エスせんブログ

ラノベ好きなB級小学校教師のエスせんが、教育中心に色々語るブログです。少しでも面白ければ「いいね」御願いします。

王道な脳天気ラノベ『異世界クラフトぐらし』

2024-11-21 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。この頃、話題の事件(?)がらみで語ったり、ラノベとは思えないほど真面目でハードな作品や、青春小説みたいな作品を紹介していましたが、今回は違います。王道と言ってもイイくらい、本当に普通の脳天気なラノベを紹介します。
 今回紹介するのは、あろえ先生の『異世界クラフトぐらし~自由気ままな生産職のほのぼのスローライフ~』です。もう題名だけで、脳天気な感じだと分かるのではないでしょうか。
 主人公ミヤビは物作りが大好き。彼の参加するVRゲームは物作りスキルが充実しており、彼は凄まじい努力の末に超素晴らしい塔(私は、スペインにあるサグラダ・ファミリアをイメージ! でも、ドイツのノイシュヴァンシュタイン城もイイかも…)を完成させます。何せ、見た目も美しい塔には「七色に輝く粒子が雪の様に降り注ぎ」ってんだから、幻想的で美しい事この上なしです。
 その結果、塔はミヤビの予想していなかった活用方法…VRゲームの参加者たちにより、デートや告白の名所として活用される様になってしまいます。とうとう、「愛のキューピッ塔」などと言う嬉しくない二つ名が塔につけられ、告白に成功した参加者たちから御礼の手紙やメールが山の様に届き…こうした、ミヤビの「活躍」が愛の女神様の目に留まります。
 かくて、ミヤビは異世界に召喚され、物作りの専門職であるクラフターとして生活していく事になる…と言う物語です。うん…見事に脳天気なライトノベルだな~。
 でも、疲れている時には、こう言う脳天気なライトノベルが心地良いのです。
 サブタイトルに「スローライフ」と書かれている通り、多少のピンチはありますが、命懸けの荒事は皆無と言ってイイ状態です。その多少のピンチだって、ミヤビの物作りスキルを使えば、まぁ、チョチョイのチョイで片付いてしまいます。だから、もう安心して読み進める事が出来ます。
 こう言う作品を読むと、「あ~、この脳天気でお気楽な感じが、ライトノベルの良さだよなぁ~」と実感します。日々、難しい仕事に追われている方は、たま~に、こう言うラノベを読んで息抜きするとイイですよ。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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往年の少年ドラマシリーズを思い出させる『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』

