サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

山村再生支援センター 山村きぎょう会議

2009年06月21日 | 環境と森林・林業
■山村再生センター

林野庁が本年度から予算化した山村再生センターが、いよいよ立ち上がった。私は、同センターの関係者による第1回山村きぎょう会議に出かけた。会場は東京農業大学、参加者は50名ほど。

同センターは、地球温暖化防止、教育、健康づくりに係る森林・山村のもつ働きと企業のマッチングを支援する。

例えば、森林整備による森林の二酸化炭素の吸収、森林バイオマスの利用による化石燃料の代替(二酸化炭素排出量の削減)といったクレジットを、国内排出量取引やカーボンオフセットの市場にのせ、二酸化炭素排出量の削減を図りたい企業に売る。山村側からみれば、資金調達の新しい手法として期待される。

また、森林・山村のもつ環境教育や健康づくり機能についても、企業のCSRや福利厚生等向けに提供する。特に、森林セラピーについては、全国各地に森林セラピー基地やセラピーロードが整備されつつある。それを従業員の保養に活用してもらうことが期待されている。


■先進地の報告

山村きぎょう会議では、やや難関な事業の仕組みをかい摘んで説明したのち、全国各地の先進地域の取組が報告された。さすがに興味深い地域ばかりが登場。

山形県の飯豊町では、1000年以上は続いてきた3,200人規模の集落が、現在は400人と急激に衰退していることが報告された。交流人口は35万人と多いのに、山村に来る人はあまりお金を使わないともいう。

衰退の危機にある集落は、もともと薪炭林として生成された広葉樹の共有林が多いところ。薪炭の利用が減少し、一時はチップを製紙用に供給してが、それもだぶつきだしたため、再度エネルギー利用を検討しだしている。

広葉樹の森は、もともと地域内の有機物循環の中で形成された。森の木や下草は、煮炊きや暖、農地の肥料や畜産敷料に使われ、生活や生業を支えていた。この有機物循環に外から持ち込まれるエネルギーは、太陽エネルギーだけである。森林による炭素吸収や、森林バイオマスによる化石燃料代替等は、森林の持つ切り身にすぎない。有機物循環自体を価値づけることが必要である。


袋井市では、メロンの温室栽培に、森林バイオマスを利用する例が紹介された。栽培されたメロンは、エコメロンと称されているらしい。ただし、現状では、燃料に使われる木質ペレットは、地元で生産されておらず、岡山から調達している。

地元天竜で木質ペレットを製造する計画はあるが、需要側が先行して動き出したことが面白い。担当者にすれば、結果的にそうなったということだが、得てして供給側が先行し、需要開拓に苦労することを考えると、需要先導という形は意義深い。


■私の期待

私は2日間の会議のうち、1日めを傍聴しただけ。その後、今後のセンター事業の戦略の議論がどのようになったかは聞いていない。

私の勝手な期待だけ、最後にまとめておく(たぶん、同様な議論がされただろうが)。

・山村と協働する企業は、適正なサイズである必要がある。地域の山村容量において、持続可能なサイズ、あるいはペースで協働してくれる企業を見つける必要がある。

・クレジット等を売買することで、森林整備の費用が調達できるという発想ではいけない。切り売りではいけない。クレジットの売買はきっかけ、森林・山村にまるごと、企業が関わるという方向性が必要である。

・もっとも重要なことは、森林・山村が活かされる持続可能な社会とは何か、その目標像をしっかりと描き、共有していくこと。その実現のためには、山村側も都市側の企業も、今までの様式を変革していくことが必要だろう。

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