集改センターの第169回 スキルアップセミナー報告
開催日:2019年(平成31年)4月3日(水)
テーマ:①「特別の影響を及ぼすときとは」
②管理者(理事長)の責任と権限とは
③管理組合の責任 以上について事例・判例等を参考に検証を行う。
講 師:九鬼 正光(本会・正会員/弁護士)
<セミナー概要>
■特別の影響を及ぼす場合について
区分所有法では、共用部分の変更や規約の改正等により一部区分所有者の権利に特別の影響をぼす場合は、その承諾を得なければならないとされている。それでは「特別の影響」について判例ではどうなっているのか。この裁判は、店舗部分の広告物その他の施設の設置について、従来は無償とされていたものを、規約改正で有償にしたが、店舗所有者が使用料の支払いしなかった、というものである。一審は有償化を受忍限度内であるので特別の影響を与えないとしたが、控訴審では特
別の影響を与えるとした。上告審は有償化が社会通念上相当か否かの審理の上で特別の影響について判断せよ、として差し戻した。差し戻し審では有償化の金額は社会通念上相当な金額として特別の影響はないと判断した。受忍限度内であるとしたのです。
■管理者の権限と義務
管理者の権限は、区分所有法第26条に定められています。包括的な広い範囲の権限が与えられているのではないことに留意してください。また、管理組合との委任関係により職務を遂行することになり、民法の規定が準用され、善管注意義務を負うこととなっています。平成14年の区分所有法で共用部分に生じた損害賠償ができるとされたことは管理者の権限において、重要な改正となりました。
■管理組合の責任
昨年9月に関西でも台風による被害が発生しました。事例としてマンションの駐車場に設置していたボードが強風によって飛び、隣地に駐車していた車に傷をつけたとして、所有者が管理組合に賠償を求めてきた、というものです。管理組合は理事が職務を行う際に第三者に損害を与えた場合は賠償責任を負うとされています。理事長が総会決議なしでコンサル契約を締結したが、総会で否決されコンサル会社から損害賠償を起こされるといったケースが考えられます。台風等の自然災害の場合は、理事の職務によるものとはならないので、管理組合が責任を負うことはなく、区分所有者全員が賠償責任を問われることとなります。
■最後に
4月1日に新元号「令和」が発表され、5月1日に改元となります。今回が平成最後のスキルアップセミナーとなりました。今後は基本2か月に一度の開催となりますが、皆様のお役に立てるセミナーをこれからも行ってまいります。
~次回開催予告~
■第170回スキルアップセミナー 2019年6月5日(水)午後3時から
テーマ: ①「特別の影響を及ぼす」共用部分の変更決議
②「区分所有法が規定する管理者(理事長)の責任と権限
講 師:九鬼 正光 (本会・正会員/弁護士)
<上記の項目について、事例・判例等を参考に検証を行います。>