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序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第24回公演「チェンジ」舞台写真&ストーリー13

2012-11-19 17:59:26 | 日記・エッセイ・コラム

光江の素早い処置で源蔵は一命をとりとめた。

この件以来ホタムイの村人達の光江への信頼はいやがうえにも高まっていくのであった22。

8月22日(水)

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光江 「八月二十二日水曜日。・・・ん~、現在の心境は複雑。ホタムイに通えば通う程、へき地医療の問題点がはっきりと見えてくる。禎子さんや源蔵さんの様に治療の為に町に行かなければならない疾患が発生した時の運搬体制なんてお粗末なものだ。これはどうしても行政でやって貰わなければならない事案だ。・・・だいたい診療所だというのに心電図置いてないなんて、こんな事じゃ満足な診断なんかできやしない。・・・ああ、わたしなんでこんなに熱くなってるんだろう。・・・三ヵ月の延長期間もあと1ヵ月半か・・・・父は何も言ってくれない。分かってる分かってるんだ・・・自分で決めなきゃ・・・でも・・・ああ・・・」<o:p></o:p>

その頃小康状態とたもっている源蔵宅に、長老組の大槻の昇平と田所の禎子が源蔵に呼ばれて訪ねてくる。

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源蔵の世話をする真由美のおなかは今にもはち切れそうなくらいの大きさになっていた。

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源蔵は生まれ来る孫の為にもホタムイの将来を何とかしようと考えていた。

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 昇平 「ところで話ってのは?」
禎子 「わざわざ二人に召集掛けるなんて珍しいやね」
源蔵 「ああ、その事よ。若いのが地区担当の横川さん巻き込んで、ウニの養殖の始めようと動いてるのは知ってるべ」
昇平 「ああ、知ってる。奴らの言ってるのは何の裏付けもねえ夢物語だ。水産試験所の連中とも連絡を取ってるらしいが、金出すのは俺達だべさ。大体ウチの俊夫なんか漁師の癖に船酔いなんかしやがって頼りねえたらありゃしねえ、他の連中も似たようなもんだ」
禎子 「あんた、ウチの竜也は一人前だよ」
昇平 「・・・いやいや、だとしてもよ、他はもう駄目よ。そんな連中のいう事気にすることはねえ」
禎子 「それがどうしたのさ」
源蔵 「・・・奴らに任してみようと思うんだ」
昇平 「エッ!・・・でも前までは・・・」
源蔵 「今回の事で俺も考えたさ。医者が言ってた。今までの不摂生がドッと出たんだって、ちゃんと療養しないと長くないよってな」
昇平 「そんな事言うんだったら俺だって同じこった」
禎子 「ワチもそうだわ」<o:p></o:p>

      三人思わず顔を見合わせ笑う。<o:p></o:p>

 源蔵 「ホラな、みんなガタガタだ。こんなのが先頭に立っているようじゃホタムイの先は見えてべ」
禎子 「まあ、そうだな」
昇平 「だけどよ・・・」
源蔵 「俺は洋平に全部渡そうと思ってる」

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昇平 「ええ。源ちゃんまだ早いよ。まだまだだよ」
源蔵 「俺もそうだと思ってた。でも俺は忘れてたんだ、自分の若い頃の事をよ」昇平 「何の事よ」
源蔵 「昇平、憶えてるか。俺が親父から舵を任されたのは二十歳そこそこの頃だ。そうだったべや」
昇平 「ああ、そうだ。でもよ・・・」
源蔵 「俺もお前もまだまだ半人前もいいとこだった。今の若いのなんてまだましだ。そんな俺達が明日から二人で漁に出ろっていきなり言われてよ・・・」
昇平 「ああ・・・そうだったな。二人してあたふたしながら、漁場のポイントさがしてな。結局その日は何回網入れても漁がなかった。情けなくてな二人で泣いたっけ」
源蔵 「でもよ、何とかやって来たじゃねえか。そうだべ。結局何とかするのは傍じゃねえ、俺達自身だったべや。連中だってそうよ」
禎子 「そうだね。あぶなかっしいけど自分達で何とかしようとしてるもんな」
昇平 「だけどあぶなっかしいのはあぶなかしいべや」
源蔵 「だから、それを助けてやんのが俺達の役目なんだべや」
昇平 「まあ、そりゃあそうだが・・・
禎子 「そうだね、そんな歳になったのかね」
源蔵 「そんな歳になったんだべな」
昇平 「・・でもウチのは頼りねえからな」

老若のいざこざも元をただせばホタムイの将来を考えての事なのだ。<o:p></o:p>

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そんな歳になったのかね・・・

ああ、そんな歳になったんだべな・・・125

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たまたま往診に来ていた光江が挨拶に立ち寄る。

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 光江 「・・・じゃ、源蔵さんあたしは帰りますけど、先ほども言った様に、あたしは町の病院に入院することをお勧めします。今回は狭心症という事で済みましたけどね。心筋梗塞にも気を付けなればいけないし、検査の結果糖尿も高血圧の症状もかなり進んでいます。だからしばらく入院して病気と向き合う生活ペースを手に入れた方がいいと思います」
源蔵 「いや、俺は今のままでいい。大丈夫だ」
光江 「・・いいえ、決して大丈夫じゃありませんよ。その気になったらいつでも言ってください、すぐに手続しますから」
源蔵 「わかった。ご苦労さんでした」

美由紀の心配をよそに意固地な源蔵であった。

続く

撮影者 鏡田伸幸

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