2024-11-14 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、割と最近の本を紹介します。
 今回紹介するのは、篠谷巧先生の『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』です。文章中心のSNSであるnoteの記事で紹介されていて、面白そうだったので、発売月の令和6年8月に購入し、10月に読み終わりました。
 物語は、新型コロナ感染症対策が緩んできた2023年の7月、日本の「ド田舎」が舞台。「失われた青春を取り戻そう!」と叫ぶ親友・堤宗太に付き合わされた主人公・半田理久は、途中で出会った早坂紗季も加えた3人で高校の旧校舎に侵入し、そこで宇宙服を着た白骨死体を発見してしまう。その死体に「チャーリー」と名付けた3人は、かつて仲の良かった筧華乃子も仲間に加えて謎解きを始める。それは、4人が疎遠になった、ある出来事と向き合う事でもあった…と言う感じの話です。
 この作品、note記事を読んだ時には、スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』っぽい話だと感じました。「4人組」「夏」「死体」など、物語の重要な構成要素も重なってますから。そしてnote記事にも、その様なコメントを付けました。
 しかし、実際に読んでみると、当たり前ですが『スタンド・バイ・ミー』とは異なります。重要な構成要素は重なっていますが、そもそも肝心な主題が違います。『スタンド・バイ・ミー』の主題は「少年時代の喪失」だと思うのですが、本作は「青春と友情の奪還」だと…私は受け取りました。この、主題の大きな差が、作品全体の雰囲気も大きく変えています。
 はっきり言って本作は、ドキドキ展開はあったとしても、基本的に明るく、読後感は爽やかです。この雰囲気、どこかで体験した様な…と、読みながら考えている内に思い出しました。往年のNHK「少年ドラマシリーズ」っぽいのです。
 もちろん、「少年ドラマシリーズ」だって暗い話もあれば、重い話だってありました。
 ただ、「少年ドラマシリーズ」全体の雰囲気が、基本的に明るく、見終わった後の印象が爽やかだった…様に思うのです。まぁ、これは私の記憶違いかもしれませんが…。
 ともあれ私は、「少年ドラマシリーズ」の一作品であるかの様に感じながら、本作を読み進め、読み終えたのでした。
 ところで、先程の内容紹介で私は、「謎解き」と言う言葉を使いました。
 本作は、基本的に謎を解いていく物語です…が、最近の推理小説や『名探偵コナン』の様な感じではありません。それらの作品では、最初から(遅くても中盤までで)重要な物や人は提示されており、それらを組み合わせて真実に近づいていく事が多いです。それが本作では、最初は提示されていなかった重要な物や人が、物語が展開するにつれて出てきます。そのため、読み様によっては、「後出しジャンケン」と感じる人がいるかもしれません。
 実は、最初は私も「後出しジャンケン」の印象を受けていました。それが、「昔の『少年ドラマシリーズ』っぽいなぁ」と感じ始めた頃から気にならなくなりました。
 それについても考えてみました。そして気付いたのが、「昔の推理小説には、こういう後出しジャンケンみたいなのがあったなぁ」と言う事です。エラリー・クイーンは比較的少ないですが、アガサ・クリスティなんて結構多かったと思うのです。『アクロイド殺人事件』なんてメッチャ後出しジャンケンっぽいから、昔の「読者が選ぶ推理小説ベスト10」でも賛否両論でした。
 おそらく、「昔の『少年ドラマシリーズ』っぽいなぁ」と感じ始めた辺りから、私の中に、本作から古き良き時代と似たものを感じる感覚が発生したのだと思います。そして、それが昔の推理小説の記憶と結び付き、「後出しジャンケン」っぽさを感じない様にさせたのではないでしょうか。
 誤解の無い様に書いておきますが、そんなにヒドく「後出しジャンケン」な訳ではありません。そう受け止める人もいるかな…くらいな感じです。
 先述した様に、ドキドキ展開はあったとしても、基本的に明るく、読後感は爽やかです。「青春と友情に乾杯!」って気分になれますので、読んでみても損は無い作品だと思いますよ。私は。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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心に響く言葉が必ず見つかる(はず)『「神回答」大全』

2024-11-07 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛の日…ですが、今回は私の推し作家さんである真山知幸先生の本を紹介します。
 今回紹介するのは『「神回答」大全』です。何と、天下の小学館さんから出ています。
 偉人研究家の真山先生の本ですが、今回は偉人…もいない訳ではないですが、割と最近の有名人が発言した言葉を取り上げて紹介しています。しかも、何かの論文や本に書かれた言葉ではなく、会話の中で発せられた言葉を取り上げている(だから、「神回答」なんです)のが特徴です。
 取り上げられた言葉の数…100。様々な場面での「神回答」が取り上げられており、これだけ沢山の種類があれば、おそらく誰にでも1つや2つは心に響く言葉があるのではないかと考えられます。
 因みに、私の心に最も響いた言葉は、

