気候変動(地球温暖化)の地域への影響は、水災害の深刻化や熱中症の増加、高温による農業被害ばかりではない。科学的な検証が厳密になされているわけではないが、全国各地で地域固有の影響が問題になっている。いくつかの事例を紹介する。
【越冬する野良イモ】
「野良イモ」とは、前年度の収穫時にこぼれた小イモが越冬して、翌年に芽を出し雑草化したものである。
「野良イモ」は、後作物の生育阻害、各種病害虫の発生要因になるため、防除が不可欠である。しかし、防除作業は人手で実施せざるをえず、野良イモの防除作業量は機械化・省力化による合理化で大規模輪作農業を展開している十勝地方においては深刻な労働負担となっている。
対策としてはこの問題に対して、冬の農閑期に畑の雪割り(除雪)などで、野良イモを的確に防除する深さまで土壌凍結を促進させつつ、凍結が行き過ぎて春先の農作業に支障を来さないように凍結深を最適な深さにコントロールする技術が開発されつつある。
以上、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 寒地温暖化研究チーム 研究チーム長 廣田知良氏のWEB記事より引用。
【冬の晴天と低温がないと寒天をつくれない】
地球温暖化に伴う近年の暖冬傾向で、県内の冬の寒さを利用した茅野市など諏訪地域の伝統産業「角寒天」作りに、うまく凍らなかったり、作業できる日数が短くなったりする影響が出ている。
角寒天は、冬の低温と日中の晴天を生かし、生寒天を凍らせたり解かしたりしながら約2週間かけて乾燥させる。角寒天の生産過程で、生の寒天が凍るには夜間気温が氷点下7~10度に下がる状況が3日間程度続くことが必要である。
このため、暖冬化の影響で、角寒天の生産量に影響を与える可能性が出ている。
以上、長野県環境保全研究所畑中氏、法政大学木村氏が調査中。
【ナルトビエイが北上し、アサリがとれなくなる】
ナルトビエイは、西日本、有明海以南に分布する。水温17℃以上を好む暖海性のトビエイ類で、幅1.5m、体重20kgに成長する。
ナルトビエイは群を成し、1日で自分の体重とほぼ同量の底生生物を補食する。このため、有明海や瀬戸内海のバカガイやアサリ漁場では、平成10年頃から大規模な食害被害が発生している。
三重県水産試験場では、地球温暖化による好適水温帯が北へ進むに伴い、ナルトビエイが二枚貝資源に大きな打撃を与える可能性があると懸念している。
以上、三重県水産試験場のWEB記事より引用。