Shevaのブログ
サッカー、テニス、バレエ、オペラ、クラシック音楽 そのほか
 



サイモンのインタビューPart5




An interview with Simon Keenlyside
at Bayerischen Staatsoper July 2004
Part 5


ジェルモンのパパ
司会「これからやろうと思っている新しい役は何ですか?」
サイモン「ドン・カルロ、それから(椿姫の)ジェルモンのパパ。
ジョルジュ・ジェルモンはすごくリリックだし、クロスワード・パズルみたいな役なんだ。僕にとっては。今のところはこんなところですかね。わかんないけどね。」

マゼール「1984」
司会「また現代音楽もやるんですよね。」
サイモン「うん。また地元のイギリスでね。」
司会「いつになるのですか?」
サイモン「知らない。来年じゃない?」
聴衆「5月でしょ。」
サイモン「5月?あ、そう。」
司会「ロリン・マゼールさんの新作はそれまでに完成するでしょうか?」
サイモン(ぶっ!)
司会「コヴェント・ガーデン(ROH)でやるんですよね。」
サイモン「えぇ。」
司会「ロリン・マゼールの『1984』がコヴェント・ガーデンで初演の予定です。」

サイモン「ウィーン国立歌劇場総裁のホーレンダー氏(Holender)の話をしたいんだけどいいかな? 失礼に当たらないといいんだけど。

ホーレンダー氏が僕に言うんです。
『どうしていつも君は、ジョヴァンニやドン・カルロやジェルモンを私がオファーすると断るんだい?』
『だめです。出来ません。』
『どうして?』
『どうしてって…ホーレンダーさん。うちに帰りたいからです。』

そしてマゼールの「1984」の音楽についてですが、これがいったいどんなものになるのかわかりません。僕はもう契約書にサインしてしまったんです。この会話の最後にホーレンダー氏がぼくに言うんです。(ホーレンダー氏の声色を真似て)『キーンリーサイド君、心配いらんよ。どうせありがちなもんになるよ、だから歌うのも簡単さ。』なんて皮肉なんだろ!」

聴衆「それで、楽譜は一部でも見たんですか?」
サイモン「ぜんぜん。まったく。マゼールさんは一度僕に電話してきて…」
(聴衆は「1984」が当初2000年の初めに上演されるはずだったと簡単に説明する。)
サイモン「悪いけど聞いてなかった…」
聴衆「(繰り返して)まだできてないの?」
サイモン「う~ん、」
司会「でもマゼールさんと話したんでしょう?」
サイモン「そう、マゼール氏は一度だけぼくに電話してきて、その時僕の甥っ子が
僕の足に獰猛に喰らいついていたんです。(サイモンは飛び上がってやってみせる。)まるで犬のようにね。
『こらっ、ベン!離れろ!』そして
『はい、はい、マゼールさん。何ですか?』
『ベン、あっち行けよ!』
『もちろんですともマゼールさん、マエストロ、喜んで。』
『ベン、やめろったら!』(笑)
これがマゼールとしゃべった唯一の機会でした。(笑)

司会「でもあなたは契約書にサインした。」
サイモン「そうです。マゼールの魅力にころっと騙されたかな。なぜだろ。」

ウェールズ
司会「歌手だからいつも留守がちな一方で、あなたはは自分の家にいるのが好きなのですよね。」
サイモン「そうです。」
司会「それでウェールズとロンドンのあなたのうちではどういう風に過ごしているのですか?」

サイモン「休みの最初の1週間はいつもとまどいますね。街の喧騒の真っ只中にいるわけで。それで、ガールフレンドといっしょか、もしくは一人で、ウェールズに行くんです。そこは静寂の世界です。何をしてるかって? 4日後は日中の時間が惜しいぐらいで、しょっちゅう出かけています。魚釣り、ダイビング、散歩。農業用の納屋もあるので楽しくってしょうがない。

