学生時代の元恋人が自殺する瞬間迄弾いていたパッヘルベルのカノン。
その遺書代りの逆回転で録音したテープを手にした夜から、小田島と
音楽教師・小牧瑞穂の周りで奇怪な事件がくり返し起こる。
日常生活が序々に軋み始める。失われ二十年の歳月を超えて託された彼の死の
メッセージとは何か。
男の死の陰にあるものは、二人の男と一人の女の間の愛なのか、憎しみなのか・・・
幻聴のようにヴァイオリンの調べが響きその旋律は瑞穂を何処へ導くのか。
『「音」が紡ぎ出す異色ホラー長篇。』と説明にあるがむしろ不器用な
青春恋愛小説 ?
ホラーとあるが、怖さは無し、むしろ音楽とは何か?を問う解説書?
過去を忘れ、平凡に生きる日常に、ちょっとした疑問と不安は波紋のように
広がっていく。過去に置き去りにしてきた自分をしっかり見つめ直したとき、
そこからまた新たな人生が始まる。
1996年 文藝春秋 刊
その遺書代りの逆回転で録音したテープを手にした夜から、小田島と
音楽教師・小牧瑞穂の周りで奇怪な事件がくり返し起こる。
日常生活が序々に軋み始める。失われ二十年の歳月を超えて託された彼の死の
メッセージとは何か。
男の死の陰にあるものは、二人の男と一人の女の間の愛なのか、憎しみなのか・・・
幻聴のようにヴァイオリンの調べが響きその旋律は瑞穂を何処へ導くのか。
『「音」が紡ぎ出す異色ホラー長篇。』と説明にあるがむしろ不器用な
青春恋愛小説 ?
ホラーとあるが、怖さは無し、むしろ音楽とは何か?を問う解説書?
過去を忘れ、平凡に生きる日常に、ちょっとした疑問と不安は波紋のように
広がっていく。過去に置き去りにしてきた自分をしっかり見つめ直したとき、
そこからまた新たな人生が始まる。
1996年 文藝春秋 刊
ぜひ読んでみたいと思いました
怪異現象の原因は何かということよりも、なぜそれらの現象が登場人物の上に起きるのか、死んだ康臣からのメッセージなのか、という方向に話は進みます。
それによって、登場人物たちは自分を見つめ直す機会を得るという物語になっていますね。
40歳という、家庭も仕事も一番充実している時に突きつけられる、20年前に封印したはずの想い。
これまでの20年間が間違っていたのではないかという苦悩。
やり直すことはできるけれど、決して早いとは言えず、失う物も大きいこの年齢。
実に、きつい設定ですね。
人は日々、色々と忘れていくからこそ生きていられるのですし、意識的に、そして無意識的に、妥協や取捨選択を繰り返しています。
20歳の頃の夢のままに、人生を歩めている人間など、そう多くはないのです。
しかし康臣は、それらの想いを容赦なく突きつけます。
まるで自分が上手くできなかった取捨選択をすることを、他人にも許さないかのように。
天才には変人が多いと言われますが、その原因の一つに、この妥協や取捨選択が上手くできないという事があるのかもしれませんね。
彼らの創りだす芸術が、それらの犠牲の上に成り立っているのかと思うと、なんともやるせない気がしてきます。
音楽には、聴いた時に情景を呼び起こす力があると思いますが、その働きは、人間の想像以上のものなのかもしれません。
音楽によって、その時の情景だけでなく感情すらも生々しく甦ってしまいますからね。
>コメントありがとうございます。ミステリーと音楽、結構多いですね。