2015年の9月、ニューヨークで「国連持続可能な開発サミット」が開発され、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェダ」が採択された。このアジェンダにおいて、示された17の目標と目標を構成する169のターゲットが、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals website:SDGs)」である。
このSDGsの17の目標は、貧困、食料、教育、ジェンダー、水、エネルギー、雇用、レジエント、平等、都市、生産・消費、気候変動、海洋、陸域生態系・森林、平和と公正、パートナーシィップであり、持続可能可能性に関する多様な分野をカバーしている。
また、2000年に、2015年に向けて国連が示したミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)が途上国の貧困や初等教育、保健等の従来通りの開発問題が中心であったのに対して、SDGsは先進国を含めた全ての国を対象としている。
このため、日本国内の企業、国や地方自治体等が、SDGsを取り入れ、これまでの取組みを位置づけ直すとともに、新たな展開を再考していこうと動き出している。これまでも持続可能性という目標が示されてきたが、具体的な共有ができてこなかったなか、SDGsの目標は持続可能性という観点の具体像を示すものとして、わかりやすいものとなっている。
SDGsを活かし、より深く、あるいはより広く取組みを再構築し、推進することが期待されるが、注意しておきたい点(あるいは活用により期待したい点)を列挙しておく。
1.実行可能で受容性がある目標やターゲットに限定せずに、社会転換や変革のために活用すること
SDGsの目標等は全てを実行するのではなく、国や地域、事業者の状況に応じて、選択するものであるが、その際、実行可能で受容可能な目標等を選択し、その達成状況の漸進的な改善を図るPDCAをまわしていくことでいいのだろうか。今日の持続可能性を損なう問題を解決するためには、社会経済のあり様や生き方の変革が必要であるとしたら、根本的な変革に踏み込むという意味で意欲的な目標選択をする必要がある。
2.変革により、どのような社会を目指すのかを明らかにすること
根本的な変革に踏み出すとしたら、その社会とはどのようなものか、その目標像を検討する必要がある。従来のような経済成長と公共福祉による還元、グローバル化と効率化等を進めるなかで、持続可能性に配慮していく”成り行き”の道でいくのか、自立と共生を基盤として、リローカリゼーションと分散化等を進める”代替”の道でいくのか。そのような大きな社会目標のあり様を、SDGsをきっかけに活発化させていくことが期待される。
3.トップダウンや一部の専門家で目標を決めずに、関係者の対話と合意で決めること
国連の目標であるがゆえに、国レベルで目標を決め、それと対応する地方自治体レベルの目標を決めるというような垂直方向の管理ツールとして、SDGsが使われてはならない。地域住民、あるいは企業の従業員、ステークホルダーの一人ひとりがどのような社会を目指すのか、変革にどのように取り組むのか、そのためにどのような目標を選択するのかについて、主体的に議論に関わり、自らの行動として引き取っていくことが望まれる。
個人的には、持続可能な社会といってもひとつではなく、複数の姿があり、その複数の姿をきちんと共有し、”成り行き”の社会と”代替”する社会といった複数の姿を目に見える形で共存させていくことが社会転換のために必要だと考えている。
SDGsの幅広い中から目標を選ぶだけでは、”成り行き”の社会の漸進的な改善だけしか進んでいかないのではないか。SDGsを社会転換の道具にしていくことができるのか。社会転換を進めるならSDGsは効果的な道具なのか(他の方法の方がよいのではないか)。SDGsはなくても社会転換はできるのはないか。こうした観点から、SDGsの活用について、さらに検討していきたい。