デザインはストーリーテリング 「体験」を生み出すためのデザインの道具箱
著:エレン・ラプトン 訳:ヤナガワ智予
ビー・エヌ・エヌ新社
銀座はGINZA SIXの6階に蔦屋書店が入っている。小洒落た空間でカフェが併設されている。扱っている本は、インバウンドを意識してか日本文化を扱ったものも多いが、全体的にはアートや建築に関するものが幅を利かせていてそういうコンセプトの本屋のようだ。
ふらっと立ち寄る機会があって、なにげに棚を眺めていたら本書の装丁とタイトルに惹かれた。ぱらぱらめくると大きなイラストと読みやすい文字組。奥付を調べてみたら2018年刊行の本だ。すこし時間が経った専門書は一般の大型書店でも出くわしにくいので、これも僥倖と思うことにして買ってみることにした。要するに衝動買いである。
あらためて読んでみれば、かなり欧米(というかアメリカ)のカルチャーと、いかにも翻訳翻訳した文であったが、何事も3段式にしてしまえば食いつきやすくなる、という話に興味がわいた。
・魅入る映画は、序盤・中盤・終盤がはっきりしている
・物事の手順を教えるときは3ステップに分解して教えると理解しやすい
・我々が美味しいものを食べたり、セックスで快楽を得るのも3段階である(欲する⇒気に入る⇒満足に浸る)
・要点をまとめるときは「3つある」とするのがよい。(3つめが肝心、ないしオチにするのがコツ)
なお、本書でみられる三段式は、クライマックス曲線とでもいうか、左向きの滑り台みたいな形の推移で表現されている。誘惑してどんどんカタルシスを高めていって絶頂に達し、クールダウンは速やかに、という形だ。あけすけではあるが人間の本能や生理に即しているのだろう。
というわけで、美術館なり遊園地なり、あるいはコンカフェなりは、単にモノを見せたり買わせたりするだけでなく、建物に入る前から、建物から出た後までを3段式を活用して体験設計するとよい、ということだ。本書はほかにもいろいろ手法や考え方が紹介されていたが、なんとなくわかった気になったのは上記のことである。
考えてみれば、TED式プレゼンとか、1枚で説明せよ系のハックでもこんな感じの説明がよいとされている。
①こんなことありませんか? (課題という名の誘惑)
②これで解決しちゃうんです!(ソリューションの提示)
③具体的にはこうやって解決します、あるいは具体的にこんな良いことがあります! (自分ごと化)
ジャパネットたかたのトークもこうだよな。これで雨の日でも気にせず洗濯ができる! とか。