何でも自分でできた方がいいじゃないですか。
例えば、炊事でも洗濯でも掃除でも、自分一人でできた方が自由になれるじゃないですか。

…と言う沢木耕太郎さんの言葉です。これ、全く同じ事を昔(中学生か高校生くらい)から考えていたからです。
 どうやら私は、自分の中の価値観では「自由である」と言う事を最も重視している様なのです。自分が「自由である」為には、他者から不当な命令や抑圧を受けたくない…だから「平等である」事や、「寛容である」事、「公正である」事等も重視する訳です。
 そう言う自分からすると、炊事や洗濯、掃除などを自分で行えない事は、極めて不自由な存在…と言う事になります。だから、そう言った事は自分で出来た方がいい…そう、中学生か高校生くらいから考えていた訳で、そんな自分と沢木耕太郎さんの「神回答」がピッタリ重なる事は、もうメッチャクチャ嬉しい事です。
 そして、こう言う心に響く言葉があると、とても勇気づけられますし、元気が出てきます。
 もう少し、私が気に入った言葉を紹介しますね。

それ以上速く走ろうとするのではなく、走りを安定させることに集中すべきだ。【ウサイン・ボルト】
ジョーダンは15年で6回優勝したが、残りの9年は失敗なのか? 【ヤニス・アデトクンボ】
アンパンマンとばいきんまんは、光と影、陽と陰、あるいはプラスとマイナスのような関係です。どちらか一人だけでは存在できません。【やなせたかし】

 ウサイン・ボルトさんの言葉は、もう退職が射程圏に入ってきて、新しい事を学ぶ意欲が低下している私にとって、とっても言い訳として使いやすい言葉です。ははは…ずるいですねぇ。
 ヤニス・アデトクンボさんの言葉は、職場の若い人を元気づけるのに使いたい。「あのマイケル・ジョーダンさんでさえ、優勝できる確立は50%に到達しない…ならば、並の人間である我々が苦労するのは、別に恥ずかしい事でも何でもない」ってね。
 そして、やなせたかしさんの言葉は、人間のもつ二面性と言うか、多様性と言うか、そんな事を考えさせられます。目の前の子供を理解する上で、とっても示唆を与えられる言葉です。
 そんな訳で、ちょっと元気の無い方や、挫けそうな気持ちの方には、この『「神回答」大全』はオススメです。
 私の近所の本屋さんにありましたから、割と、色々な本屋さんに置いてありそうです。本屋の近くに行ったら、ちょっと覗いてみてはいかがですか。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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現実世界と異世界の交流が楽しい『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』

2024-10-31 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は少し間が開いて申し訳なかったですが、前々々回(R6.10.10)と前々回(R6.10.17)で論じた作品について、「では、実際のところ、この作品は面白いのか?」について述べます。
 取り上げる作品は、恵ノ島すず先生の『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』です。前々回の記事で書いた通り、ファンの間では『ツンリゼ』と呼ばれているそうなので、この先は『ツンリゼ』と書かせていただきます。
 この『ツンリゼ』、乙女ゲームの悪役令嬢リーゼロッテが破滅エンドを回避すべく頑張る話…なんですが、他の「悪役令嬢物」とは異なり、リーゼロッテは、ほとんど自分では頑張りません。頑張るのは、「実況の遠藤くん」と「解説の小林さん」と二人に関わられた乙女ゲームの登場人物たち(主に、二人の声が聞こえるメインヒーローの王子様であるジークヴァルト)です。
 「その、さっきから出ている『実況の遠藤くん』と『解説の小林さん』ってのは、何者なのさ!?」と突っ込む声が聞こえそうです。 (^_^;)
 実は遠藤くんと小林さん、現実世界…つまり、物語の中の現実の日本で、同じ高校のクラスメート&同じ放送部の部員と言う関係です。そして、放送の練習という名目で、この乙女ゲームをしながら実況&解説をしていたら、何故か、異世界の人物に声が届く様になってしまった…と言う設定となっています。
 この物語は、メッチャ「推し」キャラであるリーゼロッテの破滅を回避すべく、遠藤くんと小林さんが異世界に干渉する事を決意し、実際に干渉した結果がどうなるのか…が、第一の楽しみポイントです。遠藤くんも小林さんも懸命に頑張ろうとしているのですが、何せ、異世界の登場人物に語りかける事しか出来ません。語りかけた後は、相手の登場人物が動くのを見守るしかない訳です。
 この、もどかしさ!
 不確定要素が大きいだけに、「この後、どうなるのだろう…」と言う気持ちが強くなります。この辺り、作者の構成の巧みさを感じます。
 第二の楽しみポイントは、現実世界と異世界の両方で展開される恋愛ドラマの行方です。実は遠藤くん、密かに小林さんに恋しています。何故、恋する様になったのか…や、この恋は成就するのか…など、気になる要素はいっぱいです。リーゼロッテとジークヴァルドの恋、そして遠藤くんと小林さんの恋…現実世界が異世界に干渉する事で、どう二つの恋の行方が変わるのか。ここも惹き付けられる部分です。
 現在、私は原作を1巻までしか読んでいませんが、話の展開もスムーズで、構成上の問題点は感じません。この後、2巻を読むのが楽しみな作品です。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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海洋冒険小説してる『幕府密命弁財船・疾渡丸(二)』

