集改センターの第160回 スキルアップセミナー報告
開催日:2018年(平成30年)6月6日(水)
テーマ:「シニア向けマンション」「定借マンション」の問題点
講 師:彌島 義尚(司法書士/司法書士法人なにわ合同)
<セミナー概要>
■はじめに
新築分譲マンションの登記に携わるなかで、シニア向けマンション・定借マンションは問題をはらんでいるように感じていました。どういった部分が問題なのか考えてみましょう。
■シニア向けマンション
法律上の定義はなく、シニア層向けの分譲マンションを言い、「高齢者用マンション」「ケア付き分譲マンション」「分譲型有料老人ホーム」という呼称で分譲されることもあるようです。1970年代がはじまりと言われています。
分譲マンションですので、区分所有法第3条の団体(管理組合)が建物の維持管理・資産管理を行うことになりますが、問題なのは区分所有者が入居の時点で高齢者だということ。一般のマンションでも、高齢化による管理組合役員のなり手不足と言われておりますが、シニア向けマンションはスタート時点でハンデを背負っている状態といえます。また、契約時にうたわれていたサービスが提供事業者の採算悪化による撤退や追加費用の発生などで受けられなくなる事例もあるようです。その結果、転売することも難しくなるという悪循環に陥っています。
■定借マンション
1991年に導入された定期借地権制度による定期借地権付分譲マンションをいいます。定借期間は50年以上、契約の更新に関する規定の適用がないなどが要件となり、公正証書等の書面で特約を結びます。借地権方式(地上権・賃借権)と転借地権方式があります。主流は、分譲事業者が介在する転借地権方式です。制度導入以来30年近くなり、期間満了が近づくにつれ区分所有者の維持管理への意欲が失われていく、空き住戸の増加によりスラム化が生じる、契約満了時に円満に原状回復がなされ、更地明渡しが問題なく行われるのか、また、介在している分譲業者が地代を支払わなかった場合はどうなるのか、などといった問題点が指摘され始めています。
■まとめ
今後購入を考えている場合は、「シニア向けマンション」については、提供されると記載されているサービスの中身をよく吟味し、月々の負担に見合うものかどうかよく検討すること。「定借マンション」を購入する場合は、修繕積立金とは別に、期間満了時に備えとして取壊し費用への対応がなされているか、についてチェックすることが重要だと思われます。どちらの形態のマンションも、国による分譲業者への法的規制などによる指導の強化が求められてくると思われますが、何よりも購入予定者、区分所有者が理解を深める必要があります。
~次回開催予告~
■第161回スキルアップセミナー 2018年7月4日(水)午後3時から
テーマ:大規模修繕をより深める為に必要な事
講 師:上村 允郎(本会・正会員/設計監理事業部長・建築担当)
<設計も業者も大規模修繕を今まで以上に生業とする時、何がエンドユーザーから求められているのか。仕事をとる為の仕事になっていないか。従来の工法、材料の再検証も必要な時です。>