白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

ヒーローは誰?

2009-10-17 | 画廊の様子
一の谷合戦  木版  橋本禎造  (江戸凧 最後の職人)

一の谷の合戦は源平合戦における歴史上および物語の戦いの一つで様々なエピソードが語られています。平家の貴公子敦盛のひときわ憐れな最期と心ならずも坂東武者熊谷次郎直実がこの若武者を討たなければならなかった苦悩と後悔の名場面は読む者聞く者の涙を誘います。その中には滅びの美学といわれるものがあふれています。
平家物語は全編を通して盛者必衰と諸行無常の思想を表し、また源平合戦のドラマチックなエピソードや情趣豊かな貴族の社会を語ったものです。
兼好法師が徒然草で記しているように琵琶法師が語り継ぎ、また多くの語り部、
絵師や作家によって様々に異なる展開をしながら今日に残されて来ました。

沖の船へ駒を泳がせていた華麗な戦さ装束の若武者は扇をかざして呼び止めた坂東武者直実の声にさっと引き返して来た。

       そもそも、いかなる人か。名乗らせたまえ、お助けしよう。

       汝が為にはよい敵ぞ。名乗らずとも頸をとって人に問へ。

この平家の滅亡への惨状を描く場面は歴史の教科書には必ず登場します。

むずと掴んで押さえ込み、直実は頸を切らんとして面をのぞくと年のころは我が子と同じ十六、七の美少年であった。

        疾く、疾く、頸を取れ。

討ち取って後に錦の袋に収めた笛を腰に挿しているのを見つけた直実は人に聞けば
この若者こそ笛の名手、平家の公達敦盛であったことを知る。
身分高き人は戦の陣にも風流なものと感心したという。


武者絵について  伝説のヒーローのわくわくするような見せ場を色彩豊かに
          描いた絵で合戦の力強い描写と登場人物の心の風景を語る
          叙情的表現で描かれている。
                         s.y

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