Shevaのブログ
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サイモンのインタビューPart6




An interview with Simon Keenlyside
at Bayerischen Staatsoper July 2004
Part 6


指揮者
聴衆「では指揮者はどうです?お好みはありますか?」
サイモン「ある。こうする指揮者が好みです。(オーケストラに音を抑えるように指示するゼスチャーをやってみせる。)オケにこの指示を出してるのを見ただけで、その指揮者が大好きになります(笑)。そうそう見られるもんじゃありませんよ。いつも指揮者が超有名人であるわけではありませんが、僕は指揮者には繊細で、しかも、言ってみれば、開けっぴろげであってほしいんです。

メータ
聴衆「具体的には誰がいいのですか?」
サイモン「う~ん最近はね。ズービン・メータは最高ですよ。話し合いが持てるから。こんな感じ。
『ズービン、違う、僕はこうやりたいんです。なぜかっていうと…』
『なぜかと言うと?』
『こうしたいからです。~♪~♪~♪』
『じゃあやりたまえ。』
『いいんですか!』
で、うまくいかないと…
『やっぱあかん! やめろぉ!』

ムーティ
ムーティは気難しいです。ほんとに。でもいろいろ教わりましたよ。イタリアのやり方をね。リハーサルはもう気疲れでくたくた。でも我々二人だけだと、友人と呼べる存在です。みんなの前では、『マエストロ!』と言うしかありません。答えは返ってこない。舞台の上では。でも彼はすばらしい音楽家です。ムーティのモーツァルトはイタリアのモーツァルトだと言う人もいますけど。たとえそうだとしても、すばらしい音楽なので僕はかまわないんですけどね。」

ヴェルザー=メスト
聴衆「ヴェルザー=メストは?」
サイモン「彼は昔からの友人で、だからこそあまり仕事はいっしょにしてこなかった。これは健康的なことです。なぜなら指揮者と友情を築くということは簡単なことではないからです。そうなんです。指揮者と歌手の関係はフェンシングの試合をやっているようなものです。でもフランツとはもう知り合って15年以上にもなるし、少しずついっしょに仕事し始めています。

聴衆「それはあなたがヴェルザー=メストの仕事の仕方が好きだからですか?」
サイモン「友達は好きですよ。深遠なる音楽性を共有する友人は。でもステージでその人が何を成し遂げるかということは、その人の人格や音楽性とは関係ないことなんです。」

司会「両者には違いがあるということですね。」
サイモン「あるかもしれない。個人的には、僕は、わが友フランツの才能をよくわかっているので、今後たびたびいっしょに仕事したいと思っているのです。
僕達は、シューマンのすばらしい合唱曲、ゲーテの「ファウスト」からの情景(Szenen aus Goethes Faust)」と『ドン・ジョヴァンニ』をチューリッヒでやるつもりです。

司会「そのシューマンはどこでやるのですか?」
サイモン「チューリッヒ。」
聴衆「チューリッヒ?」
サイモン「そうです。」
聴衆「いつですか?」
サイモン「いつだろうね。」
司会「でもヴェルザー=メストはもうチューリヒ(歌劇場音楽監督)を離れるんじゃ…」 (※註6-1)
サイモン「あー、そうだったね。まあもう音楽監督ではないから、客演になるわけだね。これは、政治とは無関係とは言えないが、僕は、フランツや、僕達ヨーロッパの歌手や指揮者は、違うパースペクティヴを持つことが重要でないかと思うことがあるんだ。だから、フランツにとってクリーヴランド行きはすごくいいことだと思うんだ。(※註6-2)
何よりも、まったく違う世界を体験することは自身の向上にもつながるし、いいことだと思うのだよ。フランツはすばらしい音楽家だし、彼がどこへ行こうと、僕の友達でいてくれるなら僕はハッピーなのです。

