サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

気候変動の影響実感を入口とした気候変動コミュニティの形成

2012年10月13日 | 気候変動適応

1.気候変動が地域の課題になってきている

 気候変動(地球温暖化)は、地縁型コミュニティ(町内会、自治体等)の活動テーマになりにくい。

 地縁型コミュニティが、地域内で共有する課題の解決を優先し、将来あるいは地球全体への影響である地球温暖化問題との距離感があることは当然といえば当然である。

 しかし、1980年代後半以降、日本各地の気温は確実に上昇しており、強い雨の増加等、気候変動は目に見える被害をもたらしてるい。例えば、戦後の8月の平均気温のベスト10は、すべてが1980年代以降であり、猛暑と呼ばれる年の間隔も短くなっていることが、気象庁の観測データから確認することができる。

 つまり、気候変動は将来あるいは地球全体への影響でななく、現在の自地域への影響となっていきている。

 

2.気候変動の影響実感によって意識がかわる

 筆者が、長野県飯田市で実施した住民アンケート調査において、気候変動の影響を実感している程度と気候変動に関連する意識との関連を分析した。

 その結果、気候変動の影響実感が強い人は、気候変動の危機の認知度が高いこと、さらに温暖化やエネルギー危機の問題解決意図の形成度が高いことが明らかになった。

 また、気候変動の影響実感が強い人は、気候変動に対する適応行動(熱中症、農業被害、水害等に備える行動)の実施度が高い。さらに間接的には、影響実感が強い人は、気候変動への緩和行動(温室効果ガスの排出削減行動)の実施度が高いことも確認できた。

 つまり、気候変動の影響実感を高めることで、気候変動という地球規模の問題を自分事としてとらえ、適応と緩和に係る行動を促すことができる。

 

3.気候変動の影響実感を入口として、コミュニティ活動を始めよう

 1に示したように、気候変動は既に現在の自地域への影響となっており、気候変動を地縁型コミュニティを活動テーマにすべき段階になっている。また活動テーマとすることが容易になってきている。

 そして、気候変動を地縁型コミュニティを活動テーマにする場合、2に示したように、気候変動の影響実感を高めるような学習プログラムを実施することで、問題意識や行動形成を促しやすくなる。

 例えば、住んでいる地域でどのような気候変動影響が発生しているのか、地域の住民はどのように影響を実感しているのかなどについて、地元学的な手法で調査(市民参加型モニタリング)をしたり、共有するワークショップを開催することが考えられる。

 さらにいえば、地域においては、自らの安全・安心を守る適応策の方が取り組みやすい可能性もある。もちろん、緩和策は最大限に行う必要があることに変わりはないが、地域住民が気候変動に取り組む場合、緩和策の押しつけにならないように、緩和策と適応策を組み合わせて検討することが有効ではないだろうか。

 

4.おわりに

 可能であれば、節電や計画停電への対応、エネルギー危機、あるいは防災等への対応等もあわせて、地縁型コミュニティでの活動課題としていくことが望ましい。

 コミュニティの希薄化が言われるが、コミュニティで扱うべき共同課題が希薄化してきているのではない。気候変動やエネルギー、防災等の問題は、コミュニティで取り組むべき、コミュニティで取り組むにふさわしい共同課題になっているのである。地縁型コミュニティ活動の新たな展開を考えたいものである。

 

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