ウイズコロナと環境問題
新型コロナに対する非常事態の中、在宅での自粛、不要不急の外出と移動制限が求められてきた。その結果として生じた行動変容により、環境に対してプラスとマイナスの両面の影響が生じている。
プラス面としては、産業活動の停滞や移動量の減少、収入不安による節約や外出自粛による消費抑制、自給や手づくりの活発化等による非意図的な結果である環境負荷の減少がある。
マイナス面としては、巣ごもり生活による民生家庭部門、あるいはデリバリーへの依存による運輸部門での環境負荷の増加、配達物の包装・梱包、あるいは農業や飲食業での食品ロス等による廃棄物の増加がある。
ウイズコロナの状況においては、マイナス面の環境影響を改善する工夫が求められる。
一方、アフターコロナに向けては、経済復興に伴う環境負荷の増加(リバウンド)が懸念される。ウイズコロナにおける環境負荷の減少状態を維持しつつ、新たな経済や暮らしへの創造的転換を図ることが課題となる。
3密の回避から3脱の創造へ
ウイズコロナ社会では“3密”の回避がキーワードとなったが、アフターコロナ社会では、“脱集中”、“脱グローバル”、“脱過剰”という3脱が重要である。
脱集中とは、新型コロナで明らかになった、高集中・高密度な大都市の脆弱性を解消することである。高度経済成長期以来、国土政策の課題となってきた過密の解消、そして過密地から過疎地への人口移動による適疎の実現を図るのである。
脱グローバルとは、国際的に活発に過ぎる人流、物流がパンデミックをもたらしたことを踏まえ、グローバルな物質の循環や人の移動を見直すことである。江戸時代のように鎖国に戻ろうということではない。忙しく動きまわる観光や産地国不明のアンフェアな交易を手放し、顔の見える関係づくりを楽しむ、スローで高付加価値な交流・交易に転換するのである。
脱過剰とは、大量生産・大量消費・大量消費に依存する、物質的に過剰であるが実は豊かとはいえない経済や暮らしを見直し、簡素だが豊かな暮らしへの代替を図ることである。
ウイズコロナの状況は3脱の必要性を露わにするともに、3脱の可能性を感じさせてくれた。3脱は持続可能な未来社会を実現するために、根本的な社会転換の方向性として、そもそも取り組むべきものであった。新型コロナは、3脱への転換を急ぐべきと教えてくれたのではないだろうか。