2024-10-24 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り…ですが、今回はラノベではなく時代劇です。
 今回紹介する作品は、早川隆先生の『幕府密命弁財船・疾渡丸(二)』です。令和6年9月5日に1巻目について記事を書きました。今回は、その2巻目です。
 2巻目の大まかな内容については、早川先生御自身がnoteの記事にまとめてくださっています。読むと気分が高揚してきて、実際に読みたくなる記事ですので、内容を知りたい方は、そちらを読む事をオススメします。
 この作品、ヤバイです。面白すぎ! 頁をめくる手が止まらなくなり、空き時間に読み続けて、とうとう、購入して24時間以内で読み終えてしまいました。入手したのが10月20日だったので、公式な発売日である21日には読み終えちゃった訳です。
 この面白さ、私なんかには十分に伝えきれないと思いますが、以下、幾つかポイントを絞って紹介していきます。

深まっていく人物像
 シリーズ物だから当たり前なのですが、1巻目に比べると登場人物たちの人物像が深まっています。特に、前作ではサラッとしか描かれていなかった、主人公格の鉄兵と船頭の虎之介以外の乗組員の人物像が深まりました。
 個人的には、水夫長(カコオサ)の九兵衛と楫取(カジトリ)の仁平の人柄が、少しずつ分かってきたのが良かったです。
 表面上だけだと、理不尽にシゴいているだけに見える九兵衛ですが、実は冷静に計算して行動しています。それは何故なのか…も、読み進める内に少しずつ分かってきて、「何かイイじゃん、九兵衛さん!」と言いたくなります。
 また仁平も、根の暗そうな隠密…かと思ったら、かなりサバけた人だし、心の熱さを感じる場面もあります。まだまだ描かれてない部分が沢山あり、これは今後の展開が楽しみになってきます。
 もちろん、主人公格の鉄兵だって活躍するし、人物像も深まっていきます。辛い体験や失敗や成功を重ね、鉄兵が少しずつ成長していく様子を感じられるのも、この作品の面白さだと言えるでしょう。
 因みに、人物像の深まりとは少し違いますが、鉄兵の幼馴染みで健気な少女おきくちゃんがチラッと登場したのも嬉しいです。おきくちゃんと鉄兵…この後、どうなるのかも目が離せません。

