わたし
は言った。
「あの、きょう、お店に来てくだ
さったんですよね」
「うん。新幹線に乗る前に。急に、
会いたくなって」
会いたくなって?
わたしに?

柔らかな薔薇の棘が、胸に刺さった。
純粋で、確かなもの。その時それが、
すっと食い込んだ。そんな気がした。

会いたかった、わたしも、すごく。

そんな風にして、あのひととわたし
はつながった。果てしなく広い海で、
巡り会えた二匹の魚のように、再び、
つながることができた。京都と東京
を結ぶ、電話線のはしっことはしっこ
にいながら。

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「シャネルとリップスティク」

2023-08-12 12:05:44 | 日記
リップスティックはシャネルが
生み出したものだ。携帯できる
口紅としてチューブに入れえ
ていたが、これがやがて改良
されて、プッシュ式のリップ
スティックとなった。

実用的であり、働く女たちの
必需品となった。
晩年に発表したベージュと黒の
バイカラーの靴も活動的な女
たちを喜ばせた。

傷つきやすい爪先が黒という
のは実用的だったし、足を小
さく見せる効果もあった。


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『指の間から伝えあってる』

2023-08-12 12:01:37 | 日記
書き終えた手紙を丁寧に四つに
畳んで、封筒に入れた。
封をしたあと、そこに口づけた。
口づけながら、思い出していた。

自分のことを、人前で、あなたは
わたしからどう呼ばれたい?

結婚して、アメリカに来たばかり
の頃、彼にそう尋ねたことがあった。
彼はわたしの夫となったのに「ハズ
バンド」と呼ばれるのを嫌がった。

「それなら、恋人がいいの?ボーイ
フレンド」と呼ばれるのを嫌がった。
「それなら、恋人がいいの?ボーイ
フレンドって言いましょうか?」
アメリカでは、結婚はしていないけ
れど一緒に暮らしている恋人のこと
を、ボーイフレンド、ガールフレン
ドと呼ぶ。

「それも、いやだな」
「じゃあ、なんて?」
「ラバーがいいな。キミにもずっと、
僕のラバーでいて欲しいから」
ラバーというのは日本語に訳すなら
愛人、いや、情人のほうが、もっと
近いかもしれない。

愛し合ってはいるのだけれど、それ
は日陰の愛、というイメージがある。
向日葵とたんぽぽと、真夏の空と真
っ白な雲を、全部足してもまだ、
「それよりももっと明るい」と言える
ほどの明かるい性格をした人を、
わたしはそれでも「ラバー」と呼んで
いる。

わたしもまた、「妻」には到底ならな
い。すべてにおいて不器用だし、
妻としての役割とか責任とか、そういう
のを果たすのは苦手だから。

たとえば彼が光なら、わたしは一生、
彼の日陰でありたい。
たとえば彼が楽園であるなら、わたし
はその記憶でありたい。

彼のそばにいる時、わたしは性来の
わたしでいられる。生成りの女。シン
プルな女。でもとても熱い東洋のパッ
ションを秘めた―――。

彼の「愛人」でいたかったから、彼と
結婚した。結婚して九年が過ぎたいう
のに、彼はいまだわたしの「可愛い
人」。

目に入れても痛くないほど大好きな、
素敵な「夫」の手に、この手紙が
届きますように。思いを込めて、
切手を貼った。
わたしも封筒に貼り付いて、彼の
もとまで飛んで行けたらいいなと
思った。

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青春の光と影

2023-08-12 11:58:32 | 日記
どうして?
どうして、喧嘩なんか、しちゃった
んだろう?
こんなにも好きで、こんなにも
会いたくて、三ヶ月ぶりに会えて、あ
んなにも嬉しかったはずなのに。

きっかけは、些細なことだった。
彼はきょうの午後、どこにも出かけた
くないと言い、私は町まで出かけて
食事をしたり、買い物をしたり、散歩
をしたり、夕方にはレゲエのコンサート
にも行きたいと主張し、出かけるか出
かけないか、について話し合っている
うちに、いつのまにか口喧嘩になり、

気がついたら「愛しているのかいないの
かを巡る、大きな口論に発展してしまっ
ていたのだった。

愛しているに決まっているのに、海よ
りも深く空よりも果てしなく、愛し
合っているという自信があるのに、

まったく、なんてことだろう。情けな
い。実にふがいない恋人たちだ。
貴重な時間をムダにしている。休暇は
一週間しかなくて、休暇の終わりには
また遠く、離れ離れになってしまう
のに。

わかっているのに、どちらも素直に
「ごめん」が言えないまま、彼は
部屋に閉じこもり、私は扉をさざ
とばーんと音をさせて閉め、こう
してバーにやって来て、ちっとも
酔えないお酒を飲んでいる。

なんとかしなきゃ、仲直りしな
きゃ。
このまま、大切な時間が、刻一刻と
失われていくのを、指をくわえて
見ているだけでいいの?いけない、
いけないよ、絶対にいけない。

竜巻のようにま巻き上がってくる
思いを抑え込んで、私は注文した。

「お願いします。うんと強いのを」
と頼んでみた。
「さ、できたよ。どうぞ、召し上がれ」
数分後、目の前に差し出されたのは、
いちごとミントの小枝で飾られた、
メキシカンガラスのゴブレット。

「可愛い!」
思わず、感嘆のため息がもれた。
ひと口飲んだあと、そのため息は
甘くなった。甘酸っぱくてせつない、
昔懐かしい味を彷彿させている。

ああ、この味は、いつかどこかで
味わった、何かの味にそっくりだ。
でも、なんの味なのか、うまく思い
出せない。

ストローで少しずつ、少しずつ、
吸い上げながら、味わってみる。
頭の芯が溶け出して、気持ちの編み
目がほどけてゆくのがわかる。

楽園は、近い。わたしのすぐそばに
ある。この胸のなかにある。この皮
膚の表面に宿っている。彼に触れた
い。触れられたいと願っている。

この指先に。
そこまで思った時、思い出した。
よみがえった。このカクテルの
味は、彼と交わした口づけの味だ。

パリのアパルトマンで、籠いっぱい
に盛られた摘みたての苺―――
彼がスケッチをするための果物だ
った―――を、ひとつぶ、お互い
に食べさせ合った午後。
シーツに残っていた切ない香り。

――苺みたいに甘い思い出を、たく
さんつくっておかなきゃ。あとで使
うために。

――使うの?どうやって?

――喧嘩なんかした時にね、ひとつ
ぶ取り出して口に含めば、仲直り
できるだろう?

――喧嘩なんか、しないもん。

――するよ。どんなに晴れた楽園
にも、雨は降ってくるからね。

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