いったい蕎麦汁は、だいたいの人が醤油基調の同じ様な味の汁を思い浮かべるのではないでしょうか。 これは、温/冷にあまり係わりないと思います。
醤油基調以外の蕎麦汁といえば、ひと昔前まではカレー味のものでしょう。
最近は、塩やオリーブオイル、クリームとかトマト系の汁もあります。
しかし、現在あるどこの蕎麦屋でも、従来通りの醤油基調の汁が本筋という事に変わりはありません。
蕎麦汁は、大きく分けて2種類あります。冷たい蕎麦用の「つけ汁」と、温かい蕎麦用の「かけ汁、種汁」です。
それぞれ別の呼び方もあって、「つけ汁」は(辛汁)、「かけ汁」「種汁」は(甘汁)等と呼んだりもします。汁の呼び名は、これと決まっている訳ではなく、地域や店によって様々です。
しかし、基本的な材料は醤油と砂糖と味醂、それに出汁という点でほとんど共通しています。
関東のだいたいの蕎麦屋が、醤油に味醂と砂糖を合わせて「かえし」という汁をつくり、それを鰹出汁で割る手法をとっています。
今は「かえし」をスーパー等でも売っている事もあるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
この「かえし」も、蕎麦屋によって多少の材料や割合の違いがありますが、基本線は変わりません。
では、そうした蕎麦汁はいつ頃から作られる様になったのでしょうか?
おおまかにいうと、江戸府内の蕎麦屋に関して言えば、1600年代後半から文献上確認する事が出来ます。
一方蕎麦汁に目を移すと、この頃の料理本には(味噌)(大根卸ろし)(生醤油)等と書かれています。材料と江戸の消費拡大という条件が整った江戸時代後期になり、現在と同じ材料と製法の「蕎麦汁」を文献上に見受けられる様になります。
つまり、蕎麦汁の形は江戸時代後期以降と考えられるのです。
蕎麦汁は、第二次大戦後材料と情報に大きい変化がありましたが、現代とに近い形になってからおおよそ百年以上、基本的なものは変わらずにきている様です。
これから少しずつ、資料にも当たり、蕎麦汁について考えていきたいと思っています。