司会「小さな農場で、牧草地には花が咲き乱れ、隣家の羊が草を食んでいる…」
サイモン「植林したんだよ。」
司会「カバ、カラマツ、」
サイモン「カシ。」
司会「カシは育つのに時間がかかるんじゃ…」
サイモン「そう、でも半分は僕が植えたんだ。」
司会「オーク(樫)を?」
サイモン「基本的にはね。オークがこの高さになる頃は僕はもう老人になってるけど、カバは育ってる。見込みありそう。」
司会「あなたの趣味はほかにもありますよね。果物をどうとかする…」
サイモン「はい、はい。」
司会「果樹園で何をするんだっけ?」
サイモン「ジャム作りね。(笑)」
司会「『1984』やなんかのオペラでロンドンに長く滞在するから、ジャムを作ってるわけ?」
サイモン「そうとも言う。
おもしろいんだけど、僕の仲間で金のないやつがいて、ホテルに泊まれないから、2ヶ月も僕んちにいるんだ。そいつが僕に言うんだ、
『サイモン、きょうは、西洋スモモがとれたよ!』
ほらあれみたいな木で…」
聴衆「りんご?」
サイモン「あぁ。」
聴衆「プラム?」
サイモン「そう、プラムの一種。
友人『もう持ってきたよ。』
サイモン『じゃあ、冷凍庫に入れといて。』
友人『でももう入れる場所がないよ。』
サイモン『じゃぁ、アラン、ジャムにしてくれよ(笑)。』
それでアランは2日かけて西洋スモモのジャムを作った。これが最初の木で、翌週にまた2本植えたんだ。」

司会「そんなにジャムばっかり誰が食べるんです? その時はジャムだけで生きてるの?」
サイモン「そんなわけないだろ。でも全部食ってやるとも!」
聴衆「誰かにあげたら?孤児院とかに。」
サイモン「あげる相手に不自由はしてません。」

聴衆「どこでお生まれになったか聞いてなかったんですが…」
サイモン「ロンドンです。」
司会「ロンドンに就学前まではいたけど、寄宿学校に入ったんですよね。」
サイモン「そう。」
司会「ケンブリッジにある学校。」
サイモン「7歳でした。」

果樹園
司会「ロンドンにも果樹園をお持ちだそうで。」
サイモン「借りてるだけですけどね。」
司会「土地は借りてても果物はあなたのでしょう?」
サイモン「10年前に果物のなる木を植えたんだ。そろそろ収穫できるようになったんだ。全部。梨、プラム…」
司会「梨、プラム、りんご、」
サイモン「白スグリ、赤スグリ、黒スグリ。4種類のプラムにりんご。そんなにたくさんの量ではないけどね。」

司会「スグリを全種類?」
サイモン「うん。」
司会「ラズベリーも?」
サイモン「ラズベリーも、そう。いや。今年はダメだ。どうしてかっていうと、夜ウィーンから帰ってきたら、管理人から手紙が来てて、
『あなたの果樹園は雑草が伸び放題です。それに…何たらかんたら。』
それで僕は、夜なのに、子供のおもちゃのようなやつで、こいつがまたうるさい音を立てるんだ、」
司会「その電動のこぎりで」
サイモン「ギュィ~~ン!!」
司会「ラズベリーまで刈っちゃったと。」
サイモン「そうそう。全部だよ、きれいさっぱり… それでもう今年はラズベリーは出来ない。悲しいことに(笑)。」

ビリー・バッド
聴衆「ウィーンとかミュンヘンでまた『ビリー・バッド』をやる予定は?」
サイモン「僕はもうビリーをやるには歳をとりすぎている。だから残念だがあと2回しかやらない。そのうちひとつは、ウィーン国立歌劇場の製作だが、僕はこれは気に入ってないのです。ウィリー・デッカーはすばらしい演出家だと思うけど、この作品は僕には理解しがたい。船があって、みんな青い服を着ているが、白い服の若い男がやって来て、まるで天使のようで… というのは僕向きじゃない。でもウィーンでこれをやります。それから2年以内に、これが最後になるんですが、イングリッシュ・ナショナル・オペラでロンドンでやります。いつでもいいよと言ってるんだ。この小屋は好きなんです。少し難はあるけどね。この英語のオペラのために僕はジョン・トムリンソンと、ジョン・ダスザックやほかの人に出演をお願いした。もちろん自分も含めて。彼らがいいよと言ってくれたので、できそうなんだ。ウェールズのすばらしい作品だ。言ってみれば(ENOじゃなくて)ウェールズ・ナショナル…」

