序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第36回公演「通せんぼ横丁」第二場ー1

2018-11-27 20:21:55 | 覗かれる人生芝居


   夕焼けに染まりつつある「通せんぼ横町」と階段。
   宮本太郎が来て規制線を怪訝に思い看板を読む。
太郎 「横丁が立ち退きだあ?・・・何だ、こりゃ。どういう事だ」
     階段を下りて、店を見て回り張り紙に見入る。
太郎 「閉店ってどういう事だ、移転ってどういう事だ」
    娘の美樹が来る。    
 美樹 「お父さん」
太郎 「おお、美樹か。なんだ、どういう事だ」
美樹 「な、何ヨ」
太郎 「だから閉店ってなんだ、区画整理事業の為の転居って、これはどういう事だ」
美樹 「ねえ、興奮しないで」
太郎 「俺は、興奮なんかしてないぞ、俺は。どういう事かって聞いてるんだ」

美樹 「だから、看板に書いてある通りよ、防災の為の区画整理地区にここら一帯がなったの」
太郎 「だからなんでだ、ここは倉本の土地だろう。倉本は、あいつは何やってたんだ」
美樹 「オイ、太郎!」

     美樹の剣幕に驚き息を飲む太郎。

美樹 「それが久しぶりに会った娘にする態度なの」
太郎 「エッ!・・・(咳払い)ああ、悪い悪い。どうだ、元気だったか」

美樹 「なによ、それ!」
太郎 「エッ!いや、だから元気かと・・・」
美樹 「大体ね、事前に何の連絡もなく帰って来て、いきなり電話でここで待ってるからすぐに来いってどういう事。私だって立派な社会人で生活ってものがあるの、どんな事をやりくりして此処に来ているのか分かってるの」
太郎 「いや、それは・・・」
美樹 「いや、分かってる訳ないわね、人が何やってようがお構いなしなんだから。ずっと放っぽりぱなしのくせに一年に一回帰って来たからって父親面して欲しくないわね。どれだけ有名が画伯さんかは知らないけど、そんなの私に関係ないんだから、もういい歳なんだから自分中心に世の中動いてないって事に気づいたらどうなのよ」

美樹の携帯が鳴る。
太郎 「オイ、電話」
美樹 「分かってる!(携帯へ)モシモシ・・・はい、私、辻本美樹ですが・・・ああ、倉本のおじ様・・・」
太郎 「えっ、倉本か、倉本だったら・・」
美樹 「シッ!」
太郎 「ハイ」
美樹 「・・・ああ、ごめんなさい。今のは父に言ったんです。いきなり日本に帰ってるから会えって、まったく勝手ですよね」

太郎 「モシモシ、俺だ・・・ええなに、身体?そんな事はいいんだ・・・勝利、お前どういう事だ。・・・だから通せんぼ横丁の事だよ、光子の店の事だ。・・・そうだよ、区画整理ってどういうことなんだ。お前、地主だろう、なんで簡単に役所のいう事聞いたんだよ・・・前から計画があったって何とかできなかったのか・・・なんだ、俺がバカだというのか・・・貴様な、あれだけ約束しただろう、それを・・・なに?代われ・・・美樹と?・・・今俺が話してるんだろうが、お前、誤魔化すんじゃないよ・・・」

美樹 「代わりました。すいません失礼な事ばかり言って・・・えっ、どういう事ですか・・・エッ!」
太郎に視線を送る美樹。
     固まる太郎。
美樹 「ああ、それで急に・・・」
     美樹から離れる太郎。
太郎の服を掴む美樹。

美樹 「ここに居て!・・・いや、すいません。今のはおじ様じゃなく父に・・・ええ・・・ハイ・・・そうですね、それはハッキリした事を私も聞きたいです」
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美樹 「お父さん」
太郎 「ハイ」
美樹 「これから倉本のおじさまの所に行きます」
太郎 「ハイ」
美樹 「行ったら感情的にならないで、何もかも正直に話して下さいね。これは娘としてのお願いです。聞いてもらえますか」
太郎 「・・・ハイ」
美樹 「じゃ、行きましょう」

第二場ー2に続く。
撮影鏡田伸幸


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