魅力的なゲスト(?)登場人物
 シリーズ物らしくゲスト的な登場人物が出てきて、作品の世界を広げてくれるのも楽しい部分です。中でも、個人的には、第2章(全巻通してだと第4章)「江戸表 歩き声明(ショウミョウ)」に登場した、増上寺二十三世法主の遵誉貴屋(ジュンヨキオク)と、将軍御側の中根壱岐守正盛(ナカネイキノカミマサモリ)がイイ味出してると感じました。
  遵誉貴屋(ジュンヨキオク)は、俗世の人々を救いたいと願っているのに、増上寺の法主として幕府と交渉などをせねばならない立場にあります。その結果、物語の中では、自分の進むべき道を見失った、しかも、それに自分では気付いていない人物として描かれています。この遵誉貴屋(ジュンヨキオク)が物語に関わる中で、どう変化していくのか、あるいは全く変化しないのか…とても興味深い登場人物でした。
 そして中根壱岐守正盛(ナカネイキノカミマサモリ)、自分の大いなる目的のためなら、多少の犠牲は仕方ないと割り切って行動できる、恐ろしく冷静な人物です。コンプラ重視の令和日本だと、おそらく嫌われキャラなのでしょうが、私は、分かる部分があるので割と好きな登場人物です。
 これは、若い頃の私が、シミュレーション・ウォー・ゲーム(PCではなく、ボード版)を趣味としていた事が大きいでしょう。史実の戦争をテーマにしたゲームなので、厳しい状況で戦わなくてはならない事が多々あります。その状況で少しでも多くの味方を助けるためには、捨て駒として部隊を犠牲にせねばならない時だってあるのです。もちろん、自分が犠牲にされる立場になったら納得は出来ないでしょうが、大局的には、その犠牲がなければ甚大な被害が出てしまう…それは理解出来ます。
 だから、中根壱岐守正盛(ナカネイキノカミマサモリ)の気持ちも分からないではないのです。
 因みに、中根壱岐守正盛と虎之介が言い合う場面があるのですが、読んでいて、望月三起也先生の『ワイルド7』を思い出しました。何だか、飛葉ちゃん(飛葉大陸)と草波勝の言い合いみたいだなぁ…と感じたからです。今後も、たま~にで良いので、二人が言い合う場面を描いてほしいなぁ。

自然の猛威あり、海戦あり…の海洋冒険小説
 『幕府密命弁財船・疾渡丸(二)』は、「鹿島灘 風の吹くまま」と「江戸表 歩き声明(ショウミョウ)」の2つの章で構成されています。
 この内、「鹿島灘 風の吹くまま」は自然の猛威との対決が、大きな山場として設定されています。嵐の中、非常に危険な海域を航行せねばならない疾渡丸。果たして、無事に乗り切れるのか…と言う訳です。
 まぁ、次の章があるから乗り切れるって分かるのですが、それでもドキドキする場面なのは間違いありません。しかも、船を操作する描写が分かりやすく、臨場感抜群なのです。こんな感じです。

 波は、ゆうに疾渡丸の船側と同じくらいの高さに達している。甲板は大半がはめこみ式の揚板で、水を防がない。船内はもう、波と豪雨とで水浸しになっていた。

 短い文章にも関わらず、丁度良い感じで言葉が綴られているので、状況が一気に伝わってきます。昔、北海道新聞に載っていたインタビューで、馳星周先生が語っていた内容を思い出します。概略、「読みやすい文章にするため、推敲を重ね、言葉を削り、短い文で状況が伝わる様に努力している」と言う内容でした。
 先程の文章も正にソレです。早川先生の苦闘の様子が伝わってくる感じがします。
 一方、「江戸表 歩き声明(ショウミョウ)」は追跡劇となります。そして、海戦の様子が楽しめるのですが、何と2種類の海戦となっています。どちらも迫力満点に描かれており、ドキワク(=ドキドキ&ワクワク)する事、もう間違いなしです。
 なお、「江戸時代の船には詳しくないから分からないよ」と言う方は、早川先生のnoteに船の取材記事があります。写真もあって分かりやすいですよ。

終わりに
 長々と書いてきましたが、兎に角、とっても面白いです。是非是非、読んでみてほしい作品です。
 問題があるとしたら、1巻目から2ヶ月近くたっていたため、1巻目の内容を少し忘れていた事でしょう。この記事を書き終えたら、1巻目から2巻目まで読み直し、疾渡丸の世界にどっぷり浸りたいと思います。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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今、ラノベ界隈で話題の作品とコミックを考える。後編

2024-10-17 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は前回(R6.10.10)の続きで、最近(令和6年9月頃)、ラノベ界隈で話題となっている『ツンリゼ』の原作とコミカライズの比較を行います。
 ただ、この先は少しネタバレがあります。ネタバレは一切読みたくない…と言う方は、この先を絶対に読まないでください。