聴衆「旧作ですか?」
サイモン「そうだよ、ウェールズ出身の演出家の。あれ、名前をド忘れしちゃった。そんなに古代の人じゃないんだけど。」
司会「でもある程度昔の作品?」
サイモン「そうだけど、いい作品ですよ。また新装開店するんです。残念だが、これが僕の最後の「ビリー・バッド」です。でも歌えるだけでもありがたいことです。」

ハムレット
聴衆「ロンドンでまたハムレットをやるつもりは?」
サイモン「やらない。」
聴衆「えっ?」
サイモン「やらないよ。悪くはない作品ですが。最初僕はハムレットが最後に死なないのは違うんじゃないかって思っていたけど、まあ別に死ななくてもいい。真摯な作品ではありますね。」
聴衆「でも『オーパングラス(オペラグラス)』の批評は特Aでしたよ。」
サイモン「ナタリー・デッセーがね。彼女となら真に迫ったステージが出来る。ナタリーはすばらしい。」

批評
聴衆「批評は読んだりします?」
サイモン「読まない。いい評を読んだら悪いのも読まないといけないだろ?
悪いレビューなんて読む気にもなれないしね(笑)。自分が悪くない出来だったら読む必要はないし、批評なんてやぶにらみの老人が読むものさ。自分がひどい出来だったら自分でわかってるさ。
でもレビューってさあ、読んでみるとえんえんとストーリーが書いてあるんだよ。
僕らの麗しい歌や歌い方についてはなんにも書いてない。」
司会「最後の三行ぐらいかな。」
サイモン「だいたい誰が『セビリアの理髪師』のストーリーなんか知りたいんだよ。必要ないだろ?
批評家は知性的だって聞いてるし、自分に関するものじゃない批評は読みますよ。
イギリスでも、多分ここドイツでも。わかってるものもある。
僕はリハーサルの最初の日には台本を全部暗記しているし、これは契約だからね、
その役についての知識や今までの伝統的な演じ方も仕入れているよ、自分の役のみならずね。
僕が言いたいのは、批評家は批評する作品の歴史さえも理解してないんじゃないかってこと。
学生じゃないんだから。そういう評を読むとむかつくんだよ。

共演者
聴衆「誰と共演したいとか思ったりしますか?」
サイモン「またこれはいい質問だね(注:皮肉)。まったくもって。僕は今まで誰々さんと共演したいなんて言ったことは一度もないよ。なぜって、今までに一度も聴いた事のない歌手だって驚くほどすばらしかったりするものだからです。
例えば、ナタリー・デッセーがウィーン国立歌劇場の『フィガロの結婚』をキャンセルした時にスザンナ役を代役で歌ったタチアナ・リズニック、モルダビア出身の若い女性ですが、今までで聞いた誰よりもすばらしいスザンナだったと思う。
すごく自然で。
だから『僕は誰々とは共演したくない』という方がどっちかというと重要なのかもしれないけどね、まあ、そうでもないか。」



Part 6へ続く。






An interview with Simon Keenlyside
at Bayerischen Staatsoper July 2004
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サイモンのインタビューPart4




An interview with Simon Keenlyside
at Bayerischen Staatsoper July 2004
Part 4


歌曲
司会「あなたにとって、歌曲とは何ですか? 歌うのはドイツ歌曲だけですか? フランス語や英語のも歌われますか?」
サイモン「僕にとって、ドイツ語やフランス語の歌曲は人生そのものです。僕の人生を映し出す鏡のようなものです。今のところ、CDを録音したりする気になれません。そういう予定にはなってるけど、それは僕自身ではない。CDショップで僕の顔がついたCDを見るのはうんざりだし、そんなの意味ないことです。僕はその気になれば、2年に1回は自分でCDを作れるんです。今のところはブラームスの歌曲にぞっこんです。でも昨年は違いました。フーゴー・ヴォルフメーリケ歌曲集("Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier")が好きでした。
なぜかって? これらは僕にとって恋人みたいなもの、個人的な悩みであり、子供が生まれた喜びのようなものです。そして僕にとっては常にそんな感じなんです…僕には、皆さんと同じように、人生の意味なんて分かりません。難しすぎるっていう以外に言い表せないんですけど、(※3)ほかに表現するすべがありません。