サー・ピーター
聴衆「ミュンヘンでは何をやりますか?」
サイモン「フィガロ。」
聴衆「ケント・ナガノが振るの?」
サイモン「ナガノだって?」
司会「ナガノがミュンヘンで…」
サイモン「ナガノがここで振るの?」
(インタビュアーは聴衆に説明する。「来年はサイモンはアルマヴィーヴァ伯爵と「ファルスタッフ」のフォードを歌うのです。」)
サイモン「で、誰が振るんだって?ナガノ?」
司会「いやナガノが振るのは『ビリー・バッド』ですよ。」
サイモン「僕のじゃなくて?」
聴衆「ナガノが来るのは来年以降です。」
サイモン「ズービンはどうしたの?」
聴衆「ズービン・メータはもうやめるんですよ。」
サイモン「何だって!」
司会「2006年に。」
サイモン「それは残念。」
聴衆「ジョナスのあとはアルブレヒトです。」
サイモン「誰?」
司会「サー・ピーター(ピーター・ジョナス・バイエルン国立歌劇場総裁)がやめたら、ゲルト・アルブレヒトが来るのでしょう。ジョナスはバイエルン国立歌劇場にとっては、人畜無害だったな。」
サイモン「ピーターはすてきな紳士で、いつも公演に来てくれる。これはなかなかないことですよ。頼りがいがあって、僕は大好きだよ。君がどう思ってようと、僕がどう思ってようと、かまやしない。言葉より行動が雄弁に物語っているから。」

では最後の歌を聴きましょう。

音楽:シューベルトの歌曲、「月に寄せるさすらいの歌(Der Wanderer an den Mond)」

サイモンはいやそうだったが、最後の小節を口笛で吹いた。
サイモンはせきばらいする。

司会「きょうはありがとうござました。ささやかなプレゼントがあります。」
(歌劇場のバッジ)
サイモン「えぇ、僕に? そんな、よかったのに。とってもすてきだ。ありがとう。きょうは、いらしてくれてありがとう。皆さん。」
(インタビュアーは聴衆にサインをもらうよう促す。)
司会「キーンリーサイドさんはこの後すぐに、「ロデリンダ」にいらっしゃるので…」
(ちょうどその夜は歌劇場でヘンデルの「ロデリンダ」が公演されていた。)

サイモン「最後に一言言わせてください。どんなに楽しかったことでしょう。
誰かに感謝すればするほど、その言葉が薄っぺらくなるものですが、それでも僕は言いたい。ピーター・ジョナスに感謝したい。ここはヨーロッパのどこよりもすばらしい音響の歌劇場です。ここで歌えることは幸せだと、彼に言いたい。浅薄に聞こえるかもしれないが、ほんとなんです。」
司会「じゃあここで歌って楽しかった?」
サイモン「楽しいどころか深遠な体験でした。この経験に感謝したいと、ピーターに言いたい。ますますウソっぽく聞こえるけど、ピーター、僕はここが好きだよ! 言葉で言い表せないぐらい。さあ、これでよし。
ミュンヘンの小さなバッジ、すてきだよ。」
(了)



※註6-1 ヴェルザー・メストは2005-06シーズンから、チューリヒ歌劇場音楽監督に就任するらしい。Franz Welser-Möst took on the newly created position of General Music Director at Zurich Opera House on 1 September 2005. His contract runs until 31 July 2011

※註6-2 In September 2002 Welser-Möst accepted the position of musical director of the Cleveland Orchestra, although he maintained his links with Zurich Opera as its Principal Conductor

※数々の助言と暖かい励ましをくれたSardanapalusさまに感謝いたします。
彼女のご指摘で主なものはコメント欄に書かせていただきましたが、ほかにも沢山、恥ずかしくて書けないような基本的な間違いも訂正させていただきました。本当に感謝です。
※参考にさせていただいたサイトさんはリンクしてあります。ありがとうございました。






An interview with Simon Keenlyside
at Bayerischen Staatsoper July 2004
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