第14場
駅での大立ち回りのその頃美代松では、圭吾と時江はなかなか来ない知らせに焦りを感じていた。
そんな二人に美千代は、二人が付き合った経過を語って聞かせる。
名門の老松の娘でいる孤独感と感じていた咲江と、歓迎されないよそ者として転校してきた圭介の似た者同士が仲良くなった事などを・・
圭吾と時江にとっては初めて聞く話ばかりであった。
折しも権藤金融の寛治が美代松へ向かっていた。
そこへ二人が見っかったとの知らせが入る。
喜び安堵する圭吾と時江。
寛治が入って来る。
寛治 「コンチワ」
美千代 「あら、何の様かしら」
圭吾 「美千代君。私なんだ、寛治君に此処に来るように頼んだのは」
美千代 「社長さんが?」
寛治 「(書類入れ)持って来ました」
圭吾 「ああ、済まなかったね」
美千代 「それは?」
寛治 「老松の債権の書類一式だ。富田の社長がオヤジと掛け合ったんだ」
美千代 「それじゃ・・・」
圭吾 「ああ、私が譲ってもらった」
美千代 「じゃ、老松は助かったの?」
圭吾 「ああ、そうだよ。お嬢さん、これを受け取って下さい」
圭吾、書類入れを時江に渡す。
時江 「(手を合わせる)有難う、恩に来ます。有難うございます」
圭吾 「お嬢さん、そんな真似止めて下さい。私はお役に立っただけでうれしいんですから」
美千代が出て来る。
美千代 「寛治さん。・・・あのう」
声に気づき振り返る寛治。
美千代 「アリガトウ」
頭を下げる美千代。
・
圭吾 「でも、よかったですね、二人見つかって」
時江 「こんな事があるなんて・・」
・
寛治 「礼はいらねえ、これも仕事だ」
時江 「・・・あたし、大ちゃんの話を聞いた時、父の事を恨んだ。・・・でもね、あたしも老松を守る為に、娘をエサに父と同じことをしようとしたの。・・・恥ずかしいわ」
・
寛治 「じゃな」
美千代 「あの・・有難うって・・・寛十さんに有難うって・・・伝えてくれる」
・
圭吾 「・・・御嬢さん。それは守る家を持っている当主の責任がそうさせたんです。恥じる事はありませんよ。それにこれからどうとでもなります」
・
寛治 「・・・ああ、確かに伝えるよ」
・
時江 「でも、取り戻せない事もありますよね」
圭吾 「・・・御嬢さん、それが人生ってやつですよ」
沈黙。
・
寛治 「じゃあ、俺はこれで」
行く寛治。
見送る美千代。
美千代 「サヨウナラ」
時江 「そうね・・・これも人生ね」
圭吾 「・・・そう、そうですね。・・これも・・・そうですね」
二人から笑いが起こる。
笑いの中に涙が滲む。
これを持ちまして劇団芝居屋第38回公演「美代松物語」物語紹介は千秋楽を迎えました。
これからも劇団芝居屋は市井に生きる人々の特別ではない人生を切り取り「覗かれる人生芝居」として提供して参りますのでご支援の程よろしくお願いします。
有難うございました!!
駅での大立ち回りのその頃美代松では、圭吾と時江はなかなか来ない知らせに焦りを感じていた。
そんな二人に美千代は、二人が付き合った経過を語って聞かせる。
名門の老松の娘でいる孤独感と感じていた咲江と、歓迎されないよそ者として転校してきた圭介の似た者同士が仲良くなった事などを・・
圭吾と時江にとっては初めて聞く話ばかりであった。
折しも権藤金融の寛治が美代松へ向かっていた。
そこへ二人が見っかったとの知らせが入る。
喜び安堵する圭吾と時江。
寛治が入って来る。
寛治 「コンチワ」
美千代 「あら、何の様かしら」
圭吾 「美千代君。私なんだ、寛治君に此処に来るように頼んだのは」
美千代 「社長さんが?」
寛治 「(書類入れ)持って来ました」
圭吾 「ああ、済まなかったね」
美千代 「それは?」
寛治 「老松の債権の書類一式だ。富田の社長がオヤジと掛け合ったんだ」
美千代 「それじゃ・・・」
圭吾 「ああ、私が譲ってもらった」
美千代 「じゃ、老松は助かったの?」
圭吾 「ああ、そうだよ。お嬢さん、これを受け取って下さい」
圭吾、書類入れを時江に渡す。
時江 「(手を合わせる)有難う、恩に来ます。有難うございます」
圭吾 「お嬢さん、そんな真似止めて下さい。私はお役に立っただけでうれしいんですから」
美千代が出て来る。
美千代 「寛治さん。・・・あのう」
声に気づき振り返る寛治。
美千代 「アリガトウ」
頭を下げる美千代。
・
圭吾 「でも、よかったですね、二人見つかって」
時江 「こんな事があるなんて・・」
・
寛治 「礼はいらねえ、これも仕事だ」
時江 「・・・あたし、大ちゃんの話を聞いた時、父の事を恨んだ。・・・でもね、あたしも老松を守る為に、娘をエサに父と同じことをしようとしたの。・・・恥ずかしいわ」
・
寛治 「じゃな」
美千代 「あの・・有難うって・・・寛十さんに有難うって・・・伝えてくれる」
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圭吾 「・・・御嬢さん。それは守る家を持っている当主の責任がそうさせたんです。恥じる事はありませんよ。それにこれからどうとでもなります」
・
寛治 「・・・ああ、確かに伝えるよ」
・
時江 「でも、取り戻せない事もありますよね」
圭吾 「・・・御嬢さん、それが人生ってやつですよ」
沈黙。
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寛治 「じゃあ、俺はこれで」
行く寛治。
見送る美千代。
美千代 「サヨウナラ」
時江 「そうね・・・これも人生ね」
圭吾 「・・・そう、そうですね。・・これも・・・そうですね」
二人から笑いが起こる。
笑いの中に涙が滲む。
これを持ちまして劇団芝居屋第38回公演「美代松物語」物語紹介は千秋楽を迎えました。
これからも劇団芝居屋は市井に生きる人々の特別ではない人生を切り取り「覗かれる人生芝居」として提供して参りますのでご支援の程よろしくお願いします。
有難うございました!!
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