エスせんブログ

ラノベ好きなB級小学校教師のエスせんが、教育中心に色々語るブログです。少しでも面白ければ「いいね」御願いします。

海洋冒険小説してる『幕府密命弁財船・疾渡丸(二)』

2024-10-24 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り…ですが、今回はラノベではなく時代劇です。
 今回紹介する作品は、早川隆先生の『幕府密命弁財船・疾渡丸(二)』です。令和6年9月5日に1巻目について記事を書きました。今回は、その2巻目です。
 2巻目の大まかな内容については、早川先生御自身がnoteの記事にまとめてくださっています。読むと気分が高揚してきて、実際に読みたくなる記事ですので、内容を知りたい方は、そちらを読む事をオススメします。
 この作品、ヤバイです。面白すぎ! 頁をめくる手が止まらなくなり、空き時間に読み続けて、とうとう、購入して24時間以内で読み終えてしまいました。入手したのが10月20日だったので、公式な発売日である21日には読み終えちゃった訳です。
 この面白さ、私なんかには十分に伝えきれないと思いますが、以下、幾つかポイントを絞って紹介していきます。

深まっていく人物像
 シリーズ物だから当たり前なのですが、1巻目に比べると登場人物たちの人物像が深まっています。特に、前作ではサラッとしか描かれていなかった、主人公格の鉄兵と船頭の虎之介以外の乗組員の人物像が深まりました。
 個人的には、水夫長(カコオサ)の九兵衛と楫取(カジトリ)の仁平の人柄が、少しずつ分かってきたのが良かったです。
 表面上だけだと、理不尽にシゴいているだけに見える九兵衛ですが、実は冷静に計算して行動しています。それは何故なのか…も、読み進める内に少しずつ分かってきて、「何かイイじゃん、九兵衛さん!」と言いたくなります。
 また仁平も、根の暗そうな隠密…かと思ったら、かなりサバけた人だし、心の熱さを感じる場面もあります。まだまだ描かれてない部分が沢山あり、これは今後の展開が楽しみになってきます。
 もちろん、主人公格の鉄兵だって活躍するし、人物像も深まっていきます。辛い体験や失敗や成功を重ね、鉄兵が少しずつ成長していく様子を感じられるのも、この作品の面白さだと言えるでしょう。
 因みに、人物像の深まりとは少し違いますが、鉄兵の幼馴染みで健気な少女おきくちゃんがチラッと登場したのも嬉しいです。おきくちゃんと鉄兵…この後、どうなるのかも目が離せません。

魅力的なゲスト(?)登場人物
 シリーズ物らしくゲスト的な登場人物が出てきて、作品の世界を広げてくれるのも楽しい部分です。中でも、個人的には、第2章(全巻通してだと第4章)「江戸表 歩き声明(ショウミョウ)」に登場した、増上寺二十三世法主の遵誉貴屋(ジュンヨキオク)と、将軍御側の中根壱岐守正盛(ナカネイキノカミマサモリ)がイイ味出してると感じました。
  遵誉貴屋(ジュンヨキオク)は、俗世の人々を救いたいと願っているのに、増上寺の法主として幕府と交渉などをせねばならない立場にあります。その結果、物語の中では、自分の進むべき道を見失った、しかも、それに自分では気付いていない人物として描かれています。この遵誉貴屋(ジュンヨキオク)が物語に関わる中で、どう変化していくのか、あるいは全く変化しないのか…とても興味深い登場人物でした。
 そして中根壱岐守正盛(ナカネイキノカミマサモリ)、自分の大いなる目的のためなら、多少の犠牲は仕方ないと割り切って行動できる、恐ろしく冷静な人物です。コンプラ重視の令和日本だと、おそらく嫌われキャラなのでしょうが、私は、分かる部分があるので割と好きな登場人物です。
 これは、若い頃の私が、シミュレーション・ウォー・ゲーム(PCではなく、ボード版)を趣味としていた事が大きいでしょう。史実の戦争をテーマにしたゲームなので、厳しい状況で戦わなくてはならない事が多々あります。その状況で少しでも多くの味方を助けるためには、捨て駒として部隊を犠牲にせねばならない時だってあるのです。もちろん、自分が犠牲にされる立場になったら納得は出来ないでしょうが、大局的には、その犠牲がなければ甚大な被害が出てしまう…それは理解出来ます。
 だから、中根壱岐守正盛(ナカネイキノカミマサモリ)の気持ちも分からないではないのです。
 因みに、中根壱岐守正盛と虎之介が言い合う場面があるのですが、読んでいて、望月三起也先生の『ワイルド7』を思い出しました。何だか、飛葉ちゃん(飛葉大陸)と草波勝の言い合いみたいだなぁ…と感じたからです。今後も、たま~にで良いので、二人が言い合う場面を描いてほしいなぁ。

自然の猛威あり、海戦あり…の海洋冒険小説
 『幕府密命弁財船・疾渡丸(二)』は、「鹿島灘 風の吹くまま」と「江戸表 歩き声明(ショウミョウ)」の2つの章で構成されています。
 この内、「鹿島灘 風の吹くまま」は自然の猛威との対決が、大きな山場として設定されています。嵐の中、非常に危険な海域を航行せねばならない疾渡丸。果たして、無事に乗り切れるのか…と言う訳です。
 まぁ、次の章があるから乗り切れるって分かるのですが、それでもドキドキする場面なのは間違いありません。しかも、船を操作する描写が分かりやすく、臨場感抜群なのです。こんな感じです。

 波は、ゆうに疾渡丸の船側と同じくらいの高さに達している。甲板は大半がはめこみ式の揚板で、水を防がない。船内はもう、波と豪雨とで水浸しになっていた。

 短い文章にも関わらず、丁度良い感じで言葉が綴られているので、状況が一気に伝わってきます。昔、北海道新聞に載っていたインタビューで、馳星周先生が語っていた内容を思い出します。概略、「読みやすい文章にするため、推敲を重ね、言葉を削り、短い文で状況が伝わる様に努力している」と言う内容でした。
 先程の文章も正にソレです。早川先生の苦闘の様子が伝わってくる感じがします。
 一方、「江戸表 歩き声明(ショウミョウ)」は追跡劇となります。そして、海戦の様子が楽しめるのですが、何と2種類の海戦となっています。どちらも迫力満点に描かれており、ドキワク(=ドキドキ&ワクワク)する事、もう間違いなしです。
 なお、「江戸時代の船には詳しくないから分からないよ」と言う方は、早川先生のnoteに船の取材記事があります。写真もあって分かりやすいですよ。

終わりに
 長々と書いてきましたが、兎に角、とっても面白いです。是非是非、読んでみてほしい作品です。
 問題があるとしたら、1巻目から2ヶ月近くたっていたため、1巻目の内容を少し忘れていた事でしょう。この記事を書き終えたら、1巻目から2巻目まで読み直し、疾渡丸の世界にどっぷり浸りたいと思います。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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