イギリスの金持ちの農業を営む人が、レコーディングスタジオを持っていて、いつでもEMIのエンジニアといっしょに行けば、録音できるのです。自分一人でですよ。私にとってはこれ以上のことはないのですが、レコーディングする時間がないのです。問題なのは、これです。もっと休みが欲しい、ウェールズに行く時間が欲しい。これは新しいCDを録音するよりも僕にとっては必要なことです。

聴衆「1年間にどのくらい歌ってますか? 何回ぐらい公演していますか?」
サイモン「どのくらいって、公演回数? 歌うことと公演することは別物ですね。歌うのはほとんど毎日(笑)歌ってますよ。公演回数は、わかんないな。まったくもって。
聴衆「40回? 50回? それとも80回ですか?」
サイモン「ほんとにわからないんです。日記をつけてないし。思索や絵を書き付けるための小さな赤いノートは持ち歩いているけど。マネージャーが電話してきて、
「明日はウィーンに行く予定です、それから…」
「わかったよ。」
そんな感じで、契約書を読んだことは今までで2回しかない。契約書を読むなんてこんなつまらないことはないよ。だからほんとにわからないのだけど、公演が多すぎるような気がするんです。今年は4月と7,8月と12月はあいてるのでいいのですが、来年は2週間しか休みがない! 最悪だ。」

司会「この曲は、シューマンの「ケルナーの詩による歌曲集」から「さすらいの歌」で、シューベルティアーデ音楽祭で録音されたものです。あなたがCDを録音したがらないので、ラジオ放送を録音したんですけどね。」
サイモン「そうか、ごめんなさい。」(嘆息)

サイモン「これはユスティヌス・ケルナー(Justinus Kerner)の詩に曲をつけたもので…

音楽♪さすらいの歌

サイモン「うわっ。これはいやだ。どうしてこれをかけるんだよ。」

司会:(…を?)引用する「『舞台で歌うときはひとりきりだ。たった一人で劇場全体を震撼させるのだ。』」
サイモン「これは難しい、かなり難しいことですよね。演技もしないでただ歌うだけでは…大変なことです。でもすばらしいことなのです。挑戦しなくてはいけません。」

聴衆「歌をけいこするのはどうやって? 自分でピアノを弾くのですか、それとも先生に習うのですか?」
サイモン「詩に関しては、詩集を読むんです。一人でね。公園を散策しながら、歩きながらちょっとしたゲームをするんです。一歩ずつあるテンポで歩くんです。暗誦しながら。間違ったり、テンポに合わなかったりしたらまた戻ってやり直しです。(笑)だからすごく時間がかかるんです。僕はピアノが弾けないし、1週間ぐらいは歌わないで、ピアノを聴いて、詩集を読み続けるんです。こんな感じで僕はいつもゲームをしてるようなものなんです。でも僕にはこのゲームが必須なんです。」
司会「つまり、あなたは、正しいリズムで詩集を」
サイモン「そう~」
司会「読んでる」
サイモン「そう~」
司会「書かれている言葉に」
サイモン「そう~そう~」
司会「より親しんで、歌うときにいいように。」
サイモン「あぁ、そうなっているといいんだけどね。」

司会「あれ?どこまで行ったんだっけ?」
(インタビュアーはあんちょこを指で追う。)
サイモン「はい、はい、いいえ、はい、終わり(笑)」

司会「今度は、まったく違う歌を聴きたいと思います。この『さすらいの歌』は大変いきいきした歌だった。どうしてこんな曲を選んだのかとあなたは言いましたが、それは生き生きした曲だからです。今度はまったく正反対の歌です。僕の意見ではもっとも難しく、もっともすばらしい歌曲です。「冬の旅」から、「ライアー回し」です。2004年の6月17日の録音です。」
(聴衆「おぉ!」)
サイモン「ふむ。」
聴衆「この時、『冬の旅』全曲を歌われた?」
サイモン(囁く)「ライアー回しだけだ。」
司会「え?」
サイモン(幾分大きな声で)「ライアー回しだけです。」

音楽♪シューベルト『冬の旅』から「ライアー回し」

司会「特に驚嘆すべきは、ドイツ語の発声法です。非の打ち所がなく、すばらしく明瞭です。」(拍手喝采)
サイモン「でも忸怩たるものがあるんですよ。」
司会「何がです?」
サイモン「僕はいつも、言語において、よそ者だからです。」
(マイクを倒してしまう。)
サイモン「あっちゃ~ごめんなさい。…ドイツ語は僕の母国語じゃないから、いつも疎外感を感じていなければいけないのです。しょうがないことですが、焦燥感を感じるところでもあります。」

