牧場の日記~競走馬生産者の日々~

競走馬の生産牧場の現状と考察

お産の予測

2012年03月16日 | 馬のお産

馬のお産が近くなると色々な兆候がある。

乳頭にやにと呼ばれる分泌物がついたり、腰角がさがったり。

しかし、この兆候が出たからといって、明日あさってに産むということでもない。

馬によってはヤニがついてから1週間以上たってから産むものもあるし、ヤニがつかないで産むこともある。

最近の研究でおっぱいを搾ってPHをはかると、かなり高い確率で予測できるらしい。

お産があと2,3日に迫ってくると、PHがかわるそうだ。

リトマス試験紙とおっぱい2,3滴で検査できる。かなり高い確率で判るそうだ。

お産前におっぱいを搾ったことがないのでほんとにできるのか疑問だが、今1週間遅れている馬の監視をしている身としては、やってみる価値あるのでは?!

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以下 [JRA 日高育成牧場からの育成研究成果報告]  日本中央競馬会 日高育成牧場 専門役 頃末 憲治氏より抜粋

 ●採乳方法
① 採乳者および乳頭の消毒
採乳前には必ず石ケン等で手・指を洗浄し、乳頭を逆性石ケンで濡らしたガーゼで拭きます。
また、軽く乳頭をマッサージして、乳腺を活性化させます。
② 乳汁の採取
採乳側の後肢を後踏みさせてから採乳します。初産の場合には、必要であれば肩を取ったり、
鼻ネジ、枠場での保定を行い、徐々に慣らしていきます。乳汁の採取は、新生子の吸乳に対す
る馴致にもなります。
③ 乳汁中のゴミの除去
採取した容器から別の測定用の容器に移す際に、ガーゼでろ過し、ゴミを除去します。
●pH 値の測定手順と分娩日の推定
① pH 試験紙の実施
容器に入った乳汁中にpH-BTB 試験紙(6.2~7.6 の測定可能)を1~2 秒浸します。
② 標準色との比較によるpH 値の判定
pH 試験紙を浸した直後の色調を標準色と比較して、乳汁のpH 値を確認します。
③ 分娩日の推定
pH 値が6.4 に達してから48、72 時間以内に出産する確率はそれぞれ85%、98%となります。
pH 値が6.4 に達していなければ24 時間以内に分娩する確率は1%未満となります。
⇒ つまり検査当日の「夜間分娩監視が不要」という判断基準となります。


早期胎盤剥離

2012年02月19日 | 馬のお産

今年初めてのお産があった。

初子で予定日の一日前であった。

9時の夜飼いが終って、監視カメラで見ていたとき、いままでなんともなかったのが、そわそわし始めた。10時ごろ。

陣痛が始まりだしたのだと思ったが、痛がり出してかなり時間が経っても、なかなか破水しない。

初子だから、進みが遅いのかと、思ったが、そのうち破水しないうちからいきみだした。

見に行くと赤い袋が出ていた。11時

レッドバック。

20年近くお産にかかわってきたが、はじめて見た。

慌てて、これは早く破って子馬を出さなければ、と、馬のところに入っていくと、

馬が驚いて立ち上がった。

その勢いで、ばしゃっと袋が破れ、破水し、子馬の脚が出てきた。

もう一度すぐに親馬が横になったので、旦那と2人で思いっきり引っ張り出した。

すぐに子馬も出て、息もしていたのでほっとした。11時20分

酸素吸入の用意はしたけれど、結局酸素は使わなかった。

今思えば、吸わせても良かったのかな、と思う。

その後は順調で、1時間以内で立ち、2時間以内におっぱいを飲んだ。

ベビーチェックの値は750だった。

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以下JRA競走馬総合研究所のホームページより

 早期胎盤剥離


 陰部から赤い胎盤(赤い袋、レッドバック)が見えた際は、子宮と胎盤の早期剥離により、ガス交換ができない状態であるため、胎子が低酸素状態にあることが多い。発見が早ければ
助かることも多いが、発見が遅れると新生子の死に至る。獣医師の到着を待たずに、指示を仰ぎ、陰部から露出されている赤い胎盤の中心にある白い星状の部分を破り、胎子胎膜を露出させる。
 続いて羊膜を破り、胎子前肢を確認後、できるだけ早く牽引する(自然娩出を待たない)。


初子

2012年02月03日 | 馬のお産

今年は初子が3頭いる。

初子は何時産まれるか、無事産めるのか、ちゃんと子育てをするのか、わからないので、心配だ。

初子でなくても何時産まれるかは判らないのだが、なんにしろ初めての出産ってやつは、馬にとっても不安なことなのだ。

自分の経験から言っても、初めての出産が一番大変だった。

これを一人で乗り切るか、人間の手を借りて行うかで、後々いろんな意味で変わってくる。

不安な出産を手伝ってやることで、人間に対して頼ってくる感情が出てくる。

子馬とのコミュニケーションを邪魔することなく、お手伝いをすることが必要だ。

 

