サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

SDGsを活かす地域づくりの11原則

2020年09月18日 | 持続可能性

 地域活性学会「SDGsを活かす持続可能な地域づくり研究部会」において、SDGsを活かす地域づくりの11原則をまとましたので、ここで公開しておきます。

 SDGssの経緯ゆえの特性を知り、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に示される重要な理念を尊重して、SDGsウオッシュにならないようにするための原則でもあります。

 同研究部会では、この原則をそうような地域づくりを進めるべく、さらにSDGsを活かす地域づくりコーディネイターのあり方や育成を検討していきます。

 

SDGsを活かす地域づくりの11原則 ************

 

(1)地域ぐるみで、大胆な転換を目指す

原則1 大胆な転換を実現する道具としてSDGsを活用する

・人口減少と高齢化、気候変動による異常気象の頻繁化、新型コロナによる経済不況など、持続可能な発展を損なう諸問題が深刻になる非常事態において、諸問題の根幹を見直す社会転換が必要な状況である。

・この状況において、変わる・変える道具として、SDGsを使うことが必要である。SDGsを使い、これまでの社会の構造や方法の大胆な転換を目指し、足下からのイノベーションを起こしていく。

・SDGsを使うことで、どのような地域社会を目指すのか、それを実現するために、これまでの地域づくりのどこを変えるのかを明確にする。

・SDGsウオッシュとならないように常に内省をしながら、SDGsを使う。

原則2 広範な入口を活かし、地域主体の学習を促し、深い学びにつなげる

・地域づくりの主役となる地域住民と地域企業の参加が不可欠であり、地域住民と地域企業のSDGsに関する転換学習を促しながら、地域づくりにSDGsを活用する。

・SDGsに示すテーマは広範であることを活かし、それを示すことで、関心が異なる、多くの主体が参加するきっかけとする。各々の関心を入口として、深い学びにつなげる。

・この際、単なる学習に留まらせるのではなく、学習を経て、転換に向けた実践につなげる、イノベーション創造に向けた実践につなげる、一環した人づくりのプログラムが必要である。

原則3 特に公益性を持つ農山村地域等が変革や転換の先導役となる

・地方のまちむら(地方都市や農山漁村)は、縮小と衰退が加速しているが、これらの地方のまちむらが地域の良さを生かして、持続可能な発展を進めることが、大都市圏の問題解消にもつながっていく。地方のまちむらこそが、持続可能な発展の先導役となる。

・地方のまちむらにおいては、地域の住民、企業、市民活動団体、行政、学校等による地域の課題解決に向けた取り組みが大都市圏、日本全体、ひいては世界の課題解決につながる。この点について、SDGsという道具を上手く使って、地域の主体が学び、外に訴求し、その逆照射によってさらに元気を得ていくという活性のプロセスをつくっていく。

・都市に立地する大企業は、地方のまちむらの活性化が日本全体のSDGsの実現において重要であると捉え、関係性を基盤とした支援を継続的に行なう。都市に立地する企業は、国際貢献だけでなく、国内の先導地域の支援という側面から、SDGsに取組んでいく。

 

(2)持続可能な未来のビジョンを共有し、連環・根幹に踏み出す

原則4 地域主体が地域課題とあるべき地域社会の姿を共有する

・地域の持続可能性に関して解決すべき課題や目指すべき持続可能な地域の将来像を関係者で話し合い、それを共有することが必要である。この共有のプロセスがないと、関係者の学習や相互理解がなされず、妥協や調整による見せかけの協働に陥る。

・地域にとっての課題は、①国際課題への地域からの貢献と②地域課題への地域主導の解決という2つの側面にある。①についてはSDGsのターゲットが参考になるが、②についてはSDGsのターゲットやインデックス等が国内課題に対応していない。②については、17のゴールを参考にしつつ、その具体的な内容は地域独自に検討する。地域の将来予測を踏まえて、将来に向けた地域の課題を明らかにし、課題を解消するあるべき地域社会の姿を検討する。

・持続可能な地域のあり方は、次に示す「公正・公平」、「循環と共生」、「連環と根幹」の側面で検討する。

原則5 循環と共生への配慮を地域活性化につなげる

・SDGsでは、環境面での目標を多く掲げているが、日本国内でも、豪雨や猛暑の頻繁化・定常化等のように気候変動が異常気象をかさ上げすることによる地域への影響が深刻化している。気候の非常事態に対して、緩和と適応という両面での地域での取組みを、加速化・強化していく。