 さて、両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。
 コミカライズの展開は、概ね原作の展開をなぞっていました。順番が入れ替わっている部分は幾つかありましたが、「乖離」とまでは言えないと思います。正直、私の戦友とも言うべき作品『くまクマ熊ベアー』のコミカライズの方が、物語の展開が大きく乖離していると言えます。
 ただ、先程も述べた通り、気になる部分はあります。それについて語ると、少々ネタバレになるので、それが嫌な方は以下の部分を読まない様にしてください。

※念のための空白

 両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。そして、その私が気になった部分は、原作とコミカライズで、キャラクターの設定に微妙な違いが発生していた事です。
 最も気になったのが、悪役令嬢リーゼロッテから熱烈に愛されている、婚約者のジーク王子です。作中、リーゼロッテの家に遊びに行く場面があるのですが、原作のジークは「何が何でもリーゼロッテに会いたい!」と言う強い意志で、日程を調整して訪問します。それがコミカライズでは、「リーゼロッテの家に行きたいなぁ」とは思っていますが、全く行動に移そうとしません。親友が説得して、やっと動き出します。
 これ、私的には相当な違和感がありました。この後、リーゼロッテが危機に陥った時、彼女を救うのはジークの強い愛です。原作だと、それがスムーズに伝わってくるのですが、コミカライズの展開だと「…あれっ?」って感じになってしまいます。
 それ程ではありませんが、ヒロインであるフィーネの母親の設定にも、気になる部分がありました。ジークがリーゼロッテの家を訪問している時、勘違いしたフィーネの母親がフィーネを助けるために家へ乱入してくる…と言う基本線は同じですが、細部が違っているのです。
 原作ではリーゼロッテの妹たちが止めようとして、乱闘(?)しながらやってくるのですが、コミカライズでは遙かに凄いレベルで大暴れします。家の周りの城壁を破壊し、リーゼロッテの家臣を魔法で眠らせながらの突撃です。しかも、その魔法は禁呪である闇魔法なのです。しかも、しかも、その闇魔法は使用者を蝕む…な~んて設定までされています。う~ん、そこまで設定する必要があるのでしょうか。何だか、母一人で子育てしてきた苦労を強調するためだけの設定の様な…。
 『ツンリゼ』は1巻分の原作が4巻分になっているので、相当に内容を膨らませる必要があるのだと思います。おそらく、私が気になるキャラクターの設定の違いも、その辺りが大きな理由ではないかと考えられます。
 コミカライズで内容を膨らませている点では、名作『悪役令嬢の中の人』も同じです。こちらも1冊分の原作で、既に4冊発行されており、おそらく今後も2~3冊は発行されそうな勢いです。当然、非常に大きく膨らませなくてはなりません。
 しかし、こちらのコミカライズでは、気になる部分はほとんどありません。これは、元々キャラクターの設定などが少ないか、全くないので、コミカライズで膨らまされていても気にならないからだと思います。
 そう考えると、ある程度キャラクターの設定を行っていた『ツンリゼ』は、コミカライズで話を膨らませるには不利…と言っても良いかもしれません。
 以上、『ツンリゼ』の前作とコミカライズの乖離について比較検討してきました…が、私的には両方とも面白く読んでいます。コミカライズで気になる点はありますが、読み進められない程ではありません。
 それだけに、コミカライズの打ち切り&原作の休載は残念でなりません。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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今、ラノベ界隈で話題の作品とコミックを考える。前編

