cafe de sou-ryu

ほっと一息
ちょっと休憩しませんか?

永遠の一瞬

2010年01月18日 02時25分02秒 | I think so …
こんばんは。
本日の京都は日中少し陽が翳りはしたものの、
寒いながらもお昼間は比較的気温も安定した
静かな日曜日でした。


さて。
今日は少し長くなる、真面目なお話です。
もう日付は18日に変わってしまいましたが、
日曜日の17日は、阪神淡路大震災から15年目の日です。

毎年、この日にはTVでも追悼の番組や
ニュースが流れるため、実際に震災を体験なさっていない方も
その当時の様子を目にされた事はあるかと思います。


もう15年も経つんですね…。
その日のその瞬間、京都に住む私の家でも大きな揺れを感じました。
その朝の事はとてもよく憶えています。
いつもなら私は朝が弱くて、毎朝ぎりぎりの時間まで起きられず
大慌てで朝の身支度に追われるのが常なのですが、
その日に限って、地震の起こる数分前に目が覚めました。
午前5時46分。私は目覚めていたとは言え、
ベッドの中でその瞬間を体感しました。

今まで感じた事のない強い揺れ。
震源地の兵庫県から遠く離れた京都でさえも、
震度5以上を記録したと言われています。
幸い私の身の回りでは、特に被害らしきものはなかったのですが、
それでもその瞬間、強い恐怖を感じたのですから、
お住まいが倒壊されたり、被害の大きかった地域の方々にとっては
その一瞬が、恐ろしく長いものに感じられた事でしょう。

その日は、私の家族も私も、仕事や学校に出かけたのですが
それでも交通機関がマヒし、通常とはかけ離れた一日でした。
そして時間の経過と共に、TVに映し出される惨状に
改めてその朝に起こった出来事の恐怖が強く増していきました。


そして、次の日の夕方、私は今思い出しても
胸が締め付けられる出来事に遭遇しました。
私は翌日の夕方、アルバイトに出かけていたのですが
アルバイト先のパン屋さんも、普段なら朝から届くはずの
パンの材料が届かず、店頭に並ぶパンもいつものように
たくさんの種類のパンが出せずに寂しい状態でした。

そんな中、普段よくパンを買いに見える近くの会社のお兄さんが
お店に立ち寄られました。
「すごい地震やったね、宗流ちゃんのお家は大丈夫やったか?」
と、お互いに前日の地震の話をしていたのですが、
おもむろに、
「宗流ちゃん、お店の食パン全部あるだけ欲しいんや」
と、申し出をされました。
私はスライスしていない食パンの在庫を確認すると、
一本で三斤取れるパンが数本ありました。その旨を伝えると
「それ、そのままでいいから全部ちょうだい」との事。

お話を聞くと、その方のお勤めの会社には、
被害の大きかった地域に神戸支店の社宅があり、
今からそちらの社宅に届けるとの事。
車も電車も使えるか分からないとの状況の中、
その方はバイクで神戸まで向かわれるとのお話でした。


その日、実はそうした方はお一人ではありませんでした。
他にも数名、同じように両手に持ち切れないほどのパンを購入され
それぞれが兵庫県まで向かわれました。

今思うと、できるだけもっとお近くで購入された方が
身動きも取りやすかったのかも、と思わなくはないのですが
きっと、どの方もいてもたってもいられなかったのかもしれません。
だからこそ、ご自身のいらっしゃる京都から抱えきれないほどの
荷物を持って向かわれたのかもしれません。

重い荷物も、遠い道のりも、はやる思いの前では
どれほどの比ではなかった。人が人を気遣い、憂う思いは
自分の多少の苦痛など思う隙を与えない力があるのかもしれない、
そんな風に感じた瞬間でした。
そして、どうか無事にその思いが届きますように、
そう祈らずにはいられませんでした。



あの日。
一瞬が永遠に多くの人の命や生活、大切なものを思いがけない方向へと
動かしてしまった、1月17日。

今日、TVで目にした兵庫県の男性の言葉が、今も私の耳から離れません。
「生きたくても生きられなかった人のために、精一杯生きなければ」

その言葉は、あの一瞬が悲しい永遠を生み出した事実を
改めて強く思う一言でした。





宗流


和装小物 宗流
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