司会「だって英語の歌曲だってあるでしょう?」
サイモン「たくさんあります。よく聴きますし。」
司会「歌わないんですか?」
サイモン「歌わないです。」
司会「英語の歌も?」
サイモン「あんまり。僕の先生は始めっから僕にシューベルトやシューマンやブラームスやヴォルフやドビュッシー、フォーレにプーランクなどなどを教えました。
全部歌う時間はありませんでしたが。僕は最初に決めたんです。僕はヨーロッパ人。英国人じゃない。祖先をたどれば、ヨーロッパの血がミックスされている。
でもベンジャミン・ブリテンの作品では好きなのがあって、「ウィリアム・ブレイクの歌と格言(Songs and proverbs of William Blake)Op.74」のことですけれども、僕はブレイクの詩がすきなんです。でも、それ以外は、僕の歌手仲間がイギリスやアメリカの歌を歌うときは僕は「なんて美しいのだ!」と、美しいとは思うのだけれど、これは僕の歌じゃないとも思うんです。

司会「母国語で歌わないから僕はよそ者だと言いながらも、あえてフランス語やドイツ語の歌を選ぶというのですね?」
サイモン「当然のなりゆきです。」
司会「当然?これは大したことではないですか?」
サイモン「それはおかしな質問ですよ。だってロジャー・キルターとシューベルトのどちらを選ぶかと言われたら、シューベルトでしょ? ブリテン、シューマン、ブラームス、ヴォルフの方を選ぶでしょう? 僕にはわかりきったことです。偉大な天才作曲家は家族みたいなものです。それは僕が歌い手だからです。僕はその家族にはぐくまれていて、僕のような者たちのために書かれたその音楽に抱かれているのです。それに僕は、反国粋主義者です。単に言語が違うという壁があるだけで、母国語でないという壁があるだけで、ほかの壁はないと思っていますから。

司会「あなたは国粋主義者ではなく、あなたにとって偉大な作曲家は、シューベルト、ブラームス、ヴォルフなんですね。」
サイモン「それに、プーランクとドビュッシーもです。」
司会「フランス人のプーランクとドビュッシーも。」
サイモン「それとラヴェルとか。」
司会「ラヴェルにフォーレも忘れちゃいけない…」
サイモン「フォーレももちろん…アンリ・デュパルク(Henri Duparc)もすばらしいです。」

シューベルティアーデ
司会「ここミュンヘンでのリサイタルはいかがでした?」
(聴衆の熱い反応。)
サイモン「僕はよくシューベルティアーデの責任者の、ゲルト・ナハバウアーと、ふざけ半分(with tongue in cheek)で話をするんですが、
『ねぇ、ゲルト、シューベルティアーデでフランス語の歌を歌ってもいいかな、ラヴェルとかどうかな。』
『ダメ、ダメ』
『じゃあ、ドビュッシーは?』
『だめだよ、サロン音楽じゃないか。』
(笑)彼は間違ってる。絶対に。でもあの音楽祭は彼のもんだから。」

司会「でもナハバウアーは従来のシューベルティアーデの形を打ち破ったんですよ。もともとはシューベルトの作品しかだめだとされていたんですから。」
サイモン「ドイツ語の歌曲限定だったと思うけど。」
司会「いや、シューベルト限定だったんですよ。」
サイモン「でも僕はヴォルフを歌ったよ。」
司会「でもナハバウアーさんはあなたの(フランス語の歌を歌いたいという)希望に
は取り合ってくれなかったんでしょ。何を歌ったか忘れたけど、ヘルマン・プライもベートーベンを歌ったんですよ。」
サイモン「そうだね。」
司会「でもシューベルティアーデの最初の4年間はシューベルトしか演奏されなかったんです。」
サイモン「でも10年後にはつまんなくなるよね、シューベルトの作品は500から600ぐらいだから。」
司会「だからもう『シューベルティアーデ』じゃないんですよ。」
サイモン「そうだね。半分はね。6-4の割合だね。」

