アートセラピーやみつき昔話Ⅱ

ある日、高齢者の心身を、特別養護老人ホームだけで学ぶのも視野が狭い様な感じがしてしまった私は、在宅介護にも飛び込んでみることにしました。
そこには、全介助の、ご高齢のお母様と息子さんの２人暮らしの生活がありました。
お母様は全介助ですが、思考はしっかりとされていて、あと、座ることと、左手（効き手ではない方の手）を少し動かすことはできました。
そして何より芸術がお好きでした。
息子さんも、とても心優しい方で、やはり芸術がお好きでした。
しかし、長年の介護と仕事との両立疲れからか、顔を合わせると暴言・暴力が飛び出してしまうという状況でした。
私には、家族の歴史に触れる権利も力もありませんが、アートセラピーの提供だけは、させて頂きました。

芸術好きのお母様は、毎回
「こうしていると、いやな事が全部忘れられるわ」
と本当に楽しそうに、片手で作品作りに熱中されました。

そして何より嬉しかったのは、その作品を見た息子さんが、
「おふくろは、こう見えても芸術的センスが、かなりあるんですよ。」
と、いつもの暴言ではなく、素直にお母様を自慢されたことでした。

その言葉に、お母様も笑顔満開。

アートの、人と人とをつなげる力は、ここまですごいんだ！と、この時、本当に確信しました。

この体験は私に今も強く強く、残っています。


RIYOKO