2024-10-10 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、最近(令和6年9月頃)、ラノベ界隈で話題となっている作品と、そのコミカライズについて語ります。
 今回取り上げる作品は、『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』です。いや~、ラノベらしい長い題名ですねぇ。長すぎるのでラノベ界隈では、「ツンリゼ」と省略されている様です。この記事でも、『ツンリゼ』と表記させていただきます。
 さて、この『ツンリゼ』、何でラノベ界隈で話題かと言うと、原作者とマンガ編集部とのトラブルが原因で、コミカライズが連載終了(つまり打ち切り)になってしまったからです。詳細については、以下のURLで見られる…と思います。

https://mainichi.jp/articles/20240911/spp/sp0/006/278000c

 この記事では事件そのものを論じるつもりはありませんが、編集部の謝罪文の中で「コミカライズと原作との乖離に対して監修時にたびたび長期にわたる交渉が必要となったこと」ありました。そこで、原作とコミカライズを比較し、読者の立場で気になる乖離があったかどうかを語りたいと思います。
 念のために書きますが、これは原作者や漫画家を責める記事ではありません。あくまでも読者の目線で考えて、読者として気になる乖離があったのか…を語る記事です。また、仮に読者として気になる乖離があったとしても、その事で原作者や漫画家を責める意図はありません。一読者の受けた印象を紹介したいだけです。
 なお、私はコミカライズから入り、最近になって原作を読み始めました。そのため、原作の1巻目と、そのコミカライズ1~4巻のみ取り上げさせていただきます。
 さて、両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。
 コミカライズの展開は、概ね原作の展開をなぞっていました。順番が入れ替わっている部分は幾つかありましたが、「乖離」とまでは言えないと思います。正直、私の戦友とも言うべき作品『くまクマ熊ベアー』のコミカライズの方が、物語の展開が大きく乖離していると言えます。
 ただ、先程も述べた通り、気になる部分はあります。それについて語ると、少々ネタバレになるので、ここで記事を一度終わります。続きは次回としますが、ネタバレが嫌な方は読まない様にしてください。
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実に潔い『悪役令嬢の中の人2』

2024-10-03 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、以前紹介した作品の続編を紹介します。
 今回紹介するのは、まきぶろ先生の『悪役令嬢の中の人2』です。もちろん、以前紹介した『悪役令嬢の中の人』の2巻目です。
 それで、この2巻目なのですが…はっきり言って1巻目、いえ、1巻目の中心になっている物語を読んでいる事が前提となっている短編集です。
 1巻目では、中心となっている物語「悪役令嬢の中の人」と言う題名の中編(以下、「本編」と呼びます)が全体の半分位を占めていました。そして残りの頁は、本編のスピンオフ作品とでも言うべき短編が幾つも載っていました。
 この2巻目は、それら本編のスピンオフ作品で、まるっとまるまる本全体が占められています。本編では詳述されなかった冒険を描く短編あり、特定の登場人物による本編では省略されていた活躍の短編あり、特定の登場人物に焦点を当てた本編の後日談ありで、実に様々な種類のスピンオフ作品を楽しむ事が出来ます。
 「2(ツー)物に名作なし」…と言う言葉があるかどうかは知りませんが、一般的に2(ツー)物は1作目と比較され、評価が下がる傾向が強いです。それは、1作目の物語を活かしつつ2作目を展開しなくてはならないと言う、大きな制約があるからです。
 しかし、この『悪役令嬢の中の人2』では、本の中の全てをスピンオフ作品だけで構成した事で、2(ツー)物の抱える大きな制約を捨て去る事が出来ました。これは、本だから簡単に出来たわけで、映画だったらほぼ不可能だったでしょう。
 もちろん、スピンオフ作品だけで構成されているって事は、1巻目…いえ、少なくとも本編を読み終えている事が前提となります。だから、本編を読んでない人にとって『悪役令嬢の中の人2』は、ほとんど読む価値の無い本と言えるでしょう。こちらから読み始めたら、何が何だか分からないでしょうから。
 私個人としては、ここまで思い切った構成をしている事は、いっそ潔くて清々しい気持ちになります。こう言うマニアックな傾向の本も、あって良い…私は、そう思います。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。