司会「ほかにリサイタルはやりました。もうミュンヘンではやりましたか?」
サイモン「あの、(聴衆が代役で出たと説明する。)そう。代役で。そこの劇場の音響はよかったですが大変でした。」
司会「ミュンヘンのDas Cuvilliér-Theater は歌いにくいですよね。」
サイモン「うん、そう。ほかにはどこで歌ったかって? ロンドンのウィグモア・ホールですね。英国では歌曲は人気ありますから。」
司会「イギリスでは歌曲が好まれている?」
サイモン「ロンドンではね、そうですね。」
司会「ウィグモア・ホールが一番そういった…」
サイモン「そう、毎日歌曲の夕べをやってますよ。」
司会「バービカン・センターもですよね。」
サイモン「毎日ってわけじゃないですがね。ロンドン、パリ、ジュネーブ、カーネギー・ホール、いろんなとこでやりましたよ。誰かが「リサイタルはどうだい?」って言うと、僕が歌うことになるわけで。」

ロシア
サイモン「ご存知、ロシアのボリショイ劇場でもリサイタルをやりましたよ。リハーサルしようとステージドアの前に行きました。そこには太った馬鹿でかい女性と4人の小男がいました。
『僕はシューベルトを歌いに来たんです。声楽曲。僕が舞台で歌うんで…』
『ニエット!(ダメダメ!)』
『僕は(イタリア語で)ソリストなんですよ、シューベルトを歌うんです…』
『ニエット、ダー、ニエット!』(笑)

それでホテルに戻ってジャケットを着たんです。(服を着るまね)ネクタイをして、また入り口に行きました。

『Elena Moškováさんは? ボリショイ劇場の。ぼく、シー・モン・キンリーシディ』
『歌手(=Cantante)。歌手。歌うの。僕が。僕がこれ歌うの。Elena Mošková(呼んで)。』

『あぁ!』男はやっと気づいた。
『エレーナ・モスコワ。はい、はい。エレーナ・モスコワね、云々かんぬん…』

『あぁ、よかった。わかってくれて』
外で待ったが、20分たってもエレーナ・モスコワさんは出てこない(笑)のでまた行ってみた。
『エレーナ・モスコワは…』
『ダメ!』(※4)

それでリハーサルもできなかった。断られたんだよ。
おまけに、リサイタルをいざ始めようって時に、女性が来て言うんだ。

『テキストがないの。悪いんだけど、全部の歌を訳してもらえるかしら。』
『無理ですよ。そんな時間ありませんよ。』

それでとっても恥ずかしい話なんだけど、シューベルトの歌曲のリリックな旋律を、
すべてイタリア・アリア風に、歌ったんです。
(やってみせて笑う)でないとわかってくれなさそうだったんで。
まったく未知の世界の旅でした。

おまけにリサイタルが終わる頃には、背後で声がするんです。
『オネーギンは!』『オネーギンは歌わないのか!』」(笑)

オネーギン
司会「それでオネーギンを歌ったの?」
サイモン「コヴェント・ガーデンで事故があって、パリでの『オネーギン』公演をキャンセルしたんです。とても残念なことでした。パリでのオネーギン、初役だったのに。この「パリ―モスクワ」、パリでロシアのオペラをやるのはとてもエレガントだと思う。おもしろいと思います。」
司会「それまでにオネーギンを歌ったことはなかった?」
サイモン「なかったんです。それが初役のはずだったんだ。」
司会「でもいつかはやられるんでしょうね。」
サイモン「そうですね。」
司会「数え切れないほど多くのレパートリーのひとつとして加わるわけです。」
サイモン(息を吐く)「オネーギンという役は手ごわいですよ。」


Part 5へ続く。






An interview with Simon Keenlyside
at Bayerischen Staatsoper July 2004
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サルヴァトーレ・リチートラ テノール・リサイタル





2005年 11月26日(土) 23:25 ~ 翌 03:25 サルヴァトーレ・リチートラ Bモード・ステレオ
テノール・リサイタル
11月26日(土) 23時25分20秒 ~ 翌 01時23分20秒 [1時間58分00秒]




