指 輪
以前に、ブログを通して知り合いになったTさんから、高校の後輩に新津きよみというミステリー仕立ての小説を書く作家がいるとうかがい、角川春樹事務所から出ている『神様からの手紙』を読んだ。軽いタッチで着想が奇抜な面白い小説だった。
ちなみに、新津さんはわたしより21年遅い卒業である。
読みさしの2冊が読了となり、読書の隙間ができたので、ふと思いついて彼女の小説を読んでみたいと思い、探したところ、町の図書館に、「アミの会(仮)」というグループが執筆した短編集(ポプラ社)が5冊あり、その中に新津さんの作品が収録されていた。
まず読んだのが『十年日記』(『11の秘密 ラスト・メッセージ』所集)という短編で、なかなか面白かった。
筋立てもさることながら、実に気配りのある書き方に感心した。
西村素子は60歳の誕生日に娘から五年日記を贈られ、以来5年ごとに更新して90歳の誕生日を迎えた。今度は孫娘から、「おばあちゃん長生きしてね」と、十年日記をプレゼントされた。
しかし、1週間分のページを埋めたところで、素子は脳溢血で亡くなってしまう。
その最後の日記に、「思い残すことはないが、あの指輪を落とし主に返したい。」と記されていた。
この指輪とは、16年前に素子が孫娘の大学入試合格のお礼参りに大宮の氷川神社に参詣した時拾ったものである。結婚指輪らしく裏に刻印があり、交番に届けたが、遺失物の届けがなかったということで、素子のもとに戻されたのである。
素子の残され娘による指輪の持ち主探し、落とし主の遺族の出現と物語は展開する。最後は二転三転して意外な展開になるが、ミステリー仕立てなので、これ以上詳細を書くことは控えることにする。気楽に読めて心温まる物語とだけ言っておく。
ちょっとびっくりしたのは、その指輪の裏にある刻印が「N to M」で、これはわたしの左薬指におさまっている指輪の刻印と同じだったことである。
小説の雰囲気に影響されたせいか、この偶然になんとなくミステリーを感じた。
以下は蛇足である。
小説の指輪は、夫に先だれた夫人が、お守りとしてとして大切にしていたものである。
わたしの指輪は、はまっている薬指が武骨な形になったため取り外すことができなくなっている。
果たしてカミさんがこの指輪を形見としてもっていてくれるかどうかは不明であるが、もしそうならば、わたしの遺骨の間から指輪を拾い出さないといけないなどという、馬鹿々々しいことを想像していた。
つくば市学園東大通りのトウカエデ
11月29日撮影
STOP WAR!
つくば市学園東大通りは何と美しいことか!日本一綺麗!