サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

「環境情報社会」は実現したのか

2009年07月20日 | 環境と情報
写真:エキナセアのライムグリーン


 1990年代、高度情報化と高齢化、国際化が3化といわれた。3化を具現化することが、シンクタンクの特徴のように思っていた。

 そして、PC、インターネット、携帯電話の爆発的な普及により、ユビキタス時代を迎えた。高度情報化社会の夢は、具現化できているのだろうか。

 高度情報化と環境問題との関係をいち早く指摘し、「環境情報学」を進めたのは末石先生である。先生の描いた”環境情報社会”は、市民の参加と学習を重視する市民型の環境情報社会であった。

 残念ながら、今日の状況をみると、情報量の増大、ユビキタスネットワークの実現にも関わらず、市民型の環境情報社会とはほど遠い現実があるように思う。



 市民意識、制度、技術の3つの側面から、整理してみよう。

 市民意識。知り、学び、考えようとする市民は未だ成熟していないように思われる。時間に追われ、生きることに忙しい市民が多い。

 また、情報を消費する時間は増えていても、情報を考える時間は逆に減少しているのではないだろうか。

 専門情報の公開に対し、情報リテラシー、情報の判断基準等に関する能力も、ままだま足りないように思う。

 次に制度面。環境省の環境情報戦略により進んだ面はあるが、公的機関の情報提供における分野間の連携は、まだまだ不十分である。

 民間同士の情報流通のルール、制度化も、対抗勢力があるようだ。情報を公開しない企業が、どうして市民の信用を得ることができようか。

 技術面も課題は多い。情報処理能力の向上により、情報の大量生産・大量消費(大量廃棄?)は可能となった。情報量が増大するからこそ、情報の信頼性や質を判断する情報技術の必要性が高まっているが、まだまだ途上段階にある。

 

 市民型の環境情報社会を実現していくために、2点ほど、提案したい。

 1つは、環境情報の受発信ルールの共有である。

 情報の受発信は自由活動であり、規制は極力避けるべきなのかも知れないが、公的機関や企業はその社会的責任において、ルールを共有する必要がある。

 例えば、情報流通の第三者機関、情報収集の計画・登録制度等を検討することも必要だろう。地方分権時代というが、都道府県や市町村がルールもなしに、自由フォーマットで情報発信をすればいいものでもない。地域間の比較や分析が可能なように、地域間でルールを共有することも必要である。

 2つめ。バーチャル情報を補完するリアリティ、オフラインのコミュニケーションを施策対象とすることである。

 例えば、ライフサイクルの環境影響の見える化が進められているが、LCCO2(製造から使用、廃棄等にいたる物のライフサイクル全体の二酸化炭素排出量)の数字を見せられたからといって、何の実感があるのだろうか。ライフサイクル体験等の不足、実体験があって、情報が活用される。
 
 また、情報を補完するのは社会関係資本だともいえる。顔の見える情報の不足が情報の判断を難しくさせている。社会関係資本は、情報の不完全性を補完する、しかし、社会関係資本の希薄化がその補完機能を発揮させていない。

 環境情報戦略においては、WEBでの情報発信の整理だけで精一杯になっているように見えるが、社会関係資本まで踏み込んだ戦略が必要である。


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1 コメント

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今頃読んだ (流石)
2010-03-15 20:53:34
僕の画像探索をしたら、一番にこの花が出てきました。
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