木曜はライトノベル愛語り…なのですが、今回はライトノベルではなく時代小説です。
今回紹介するのは、noteで相互フォローさせていただいている笹目いく子先生の処女作『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』です。気合いを入れて紹介したいと思いますので、ネタバレ…と言いますか、内容を色々と書いてしまう事になります。「ネタバレは困る」と言う方は、この後は読まないようにしてください。
まず、最初の一文の「つかみ」が半端ないのです、この作品。
今回紹介するのは、noteで相互フォローさせていただいている笹目いく子先生の処女作『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』です。気合いを入れて紹介したいと思いますので、ネタバレ…と言いますか、内容を色々と書いてしまう事になります。「ネタバレは困る」と言う方は、この後は読まないようにしてください。
まず、最初の一文の「つかみ」が半端ないのです、この作品。
灰が音もなく、雪のように降りしきっていた。
これを読んだ瞬間、「え? 何が起こったの?」と思いました。それは、そうでしょう。灰が「降ってきた」ではなく、「降りしきっていた」なんです。尋常ではない何かが起きた…この一文だけで、それが分かります。
そして次の瞬間、頭の中には灰色の世界の中に灰色の雪が降っている映像が浮かんできました。
尋常ではない出来事が起きたはずなのに、とても美しさを感じてしまう…この後に展開される物語が、最後は美しく終わるのだろうと私は感じました。この先を読む事への期待感が高まります。
たった一文で、この「つかみ」力。プロの作家とは凄いものだなぁ…と、改めて感じ入りました。
全編を読み終えて感じたのは、「ハリウッド超大作の構成と似ているな」と言う事です
ハリウッド超大作では、小さな出来事が積み重なって話が進み、中盤で小さめの山場があります。そこで(あるいは、その後で)主人公が挫折し、でもそれを乗り越えて、最後は大きな山場を迎える…と言うのが、ある程度共通した物語の構成となっています。
『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』の物語も、構成的には非常に似ています。
まず、江戸の大火の後、主人公の山辺久弥と青馬(ソウマ)少年が出会います。青馬の世話をする中で、小さな事件や出来事が次々と発生し、それを乗り越えながら、少しずつ二人の関係が深まっていきます。
やがて青馬を連れ去ろうとする者が現れ、中盤の小さな山場となります。何とか切り抜けたと思ったら、今度は久弥自身に関わる問題が発生し、久弥は青馬と別れなければならない事に…。主人公の挫折です。
ぐっとこらえ、久弥は問題解決に尽力します。そして、最後の山場へと繋がっていく訳です。
ハリウッド超大作は、観客を楽しませるために、ある程度共通した物語の構成となっています。小さな事件→中盤の小山場→主人公の挫折→挫折からの成長→最後の大山場→大団円…と言う構成は、観客が作品に入り込み、共感し、楽しめるように考えられ、工夫されたものなのです。
それと同じ様な構成になっている『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』。面白くないはずがないでしょう。
もう一つ書いておきたいのが、久弥と青馬の心の動きです。
出会った時は、当たり前ですが、心の距離が離れている二人。それが、日々の小さな出来事を通し、少しずつ少しずつ距離が近くなっていきます。
その際に重要な役割を果たすのが、久弥が得意とする三味線です。青馬自身にも三味線の才能があり、三味線の演奏や稽古を通して二人の関係性が深まっていきます。
この三味線の場面がイイ。生の三味線の演奏…私は、津軽三味線くらいしか聴いた事がありません。だから音楽としてのイメージは、雪ほどには強くイメージ出来ませんが、それでも読んでいると、何だか音が聴こえてくる様な感じがします。
やがて、血は繋がっていないけれど、二人は本当の親子になっていきます。「見習い親子」から「本当の親子」になる訳で、題名になっている「おやこ見習い帳」は、おそらく、この事を強く意識して名付けられたのでしょう。
因みに、最後はハッピーエンドですから、安心して読んでください。
感動の涙を思い切り流し、スッキリ心のサウナ状態になれる、そんな素敵な作品でした。
これを読んだ瞬間、「え? 何が起こったの?」と思いました。それは、そうでしょう。灰が「降ってきた」ではなく、「降りしきっていた」なんです。尋常ではない何かが起きた…この一文だけで、それが分かります。
そして次の瞬間、頭の中には灰色の世界の中に灰色の雪が降っている映像が浮かんできました。
尋常ではない出来事が起きたはずなのに、とても美しさを感じてしまう…この後に展開される物語が、最後は美しく終わるのだろうと私は感じました。この先を読む事への期待感が高まります。
たった一文で、この「つかみ」力。プロの作家とは凄いものだなぁ…と、改めて感じ入りました。
全編を読み終えて感じたのは、「ハリウッド超大作の構成と似ているな」と言う事です
ハリウッド超大作では、小さな出来事が積み重なって話が進み、中盤で小さめの山場があります。そこで(あるいは、その後で)主人公が挫折し、でもそれを乗り越えて、最後は大きな山場を迎える…と言うのが、ある程度共通した物語の構成となっています。
『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』の物語も、構成的には非常に似ています。
まず、江戸の大火の後、主人公の山辺久弥と青馬(ソウマ)少年が出会います。青馬の世話をする中で、小さな事件や出来事が次々と発生し、それを乗り越えながら、少しずつ二人の関係が深まっていきます。
やがて青馬を連れ去ろうとする者が現れ、中盤の小さな山場となります。何とか切り抜けたと思ったら、今度は久弥自身に関わる問題が発生し、久弥は青馬と別れなければならない事に…。主人公の挫折です。
ぐっとこらえ、久弥は問題解決に尽力します。そして、最後の山場へと繋がっていく訳です。
ハリウッド超大作は、観客を楽しませるために、ある程度共通した物語の構成となっています。小さな事件→中盤の小山場→主人公の挫折→挫折からの成長→最後の大山場→大団円…と言う構成は、観客が作品に入り込み、共感し、楽しめるように考えられ、工夫されたものなのです。
それと同じ様な構成になっている『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』。面白くないはずがないでしょう。
もう一つ書いておきたいのが、久弥と青馬の心の動きです。
出会った時は、当たり前ですが、心の距離が離れている二人。それが、日々の小さな出来事を通し、少しずつ少しずつ距離が近くなっていきます。
その際に重要な役割を果たすのが、久弥が得意とする三味線です。青馬自身にも三味線の才能があり、三味線の演奏や稽古を通して二人の関係性が深まっていきます。
この三味線の場面がイイ。生の三味線の演奏…私は、津軽三味線くらいしか聴いた事がありません。だから音楽としてのイメージは、雪ほどには強くイメージ出来ませんが、それでも読んでいると、何だか音が聴こえてくる様な感じがします。
やがて、血は繋がっていないけれど、二人は本当の親子になっていきます。「見習い親子」から「本当の親子」になる訳で、題名になっている「おやこ見習い帳」は、おそらく、この事を強く意識して名付けられたのでしょう。
因みに、最後はハッピーエンドですから、安心して読んでください。
感動の涙を思い切り流し、スッキリ心のサウナ状態になれる、そんな素敵な作品でした。