牧場の日記~競走馬生産者の日々~

競走馬の生産牧場の現状と考察

異常産

2019年03月09日 | 馬のお産

馬医者修行日記というブログをよく読ませていただいています。

そのブログに興味深い記事が載っていた。

正常でないお産についての過程をつづっているのだが、先生方の苦労がよくわかる。

苦労というのは当たっていないのかもしれないが。

うちでも何度か異常産に出くわした。

お産が始まって破水したのにいっこうに陣痛が起こってこない。

親馬は座ったり立ったり、姿勢は変えるのだがいきみが来ない。

そのうちあきらめてしまったかのように座り込んで休んでしまう。

近所の方がその日はたまたま社長が種付けでいなかったので手伝いに来てくれていて、

その人が、こういう奴は仔馬の足を引っ張ってやって刺激をしたほうがいい、と、ぐいぐいとひっぱった。

するとちょっといきみがくるけど、やっぱりそれ以上はもういきまない。

二人がかりでぐいぐいと刺激するように引っ張っていたら、しばらくしてつるっと子馬がでてしまった。

子宮口はもう完全に開いていたのだろう。

一時間くらいかかったが、子馬も母馬も無事だった。

ほかの異常産は、疝痛みたいな痛がり方から始まって、おかしいなと思って獣医さんを呼んで診てもらうと、破水してますね、とのこと。

このブログで書いたおととしの子宮破裂の件で割愛するが、結果として微弱陣痛で始まり、途中で子宮破裂が起こってしまった。

 

「母子の絆を尊重した分娩管理」とネットで検索するとノーザンファームの津田朋紀先生が細かく分娩について書いてくれている記事が見られます。

 

正常産をよく知り、異常産を知り、処置するとき、しなくていいときを見極めなくてはならない。

何が異常で何が今起こっていて、これが正常なのか、異常なのか判断しなければならない。

しかも、様子を見ている余裕がない。これがお産。

異常産はいろんなケースがあるので、症例を教えていただけることは大変重要なことだ。

本当に馬医者修行日記には感謝してもしきれない。

ありがとうございます。

 


ハサミで切る

2018年05月06日 | 馬のお産
陰部縫合した馬が出産するとき、陰部を切らなければならない。

JRAの指導本には産みそうになったら前もって獣医に切ってもらう、とあるが、うちではお産が始まってから、剃刀で切れ目を入れて対応していた。

今年縫合していた馬が出産したとき、大きく斜めに裂けてしまった。

治療してきれいに縫ってもらったが痛々しかった。

なので医療用ハサミで切った方がいいのかと思い、購入した。

いざ、次の縫合した馬のお産で、使ってみたが、剃刀で切るのと違い、痛そう。
切った瞬間馬がこっちを見る。

もっと、クライマックスのときまでそれ以上切り進めないで、ちょっと待った。

子馬が出てきてだいぶ出口が押されてきたときにジョキジョキと切ったら、一箇所から1ミリくらいの太さで血がぴゅーーっとでて止まらない。

手でつまんで止血しようとしたけれど止まらない。

そのうちお産が進んでそれどころでなくなり、今回は子馬が大きくて親がふん張ってもなかなか出なくて、社長と二人で引っ張って手伝ってやった。

やっとの思いで生まれて、そのころには血は止まっていた。

しかし、出血は500ccもあっただろうか、ねわらが血だらけになった。

その後は母子共に順調だった。

ベビーチェックのときに獣医さんに聞いたらそれで問題無いですよ、怖がらないで切ってください、とのことだった。

ビクビクしたけど、次はもうちょっとうまく出来ると思う。

問題は切るタイミングだ。


原因

2018年03月29日 | 馬のお産

今日、家畜保健所から先日死んでしまった仔馬の病性検定(診断)結果通知書が届いた。

肺に異常があっただけで他は異常なかったようだ。

結果として「生後直死原因の特定には至りませんでした。」とのことだった。

怖い伝染病や、感染症、栄養不足など、そういうものではなかったようだが、ではなぜこうなってしまったのかはわからない。

考えられることとしては、早期胎盤剥離で仔馬の酸素不足が起こって、胎便を羊水に出してしまい、それを吸い込んで肺が詰まってしまった。

なら、どうすればよかったのか。

JRAがつくった「JRA育成牧場管理指針」生産編(第2版)にこう書いてある。

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〇胎便吸引症候群

処置方法

先ずは、子馬の頭部を低く保持するように胸部を抱えて持ち上げて軽く叩くことで、肺および気道からの汚染羊水を排出させる。また、酸素供給や気道感染予防のための抗生物質投与を行う。

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今回、鼻をしごいたりタオルでさすったり拭いたりはしたけれど、持ち上げたりはしなかった。

