全国の都市住民7200名を対象にした山村に関するWEBアンケート結果を分析してみた。
なぜ、このような分析をしているか。それは、山村再生を行う上では、山村の持つ地域資源や人の想いだけでなく、都市住民のニーズを把握するマーケティングが必要だと考えるからだ。マーケティングとは、「売る方法」ではなく、「売れるしくみ」をつくることだとよく言われるが、それを山村再生にも当てはめてみたいと思ったが、誰もあまりやっていないようだ。そこで、機会を得て、挑戦することとした。
マーケティングの基本は、市場のセグメンテーションとターゲッティングである。では、山村の提供するモノやサービスの市場はどのようなセグメントに分けられるのか。どのようなセグメントを対象に事業を展開したらよいのか。
WEBアンケートでは、山村への関与の実態を訪問、購入、情報入手等の観点から把握する設問を設けている。この設問を用いて、因子分析による類型化やクロス集計の優位性の検定等を積み上げてみた。
現段階の結論を列挙する。
1.山村関与層(訪問、購入、交流、情報入手、居住)は、木材利用あるいは国産材利用意向が強い。国産材利用を促すためには、山村関与層を中心とした訴求、あるいは山村関与を強化が効果的であると考えられる。
2.山村関与のうち、山村体験の直接性から山村訪問者に注目する。訪問先へのこだわりから、山村訪問者から「山村こだわり層」とその比較対象としての「観光こだわり層」を抽出することができる。
3.全サンプルのうち、1年間以内に帰省以外で山村を訪問したことがある人は15%。そのうち、「山村こだわり層」は34%(全サンプルの5%程度)である。
4.「山村こだわり層」は、のんびりできること、景色がよいこと、食べ物がおいしいことにこだわる層である。また、他の層に比べて、なじみ、人情味、特産品、伝統文化へのこだわりが強いことが特徴である。
5.「山村こだわり層」は、お気に入りの山村をもち、特産品の購入も多く、また国産材の利用意向が高い層である。新たな山村事業への関心も高く、山村の公益性に対する意識も高い。
6.また、「山村こだわり層」は、オピニオンリーダー度、社会関係資本への接続度が高い層である。「山村こだわり層」を通じた波及も考えられる。
7.5と6より、「山村こだわり層」をターゲットにした山村事業の展開が、波及性を高めるうえで有効と考えられる。
8.「山村こだわり層」はホームページ、パンフ等からの情報入手が活発であり、また口コミも有効である。「山村こだわり層」のこだわりに合わせた情報発信が有効である。
以上