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現実感のある戦闘にハマる『ゴブリンスレイヤー2』後編

2024-09-26 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は前回(R6.9.19)の続きで、『ゴブリンスレイヤー2』について語ります。
 この作品の大きな魅力が、現実感の強い戦闘の描写にある…と前回の記事で書きました。知恵を使い、工夫して勝利を引き寄せる辺りが、戦闘描写として現実感を感じさせます。そして、それは作者の蝸牛くも先生が、元々テーブル・ロール・プレイング・ゲーム(以下、「TRPG」と略します)をなさっていた方だから…と書きました。
 TRPGとは、参加者が自分の好きな役(「剣士」とか「泥棒」とか「魔法使い」とか…)になり、司会役が語る物語に対応して冒険するゲームです。役をイメージさせるカードや簡単な地図などは使われる事がありますが、基本は司会役と参加者とが会話しながら進めていく、かなり想像力を必要とするゲームです。
 TRPGを行った経験…残念ながら、ほとんど私はありません。
 ただ、TRPGをモデルに作られたボードゲームは、「死の迷宮」や「剣と魔法の国」(どちらもホビージャパン社さんから発売されていた時の邦題)など何種類か経験しています。特に「死の迷宮」は大好きで、高校時代には友達と頻繁に行っていました。
 それで、この手のゲームは何度も遊んでもらうため、ゲームのバランスが絶妙な感じで調整されています。バランスを崩すようなチートな能力や魔法は、ほぼゲームには登場しません。ですから、魔物と戦闘するのは大変です。作戦を立て、知恵と工夫を尽くして戦わなくては、魔物を1匹倒す間に仲間が2人くらい死んでしまいます。ゲームをしていると、冒険と死は隣り合わせと感じます。
 これらのゲームのモデルがTRPGです。当然、ゲームにおけるバランスは同じ様なものでしょう。そして、そう言うゲームをモデルにして戦闘場面を描いているのが、ここで紹介している「ゴブリンスレイヤー2」な訳です。現実感を感じさせるのは、ある意味、当然と言っても良いかもしれません。
 ライトノベル的な気軽さは「やや低め」ですが、手に汗握る展開を楽しみたい方にはオススメの作品です。 
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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現実感のある戦闘にハマる『ゴブリンスレイヤー2』前編

2024-09-19 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、かなり前(R5.12.21)記事にした『ゴブリンスレイヤー』の2作目について語ります。
 魔法が存在し、魔物が跋扈する世界。最も弱い魔物であるゴブリンを専門に倒し続け、上位の冒険者となった男…通称「ゴブリンスレイヤー」。彼と、彼を放ってはおけない仲間たちは、とある街に出没するゴブリン退治の依頼を受けるが…から展開する物語。
 1作目は、幾つかの物語が組み合わさって、「ゴブリンスレイヤー」と呼ばれる男が何者なのかを明らかにしていく物語でした。それに対し2作目の本作は、大きな1つの物語を通して、ブレない男「ゴブリンスレイヤー」の活躍を描きます。
 この作品の大きな魅力が、現実感の強い戦闘の描写です。
 前回の記事でも書きましたが、本作には、ライトノベルには珍しくチートが存在しません。魔法の障壁や治癒魔法は強力ですが、それでも他のライトノベルに比べれば、効果としては僅かとしか言えないでしょう。
 だから、ゴブリンとの戦闘で危機に陥ったとしても、チートな魔法などで切り抜ける事は出来ません。知恵を使い、工夫して勝利を引き寄せるしかないのです。この辺りが、戦闘描写として現実感を感じさせる訳です。
 これは何故だろうと思っていたら、「あとがき」を読んで分かりました。作者の蝸牛くも先生は、元々テーブル・ロール・プレイング・ゲーム(以下、「TRPG」と略します)をなさっていた方なのです。
 う~ん、ここからTRPGについて語ると長くなりそうです。大変もうしわけありませんが、続きは次回と言う事で。

 ところで、令和6年9月16日と17日の記事に、「いいね」などを沢山いただきました。いつも、本当にありがとうございます。さあ、これを励みにまた頑張るぞ~。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
コメント
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