獣医さんにやり方を聞いたら、肺をぎゅっと持ったり、気管をしごいたりするといいと言っていた。

もし、これをやっていたら、助かったかもしれない。鼻からいっぱい汚い羊水が出てくるのを見て、大丈夫だと楽観してしまっていた。

子馬の体重は58キロあった。一人で持ち上げるのは大変だっただろう。

後悔でいっぱいだ。

 

 


早期胎盤剥離と胎便が混ざった羊水

2018年03月19日 | 馬のお産

早期胎盤剥離でお産が始まった。

すぐに赤い袋を破ったら、緑色の袋が出てきた。

それも破ると、今度は胎便が混ざった羊水と、黄色く変色した仔馬の足だった。

ERVか!と心臓が止まりそうになったが、ショックを受けている暇はない。

すぐにこっこを引っ張り出した。

幸い、仔馬はすぐに呼吸を始め心臓もしっかりと打っていた。

いつもより念入りに仔馬をタオルで拭いてやったら、タオルが真っ黄色になった。

酸素吸入をして、様子を見ていたら、いつまでたってもぶるぶると震え、呼吸も心臓も早かった。

2時間たっても立てず、搾ったおっぱいも哺乳瓶で飲まなかった。

ラセリングで強制投与し、毛布や湯たんぽで温め、何度かそうしているうちに哺乳瓶で飲めるようになり、6時間後には自力で立てるようになった。

だが自分でおっぱいを吸うことはできなかった。

搾って飲ませているうちに今度は立てなくなってきてしまったので、獣医さんに点滴をしてもらった。

保温をしたり、さすってやったり、1~2時間おきに哺乳をし、一生懸命できる限りのことをしたつもりだったが、産まれて40時間で死んでしまった。

哺乳瓶でお乳を飲ませるとぐいぐい飲んだし、飲むよーと声をかけると嬉しそうにいなないたりしていたので、きっと持ち直すだろうと、

思っていたのだが、ぱたっと死んでしまった。

家畜保健所の検査ではERVではなかった。

とてもかわいらしい男の子だったのでつらくてたまらない。


pHは役に立つ

2013年03月27日 | 馬のお産

馬のお産を予測する方法におっぱいを搾ってpHを図る方法を去年から試している。

かなり精度というか、予測が確かで、pHが6.4以下になれば必ずその日に産んでいる。

そのためには必然的に予定日から毎日おっぱいを搾ることになるのだが、

毎日搾っていると、馬乳の変化もよくわかる。

 

最初は水のように透明で、だんだん白っぽく、最後はどろっとした感じになる。

その色でpHをpH試験紙で測る前にわかってくる。

おかげで、睡眠不足でふらふらになるまで監視を続けなくてもよくなっている。


難産ではないけれど

2012年04月08日 | 馬のお産

昨日のお産はとても心配なものだった。

普通に始まったお産であったが、出てきた足が正常な向きとは反対に出てきていた。

横になって産もうといきんでいる繁殖牝馬をたたき起こし、向きが正常になるように陰部に手を入れてひねってみたが、なかなか良い体勢にならない。

寝たりおきたりを何度か繰り返し、横になったときにこっこの肢をひねってみたらぐるっとかえってやっと正常になった。

ほっとしたのもつかの間、今度はこっこが大きすぎて、なかなか陣痛がきても、でてこない。

旦那と2人でひっぱってやっとの思いで生まれ出た。

繁殖牝馬はつかれきって、2時間寝ていた。

何度か起き上がったのだが、立っていられずすぐに寝てしまう。

胎盤がなかなかでないので、引っ張られて痛いから立っていられないのかもしれない。

子馬もお乳を飲みたがっていたので、寝ている母馬のお乳を搾り、哺乳瓶で飲ませてやった。

すると、胎盤もやっと出て、そのあとやっと繁殖も起きていられるようになった。

 

ぜんぜん起きないのでこのまま死んでしまうのではないかととても心配になった。

 

母子ともに健康です。

 


初乳のpH検査

2012年03月21日 | 馬のお産

初子の繁殖が予定日から13日も遅れている。

今朝になってようやくヤニらしきものがついたが、今晩も産む気配はない。

初乳のpH検査をしてみた。

初子のわりにおっぱいを触ることをあまり嫌がらない馬なので、おっぱいを搾ることは容易であった。

搾って出るのか疑問であったが、簡単に出てきた。

ほぼ無色透明。少しべたっとしている。

6.4から8.0まではかれる検査紙で5mで585円

送料500円で合計1139円

検査してみるとpH7.5くらい。

6.4に達してから出産になるとのことなので、やはり今日はないのか。

しばらく続けてみてみようと思う。