東日本大震災を経験した人間として、感じることを書きます。日本が地震列島であり、いつでも、どこでも、地震被害、津波被害に遭遇することは確実であると思います。しかし、奇異に感じることは津波が5M程度でも来ればすぐに住宅や、生産拠点が瓦解するような地域に建設や、生活拠点が置かれていることです。個人の資金では出来ないかもしれませんが、新築するとき、移転するときは高台に移転するなどは今からでも出来ることです。政府、自治体が、中長期的な方針を作成し、緊急性の高い分野、地域から、着手し、少しでも巨大地震による被害を最小にする対策を実行すべきです。
東北地方の沿岸部を見ても分かるように、破壊されたら、高台移転、集団移転に税金を投入し、やらざるを得なくなります。何よりもそのことで尊い人命を守ることがは出来るのだと思います。そして、地域産業を守ることも可能となるのではないか思います。
<北海道新聞社説>
内閣府の作業部会が、南海トラフ巨大地震対策の最終報告書をまとめた。
「地震の規模や発生時期を高い確度で予測することは困難」とし、地震予知が必ずしも有効でないと結論づけた。東海地方では地震発生から早いところで5分以内に津波が到達する。わずかな時間差が生死を分けるだけに数十分、数時間前の予知への期待が大きかった。
研究の限界をもっと早く見極めていれば、巨額の研究費を防災の観点から多角的に利用することができただろう。政府は本年度中に地震対策大綱をまとめる。東日本大震災の悲劇を繰り返さないためにも、実効力を伴う内容にしてもらいたい。影響を受ける東海・東南海・南海地方は人口や産業の集積地だ。交通、物流の大動脈でもある。集中型開発からの脱却を真剣に考え、実行に移す時期だと認識する必要がある。
報告書は「国としての存立にかかわる」と強い言葉で警鐘を鳴らした。危機感をもはや先送りすることは許されない。
根拠とするのは最大950万人と見積もった避難者数にある。この数字の持つ意味は極めて重い。避難所だけでは到底対処できない。このため深刻度の低い人から自宅に戻し、急場をしのいでもらうトリアージの考え方を初めて示した。しかし、押し寄せる避難者を切迫度に従い選別できるか。緊急性を考慮して「引き取ってくれ」と説得することが果たして可能なのか。大混乱するのは必至ではないか。こうした事態を回避するためにも避難所を1カ所でも増やし、収容能力の拡大を図ることが不可欠だ。トリアージは事前に手順を明確化したうえで最後の手段と考えるべきだ。
水、食料などの家庭備蓄を1週間以上としたのも当然の措置である。都市機能が喪失すれば、復旧に時間がかかる。国民一人一人が周到な備えを心がけなければならない。
道内も無縁ではない。最大の道東500年間隔地震は南海トラフと同規模で、いつ来てもおかしくない時期に差し掛かっている。津波の浸水範囲は釧路市の13万人をはじめ、全道43万人の居住域に及ぶ。避難所確保の深刻さは南海トラフに匹敵する。各自治体はどの程度の収容能力があるかを見極めたうえで、民間施設も活用して避難先を増強する努力が欠かせない。高層の建物がない地域は高台への避難路整備や津波避難タワーの検討を急いでもらいたい。
先頭に立つべき道はいまだに最大地震の被害想定を見直していない。道民の命を預かる自覚を求める。