馬はいろんな意味で精神的なことが大きくかかわってくる、と思っている。


心臓は動いていた

2010年04月02日 | 馬のお産
予定日を2週間以上遅れていた馬がやっと出産したというのに、生後直死。

破水して1時間、少し遅い出産ではあったけれど、難産ではなかった。

普通に出てきたのだが、生まれ出た瞬間、呼吸をしなかった。

人間の赤ちゃんでいう、産声をあげなかった。

すぐに鼻から羊水を吸出し、人工呼吸をしたのだが、一向に呼吸が始まらなかった。

心臓は動いていた。人工呼吸をし始めた頃にははげしい鼓動が聞こえてきた。

獣医さんが来て、何かを注射したが(ステロイドであろうか)、何の変化もなかった。

15分くらいは人工呼吸をしていただろうか。

何とか息を吹き返して欲しいと、いのるような気持ちで旦那が片方の鼻の穴を押さえて、もう片方の鼻の穴から息を吹き込み、私は肺を広げるように、片足を引っ張っていた。

あとで、読んだ本によれば、人工呼吸は一分間に25回くらいのペースらしい。

獣医さんからは、息をしていない場合、子馬の鼻に牧草などをこよりのようにして突っ込んで刺激したり、子馬の頭につめたい水をかけて刺激したりしてもいいと助言された。

酸素吸入は、自発呼吸が始まってからじゃないと、意味がないらしい。



家畜保健所で死因を調べてもらったら、ERVではなかったので、ちょっとだけほっとした。

臍帯の一部にできものが出来ていて、それで、血行不良が起こっていた可能性があるといわれたが、それが、子馬が呼吸しなかった原因なのかは不明である。

血行不良がおこっていたにしては、子馬は立派に育っていた。

見た感じどこにも、栄養不良なところはなく、息をしないだけであった。

羊膜に無数のかさぶたのようなものがあったが、これも何か悪影響を及ぼしたのだろうか。

この母親は年末にちょっと大きな怪我をしたが、それのせいであろうか。

予定日の1ヶ月くらい前に陰部から汚れを出していたが、そのせいだろうか。

はっきりとした原因がわからないまま、大事な子馬が死んでしまった。

とてもくやしい。

お産の実況

2010年03月15日 | 馬のお産
昨日もお産があった。

お産のお手本のようなお産だった。

夕方収牧して、乳が張っていて、ヤニもついていたので、馬の体を念入りに手入れしていた。

すると、私の目の前で破水。

最初はちびちびしたおしっこかと思ったが、何時までも出るし、出方がおかしい。

そうこうしているうちに馬がごろんと寝て、おおきく破水。

袋も出てきた。

肢と頭の位置を確認した後、馬房から出て、お産を見守った。

立ったり、寝たり、いきんだりを繰り返すこと20分、馬も汗ばんできた。

これを見守るのはとてもつらい。

苦しそうだし、馬もはやく引っ張って出してくれとばかりにこっちを見る。

しかし、力任せに引っ張ってはいけない。

馬のいきみが強くなって来た頃に、子馬の脚を旦那が持って、誘導してやる。

私はとりあえず、親のお尻をさすってやった。

大きないきみとともに子馬が出てきたので、私は子馬の頭をもってスムーズに出られるように整えた。半分ぐらい出たところで、まだ羊膜が子馬の顔を覆っていたので破って顔をだしてやった。

すると、子馬はもう既に呼吸を始めていた。まだ体の半分が親の中にあるのに。

後は肢の先っぽだけ出さないでへその緒の拍動が収まるまで子馬を親の近くにおいておいた。

親馬は疲れ果てて起き上がらなかった。

子馬はとても元気で、出てすぐだというのにもう立ち上がろうとしていた。

へその緒の拍動が収まったところで親の顔元に子馬を持っていってやるとへその緒が切れ、親はうれしそうに子馬をなめていた。

このコッコはとても元気で、1時間ですくっと立ち、2時間くらいでおっぱいを飲んでいた。

胎盤も2時間半ほどで落ち、後腹病みもなかった。

親子ともに健康であることが一番だ。

これは早期胎盤剥離なのか?