1. 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」 から
   「前奏曲とシチリアーナ」
   「乾杯の歌」 ( マスカーニ作曲 )
2. 歌劇「仮面」 序曲 ( マスカーニ作曲 )
3. 歌劇「トスカ」 から
   「たえなる調和」
   「星はきらめき」 ( プッチーニ作曲 )
4. 歌劇「スザンナの秘密」 序曲 ( ウォルフ・フェラーリ作曲 )
5. 歌劇「アンドレア・シェニエ」 から
   「ある日、青空をながめて」 ( ジョルダーノ作曲 )
6. 歌劇「運命の力」 から
   「この世は地獄」
   「天使のようなレオノーラよ」
   序曲 ( ヴェルディ作曲 )
7. 歌劇「仮面舞踏会」 から
   「永久にきみを失えば」 ( ヴェルディ作曲 )
8. 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」 序曲 ( ニコライ作曲 )
9. 歌劇「マルタ」 から
   「夢のように」 ( フロトー作曲 )
10. つれない心 ( カルディルロ・サルヴァトーレ作曲 )
11. ナポリ民謡メドレー
12. オー・ソレ・ミオ ( ディ・カプア作曲 )
[ アンコール ]
13. 歌劇「アルルの女」 から
   「ありふれた話」 ( チレーア作曲 )
14. 歌劇「西部の娘」 から
   「やがて来る自由の日」 ( プッチーニ作曲 )
15. ビー・マイ・ラブ ( ブロスキー作曲 )
16. 歌劇「トスカ」 から
   「星はきらめき」 ( プッチーニ作曲 )

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テノール : サルヴァトーレ・リチートラ
管弦楽 : 東京フィルハーモニー交響楽団
指 揮 : ユージン・コーン
字 幕 : 小畑 恒夫

[ 収録: 2005年7月4日, サントリーホール ]





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サンクトペテルブルク建都300年ガラ





サンクトペテルブルク建都300年ガラ Bモード・ステレオ
11月27日(日) 01時24分20秒 ~ 03時17分50秒 [1時間53分30秒]




1. 歌劇「ホヴァンシチナ」 第3幕 から ( ムソルグスキー作曲 )
2. 歌劇「悪魔」プロローグ から ( アントン・ルビンシテイン作曲 )
3. 歌劇「スペードの女王」第2幕 第1場 から ( チャイコフスキー作曲 )
4. 歌劇「エフゲニー・オネーギン」 第1幕 から
   手紙の場面 “わたしは死んでしまいそうだ” ( チャイコフスキー作曲 )
5. バレエ「ラ・バヤデール」 第3幕 から ( ミンクス作曲 )
6. 歌劇「ボリス・ゴドノフ」 第3幕 第2場 から ( ムソルグスキー作曲 )
7. 歌劇「イーゴリ公」 から “ダッタン人の踊りと合唱” ( ボロディン作曲 )
8. 「声と管弦楽のための協奏曲」 から 第1楽章 ( グリエール作曲 )
9. バレエ「瀕死の白鳥」 ( サン・サーンス作曲 )
10. 歌劇「スペードの女王」第3幕 第3場 から ( チャイコフスキー作曲 )
11. バレエ「海賊」 から “グラン・パ・ド・ドゥ” ( アダン作曲 )
12. 歌劇「イオランタ」 から “フィナーレ” ( チャイコフスキー作曲 )

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ソプラノ : タチヤーナ・パヴロフスカヤ (3曲目)
  〃 : ルネ・フレミング (4曲目)
  〃 : アンア・ネトレプコ (8曲目)
メゾ・ソプラノ : オリガ・ボロディナ (6曲目)
テノール : ウラディーミル・ガルージン (6, 10曲目)
バリトン : ドミートリ・ホロストフスキー (3, 10曲目)
バス : セルゲイ・アレクサーシキン (1曲目)
バレエ・ソロ
ディアナ・ヴィシニョーワ (5曲目)
ウリアナ・ロパトゥキナ (9曲目)
スヴェトラーナ・ザハロワ (11曲目)
ウラディーミル・ポノマリョフ (2曲目)
レオニード・サラファーノフ (5曲目)
イーゴリ・ゼレンスキー (11曲目)
バレエ : マリインスキー劇場バレエ
合 唱 : マリインスキー劇場合唱団
管弦楽 : マリインスキー劇場管弦楽団
指 揮 : ワレリー・ゲルギエフ

[ 収録: 2003年5月30日, マリインスキー劇場 (サンクトペテルブルク) ]




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