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2012年11月15日、法政大学市ヶ谷キャンパスにて、「気候変動適応シンポジウム~地域からの変革」を開催した。S-8研究の一環として、研究成果を一般に報告するとともに、気候変動影響に関する研究と地域における適応策の実装化をつなげることを意図した会合である。私は、シンポジウム主催事務局を務めるとともに、「適応策ガイドライン」の報告、総合司会を行った。
詳細報告は「地域適応フォーラム」のサイト上で行う。ここでは、適応策のメインストリーム化について、書いておく。
「適応策は気候変動に関連する対策であるが、地方公共団体の地球温暖化防止担当部局がすべて引き取らなければいけないわけではないのではないか?」というのは、シンポジウムの討論時間で会場から出された意見である。これに対して、「開発途上国における適応策の議論では、適応策のメインストリーム化と言われる。適応策だけ独立して実施するのではなく、防災や農業政策等の既存施策の中に、適応策を含めてもらうこと、それがメインストリーム化である。」という回答がなされた。
筆者は適応策を関連部署に取り込んでもらうことが必要だということに異論はない。ただし、地球温暖化対策部局が担うべき点はある。
では、地球温暖化対策部局は適応策において何を担うべきか。この点については、これまでに導入されてきた緩和策(温室効果ガスの排出削減)と適応策を比較することで答えが見えてくる。緩和策においては、地域での温室効果ガスの排出量を把握し、取るべき対策の優先順位付け、政策の評価・見直し等の進行管理といった基盤的な部分を担っている。適応策においても、気候変動影響の将来予測や取るべき対策の優先順位づけ(スクリーニング)と気候変動影響のモニタリング、対策の進行管理、あるいは進行管理の結果の包括的な情報公開等が地球温暖化対策部局の重要な仕事である。
緩和策については、再生可能エネルギーの普及や産業部門への排出削減の割り当て、民生部門への普及啓発等において、地球温暖化対策部局として、担当部局が行わない追加的な施策がある。適応策における明確な追加的な施策は、緩和策に比して打ち出しにくいように見える。これは、気候変動影響は既に発生しており、防災や農業、熱中症対策等、既に行っている気候問題への対策が既に実施されているためである。しかし、適応策においても、中長期的な視点からの土地利用、民間企業や脆弱性の高い地域での適応策検討の普及啓発・計画策定支援・インセンティブ形成、適応に関するコミュニティ力の形成(意識向上や主体間の関係強化)等、地球温暖化対策部局が踏み込むべき対策がある。これらの追加的適応策は、手法が確立されているわけではないため、段階的な導入が考えられる。
最後に。適応策の実装を通じて、行政縦割の解消や長期的かつ不確実性のある影響に対するリスク管理の確立を目指していきたい。適応策の実装上の課題は、適応策ゆえにあるのではなく、長期的な政策、不確実性のある危機に対するリスク管理に係る施策手法が確立されていない面にある。そうしたリスク管理施策を担当する部署を確立し、その中で地震、火災、疾病等とのマルチプルなリスクとともに気候変動リスクを管理することができる体制づくりが必要である。