2010年03月13日 | 馬のお産
昨日馬が出産した。

予定日より、11日遅れての出産。

馬房の中で、うろうろし始めて、小一時間、ゴロンと寝て、一度おきて、もう一度寝た。
そのまま馬はいきみ始め、パシャッと破水。それまで監視カメラで見ていた私は慌てて見に行き、そのときは羊膜につつまれた肢と顔がもうでていた。尾巻きを急いでまいているうちに、赤い膜が出てきた。

たぶん胎盤。このときに胎盤がでるのって、大丈夫なのだろうか。

まだコッコは顔までしか出ていない。

慌てて羊膜を破り、コッコが自力呼吸できるように顔を羊膜から出した。

急いでコッコを出さないと、と、思っていたら、親がものすごい勢いでいきんで、あっという間に生れ出てきた。

以前、早期胎盤剥離は赤い袋から出てきて、その場合仔が窒息しないように急いで出さなければいけないと、聞いていたので、すぐ出てくれてほっとした。

生れたコッコは少し元気がないが、問題なく自分で立ち、お乳も飲んでいる。

しかし、普通のコッコよりは元気がないように感じる。

酸素が少し不足したのだろうか。

産まれてすぐ酸素を吸わせた方が良かったのだろうか。



予定日すぎた

2010年03月11日 | 馬のお産
今年のお産は遅れ気味なのだろうか。

うちの牧場ではまだ馬が生まれていない。3頭の馬が予定日を過ぎてしまった。

近年うちの牧場では遅れる馬が多く、何が原因なのか、わからない。

早く生まれてしまうよりはいいが、あまり遅れすぎるのも心配だ。

寒い時期に予定日が来る馬は、遅れる傾向にあると思う。

馬も寒いと産む気にならないのかもしれない。

今年は3月になっても寒い日が続き、まだ、春らしい感じにはなっていない。

暖かくなったら一気にみんな産むのでしょうか。

お産

2010年03月08日 | 馬のお産
馬が出産するときにはなるべく自力出産させること、と言われる。

うちの牧場でも、それがいいと思っているし、そうしていると思っていた。

だが、よく考えてみると、本当の意味での自力出産ではないのだろうか、と思えてきた。

うちでは、子馬の脚がでて、親が横になって、ふんばりだしたら、とりあえず親の尻の辺りで様子を伺う。

そして子馬の顔が出てきたら、顔を地面から持ち上げて支えてやる。

そのままにしておくと子馬の顔が引っかかって、出にくくなる場合もあるのだ。

そして、子馬の肩がでるころは子馬の肢を軽くもって、馬の踏ん張りに合わせて誘導してやる。

もちろん引っ張ったりはしない。

高齢馬や、疲れが来てしまっている馬の場合は強く引っ張ることもあるが。

肩さえ出てしまえば、それ以上は子馬を持つことはない。

出た後は多少、子馬の脚を膣の中に残しておくと、親馬もあせっておきてしまうことがないので、ほぼ出た状態で、人は馬からはなれる。


自力出産と言うのは、すべてにおいて自力なのか。

私自身、3人子供を産んで一人目はいきんでもなかなか出ず、お医者さんが私のお腹をぐっと押して無理やり出した。そのときはものすごい出血で、後の回復に時間がかかった。

そういう経験をしているので、子馬を無理やり引っ張り出すには抵抗がある。

馬の中には人が介助する間もなく産み終わる馬もいる。

肢もって、顔支えて、誘導して、と言う手間はかえってお産の邪魔になっているのかもしれない。

・・・しかし、見ていたら、手を出さずにはいられない。


子馬の目の充血

2009年04月24日 | 馬のお産
子馬が産まれ子馬の目を見ると白目のところが充血していた。

それを見て自分の3人目の子供が生まれたとき、同じように目が充血していたことを思い出した。

それを見たときすごく心配して、目に異常があったらどうしようと、どきどきした。

子供のときはなんともなかったけど、馬で見るのは初めてなので少し心配。

今回のお産は、親がふんばりが強くて、ものすごい勢いで、子供を娩出していた。

そういえば私のときも3人目ということもあってか、あっという間に出てきたっけなあ、と。

こうやって馬のお産を自分のお産とついつい比べてしまう。

お産以外も、お乳をやったり、しつけをしたり。馬育ては人育てに似ている。

夜番

2009年04月20日 | 馬のお産
今日はもう産むという状態になってから今日で3日目。

おっぱいの張り具合から、もう絶対産むと、確信したのだが、あっけなくうらぎられている。

夜12時まで監視。旦那は交代で12時から監視。

一日5時間の睡眠時間。

一日中眠くてふらふらである。

眠くてもやらなければならないことはいっぱいあり、朝の直検、診療所、肥料撒き、堆肥撒き、種付け、と、次から次へと仕事がある。

暖かくなって馬の毛も抜けるし、分場へ移動するために、一才の馬運車の馴致とか、もうやけくそである。

買い物にでても、知った人と会うと、挨拶だの、世間話だのするのが面倒で、なるべく人の顔を見ないように、隠れるように買い物に行く。

全く愛想のないやつだと、思われてるんだろうなあ。どうでもいいけど。

とにかく、早く産まれて欲しい。

しっかり休んでしっかり仕事をしたい。