・再生可能エネルギー、廃棄物、生物多様性等の取組みは、地域資源を活用する取組みであり、その活用は地域の経済循環をつくり、地域主体の活力の向上、社会関係資本の再構築において、有効である。

原則6 多様な主体の共生の視点で考え、誰も取り残さない、公正・公平な地域を目指す

・SDGsの理念として「誰も取り残さない」「社会的包摂」という点が重要である。児童・高齢者、障がい者、性的マイノリティ、ひきこもり等の弱者にとって、地域の課題はより深刻であることを捉え、弱者に配慮した地域を目指す。

・特定の主体だけが活性化することがゴールではなく、公正・公平にあらゆる主体がそれぞれの豊かさを獲得していくことを重視する。

原則7 問題間の連環を捉え、根幹にせまる、横ぐしプロジェクトをつくる

・17のゴールにあるような、たくさんの地域課題に対して、個別に取組むだけでは従来と何も変わらない。再生可能エネルギーへの取組みを地域経済循環や他の地域課題の解決につなげる等のように、1つの地域課題への取組みを他の地域課題の解決に連環させるように、取組みをデザインする。

・特に、地域課題の統合的な解決につながるような根幹的プロジェクト(横ぐしプロジェクト)を地域で位置づけ、推進する。根幹的プロジェクトとしては、地産地消・地域内自給、コンパクトなまちむらづくり、関係人口や移住者を活かす地域づくり、三方よしのコミュニティ・ビジネスの振興等がある。

  • 転換に向けた実践を立ち上げる工夫を行なう

原則8 参加主体にとっての市場的あるいは非市場的な実利を生み出す

・SDGsへの取組みは社会課題への意識だけは発動せず、また継続もしない。地域主体にとっての市場的な(経済的な)実利、非市場的な(経済的でない社会的、個人的な)実利、社会関係資本の形成を促すこと必要である。

・経済の量成長に囚われない質的な発展、社会面での豊かさの創出を感じさせるようなプロジェクトマネジメントを行なう。

原則9 未来の世代にたいまつを受け渡す今日の若い世代に役割と場をつくる

・持続可能な発展は現在の世代にとっても重要であるが、これまでの方法に囚われず、半世紀以上を見通して、変革的で根幹的な取組みを創造していく役割は、今日の若い世代に任されるべきである。

・中高校生、大学生、20歳代の若い世代により、未来の地域の目標やその実現のためのプロジェクトを生み出すチームをつくり、その成果の実現を支援する地域ぐるみの取組みを進める。

・地域の高校における探求学習、あるいは地域課題の解決を通じた人材育成を図る地域の大学が、SDGsを入口にして、地域課題の解決につながるプロジェクトを支援していく。この際、高校、大学の地域内の教育機関が相互に連携し、地域課題を解決する実践力となるような本格的な取組みを進める。

原則10 フロントランナーが動き出す参加をデザインする

・今日の若い世代、あるいは関係主体の取組みを創造していく場では、より変革的なアイディアを導き、それを実践につなげていくような、これまでにないワークショップ手法が必要となる。

・例えば、リーダーシィップを発揮でき、実行力のある、フロントランナータイプの若者に、ワークショップに参加してもらい、ワークショップの成果を実践につなげる支援施策をセットにする。

 

(3)大災害の経験を活かす

原則11 リスクへの対応をSDGsのゴールに追加する

・SDGsでは、今日のパンデミックも含めて、自然災害、気候変動災害、あるいはそれに伴う世界恐慌等といったリスクに対する備えや回復に関する視点が弱い。

・リスクへの対応をゴールに追加し、上記に示すような、公正・公平、連環・横ぐし等の観点から、地域のレジリエンスを高める取組みを変革的に創造していく。

・特に、気候変動が異常気象をかさ上げし、想定外の異常気象の発生や異常気象の頻繁化、常態化が進んでいるため、温室効果ガスの排出削減という気候変動の緩和策の最大限の実施とともに、それでも避けられない気候変動の影響の適応が必要となっている。気候変動の地域への影響を地域主体が捉え、地域の自助、互助による適応を促す。

 


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