序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

稽古について3

2008-08-23 14:35:51 | 日記・エッセイ・コラム

Photo さて俳優にとって台本を読むとはどの様な事ででしょう。

台本は俳優にとって新たに創り上げる虚構世界に入る為の道しるべであり、その世界の住人としてある為の材料です。

ここであえて私は材料という言葉を使いました。後で述べますが、台本=材料という意識が俳優が表現者である為の大きな要素となるからです。

初めて台本を手渡された俳優はどう台本を読むでしょう。まずどんな内容(物語)なのかに興味を持ってその台本からその世界を読み取ろうとするでしょう。そして状況を読み取り、関係を読み取り、個人を読み取る。読み取り方は個人によって異なるり

ますが凡そはその様な事でしょう。

つまり書かれてある事を大枠から捉えようとする目線です。この読み方は読者としての読み方です。

この読み方を「読者的読み方」と名付けたいと思います。

(

)

この「読者的読み方とは」、全体から細部へといった読み方です。何が言いたくてこの作品を創ったかを解釈し理解しようとする読み方です。世界は既にあると認識する読み方です。

この読み方では、登場する人物達は全体を組み立てる為の部分という位置付けとなっています。全体の構成を提示して行く案内係としての役割であり、出来事の説明者としての役割を持っています。そこで要求される事はだいたいのキャラクターであり、こんな感じの人物である。そこに俳優個人が表現者として参加する余地はありませんそこで劇団芝居屋は「読者的読み方」に加えて「役者的読み方」を提案しています。

劇団芝居屋の提案する「役者的読み方」とは「読者的読み方」と相反する読み方です。極私的な読み方です。俳優が役者として立たなければこの世界はないと考える読み方です。僕(私)がいないと世界はないと認識する読み方です。役割ではなく生きる人間を創る為の読み方です。

この「役者的読み方」をするには、老婆心ながらくれぐれも断っておきますが、まずどんな内容(物語)なのかその世界を読み取り、そして状況を読み取り、関係を読み取り、個人を読み取るといった「読者的読み方」をしてから後に始まるという事をくれぐれも忘れないでください。

この読み方は自分の役柄が決った時から開始されます。つまり俳優が役者となった時点です。ここから台本イコール材料という世界に入ります。

そして先に言った極私的読み方から始まります。ここでまず始めに要求されるのはこの虚構(劇)に登場する以前の私を創る事です。作品世界を読み取り、そして状況を読み取り、関係を読み取り、個人を読み取ってどの様な人間として登場したいのかという欲求を見つける事です。

読者的読み方」で汲み取った役割を利用して個人を明確化することです。その為には明確な自分史を描く事は欠かせません。そしてそこから他人との関わりを探すのです。つまり個人から世界を見るのです。自分の知らない事や分からない事や好ましい事や嫌いな事といった具体的な事をはっきり創る事です。

そして書かれてある自分の行動、自分を取り巻く環境の中で自分の位置を探し、自分が何者であるかを明確に造形し、固有名詞を持ち自分の心を明確にします。自分の心が明確になれば発する言葉は決ってくるものです、こうとしか言えない自分の言葉が。

決して目の前にある台詞をどう言おうかなどという低次元な場所から発してはなりません。

次回は具体的な例を挙げながら説明したいと思います。

(

)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