横浜環境ビジネスネットワーク メールマガジン【2月19日配信】
コラム【第12回】環境ビジネスから統合価値を生むビジネスへ
「環境のコモディティ化」といわれる。例えば、環境ビジネスの仕事において、新規性の余地が少なくなっており、安定(?)状態になっていることを指している。確かに、環境配慮設計における省エネや3Rへの配慮が当然となっているなか、環境配慮で差別化することは難しい。
この膠着を打開するためには、差別化の規範を環境配慮ではなく、持続可能性(サステイナビリティ)への配慮に拡張することが有効である。持続可能性の定義は多様であり、わかりにくいという指摘もあるだろうが、環境に配慮しているだけでなく、社会面や経済面の諸課題にも配慮するというように、複数の側面を充たす「統合価値の創出」のことを持続可能性への配慮と捉えたらどうだろうか。
例えば、環境と地方創生(地域再生)、環境と高齢者福祉、環境と防災、環境と次世代育成などのように、2つの貢献を同時に達成するようなビジネスを目指すのである。環境ビジネスであっても地域資源を使っていなかったり、地域内の消費者とつながっていないようでは地方創生に貢献しているとはいえない。環境と地方創生の統合価値を創出するためには、環境ビジネスにおいてさらに配慮が必要となる。
この連載では、気候変動への緩和と適応をとりあげた。温室効果ガスの排出削減(緩和)では避けられない気候変動の影響があり、従来の防災や熱中症対策等に追加化することが適応である。この際、緩和と適応は別々のものあるが、都市緑化や森林整備は緩和であり、適応にもなる。都市緑化は都市にクールスポットをつくることとして適応であり、都市全体を冷やして冷房消費を減らすという意味では適応である。森林整備は二酸化炭素の吸収量を増やす緩和であるとともに、水資源を涵養する意味で適応である。
「環境ビジネスから統合価値を生むビジネス」へと視野を転じたとき、環境イノベーションの閉塞が打開され、本当にやるべきことが見えてくる。