2023.02.28(火) 環境問題報道から PFAS
<PFASに免疫毒性>血中濃度高いほどコロナ抗体減
米研究チーム
・米軍基地や工場周辺など各地で汚染が問題になっている有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)の血中濃度が高い人ほど、
新型コロナウイルスに対する抗体が少なくなる傾向があるという研究結果を、
米マウントサイナイ・アイカーン医科大学の研究チームがこのほど発表。
・妊娠中の感染が出産に及ぼす影響調査の一環。
研究チームは「PFASが免疫毒性をもつ証拠を補強する結果だ」としている。
・研究チームは、血液中のPFAS濃度と免疫力の関係に注目。
新型コロナに感染した24~46歳の妊婦計72人の血しょう(血液の液体成分)を測定し、
感染後につくられる抗体の一つ「免疫グロブリンG」(IgG)と、
16種類のPFASの関係を調査。
・その結果、9種類のPFASが、
60%以上の妊婦の血液から検出された。
そのすべてで、
PFAS濃度が高いほど、IgGの抗体価が低い傾向がみられた(別項)。
なかでもペルフルオロオクタン酸(PFOA)など4種類は、
その傾向が強いことが分かった。
・PFASの血中濃度(中央値)は、
9種類のうち最も高かったPFOAで血しょう1ミリリットル当たり0・91ナノグラム。
最も低いもので同0・1ナノグラムだった。(1ナノグラムは10億分の1グラム)
・全米アカデミーズでは、
健康影響の可能性が懸念されるレベルとして、
PFOAなど7種類のPFASを合計した血中濃度を同20ナノグラムとする勧告値を定めている。
・今回の結果からは、
この勧告値より低いレベルでも免疫に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。
・論文は、科学誌『エンバイロメンタル・リサーチ』(15日付)に掲載された。
※別項:
IgG抗体価を低下させる可能性が判明した9種類のPFAS
PFOS、
●PFHxA、
●PFHxS、
●PFOA(※直鎖状)、
●PFHpS、
PFDA、
PFNA、
PFBS、
PFUnDA。
(注…●は傾向が強い4種類)
※PFASとは?
ファーストフード世界大手米マクドナルドは1月13日、
2025年までに全ての包装・容器からPFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)を全廃すると発表。
アマゾンも12月1日、
自社ブランド「Amazon Kichen」の食品製品の包装・容器で同じくPFASの使用を禁止した。
・PFASは、1940年代頃から普及していった化学物質で、
水や油をはじく、
熱に強い、
薬品に強い、
光を吸収しない等の特性を持ち、
撥水剤、
表面処理剤、
乳化剤、
消火剤、
コーティング剤等に幅広く用いられてきている。
・PFASは「PFC(パーフルオロ化合物)」の名称で呼ばれることも多い。
PFASは、実際には数多くの化学物質の総称で、2018年に経済協力開発機構(OECD)の報告書は、
PFASには4,730種類以上があると報告している。
特に有名なのは、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)と
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の2つ。
・PFASは、英語で「Forever Chemicals(永久に残る化学物質)」とも呼ばれ、
自然界や体内で分解されにくく、
一度生成されると蓄積されやすい。
その理由は、PFASを構成する炭素とフッ素の結合が、
有機化学で作りだせる結合の中で最も強力なものの一つであることに由来している。
・但し、実際に永久に残るわけではなく、
半減期が常用されている化学物質の中では4.5年と非常に長いため、
この名前が付いている。
・そして、PFASは、各々種類に応じて半減期は異なり、
例えばPFOAは約5年、
PFOSは2年から3年だ。
・しかし、ハーバード大学公衆衛生大学院のジョセフ・アレン准教授が2018年にワシントン・ポスト紙に投稿したOp-edの中で、
警鐘を鳴らすために「Forever Chemicals」の言葉を用いたことで一気に広まった。
同准教授は、「Forever Chemicals」の頭文字略称「FC」が、
「フッ素(F)-炭素(C)結合」と一致することからも「Forever Chemicals」のネーミングを持ち出した。
・PFASの人体への侵入経路としては、
水と食品。
水に関しては水道水からの侵入。
食品については農作物栽培での土壌からの侵入や、
食品の包装・容器から侵入するの双方がある。
・食品からの暴露量では、
欧州食品安全機関(EFSA)が2018年に発表した調査報告書によると、
PFOAでは、乳及び乳製品」「飲料水」「魚及びその他の海産物」の摂取で、
PFOSでは、「魚及びその他の海産物」「肉及び肉製品」「卵及び卵製品」の摂取で食事暴露量が高いことがわかった。
・PFASの健康への悪影響では、
同じく欧州食品安全機関(EFSA)の報告書によると、
PFOAは血清総コレステロールの増加、
PFOSは成人の血清総コレステロールの増加や子供のワクチン接種での抗体反応の低下が特定された。
・血清総コレステロールの増加は、
高脂血症、
動脈硬化、
糖尿病、
甲状腺機能低下症、
肥満他につながる。
・他にも、PFOAとPFOSの双方で、
出生時体重の減少、
PFOAで、
肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の高血清値の有病率の増加について、
リスクがあると判定されている。
※人間の体は巨大な化学工場である。
薬物が入れば、何らかの影響を受けるのは自明の理。
・PCBもそうだったが、
人間の社会活動にとって有益な物質だった。
それが、人体に入ることによって、
とんでない毒物であることがわかり、
製造禁止・使用禁止物質となった。
・新しい物質、
新しい薬物を作った時は、
生物への影響を評価した上で、
工業生産の適否を決めてもらいたいものである。
<PFASに免疫毒性>血中濃度高いほどコロナ抗体減
米研究チーム
・米軍基地や工場周辺など各地で汚染が問題になっている有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)の血中濃度が高い人ほど、
新型コロナウイルスに対する抗体が少なくなる傾向があるという研究結果を、
米マウントサイナイ・アイカーン医科大学の研究チームがこのほど発表。
・妊娠中の感染が出産に及ぼす影響調査の一環。
研究チームは「PFASが免疫毒性をもつ証拠を補強する結果だ」としている。
・研究チームは、血液中のPFAS濃度と免疫力の関係に注目。
新型コロナに感染した24~46歳の妊婦計72人の血しょう(血液の液体成分)を測定し、
感染後につくられる抗体の一つ「免疫グロブリンG」(IgG)と、
16種類のPFASの関係を調査。
・その結果、9種類のPFASが、
60%以上の妊婦の血液から検出された。
そのすべてで、
PFAS濃度が高いほど、IgGの抗体価が低い傾向がみられた(別項)。
なかでもペルフルオロオクタン酸(PFOA)など4種類は、
その傾向が強いことが分かった。
・PFASの血中濃度(中央値)は、
9種類のうち最も高かったPFOAで血しょう1ミリリットル当たり0・91ナノグラム。
最も低いもので同0・1ナノグラムだった。(1ナノグラムは10億分の1グラム)
・全米アカデミーズでは、
健康影響の可能性が懸念されるレベルとして、
PFOAなど7種類のPFASを合計した血中濃度を同20ナノグラムとする勧告値を定めている。
・今回の結果からは、
この勧告値より低いレベルでも免疫に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。
・論文は、科学誌『エンバイロメンタル・リサーチ』(15日付)に掲載された。
※別項:
IgG抗体価を低下させる可能性が判明した9種類のPFAS
PFOS、
●PFHxA、
●PFHxS、
●PFOA(※直鎖状)、
●PFHpS、
PFDA、
PFNA、
PFBS、
PFUnDA。
(注…●は傾向が強い4種類)
※PFASとは?
ファーストフード世界大手米マクドナルドは1月13日、
2025年までに全ての包装・容器からPFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)を全廃すると発表。
アマゾンも12月1日、
自社ブランド「Amazon Kichen」の食品製品の包装・容器で同じくPFASの使用を禁止した。
・PFASは、1940年代頃から普及していった化学物質で、
水や油をはじく、
熱に強い、
薬品に強い、
光を吸収しない等の特性を持ち、
撥水剤、
表面処理剤、
乳化剤、
消火剤、
コーティング剤等に幅広く用いられてきている。
・PFASは「PFC(パーフルオロ化合物)」の名称で呼ばれることも多い。
PFASは、実際には数多くの化学物質の総称で、2018年に経済協力開発機構(OECD)の報告書は、
PFASには4,730種類以上があると報告している。
特に有名なのは、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)と
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の2つ。
・PFASは、英語で「Forever Chemicals(永久に残る化学物質)」とも呼ばれ、
自然界や体内で分解されにくく、
一度生成されると蓄積されやすい。
その理由は、PFASを構成する炭素とフッ素の結合が、
有機化学で作りだせる結合の中で最も強力なものの一つであることに由来している。
・但し、実際に永久に残るわけではなく、
半減期が常用されている化学物質の中では4.5年と非常に長いため、
この名前が付いている。
・そして、PFASは、各々種類に応じて半減期は異なり、
例えばPFOAは約5年、
PFOSは2年から3年だ。
・しかし、ハーバード大学公衆衛生大学院のジョセフ・アレン准教授が2018年にワシントン・ポスト紙に投稿したOp-edの中で、
警鐘を鳴らすために「Forever Chemicals」の言葉を用いたことで一気に広まった。
同准教授は、「Forever Chemicals」の頭文字略称「FC」が、
「フッ素(F)-炭素(C)結合」と一致することからも「Forever Chemicals」のネーミングを持ち出した。
・PFASの人体への侵入経路としては、
水と食品。
水に関しては水道水からの侵入。
食品については農作物栽培での土壌からの侵入や、
食品の包装・容器から侵入するの双方がある。
・食品からの暴露量では、
欧州食品安全機関(EFSA)が2018年に発表した調査報告書によると、
PFOAでは、乳及び乳製品」「飲料水」「魚及びその他の海産物」の摂取で、
PFOSでは、「魚及びその他の海産物」「肉及び肉製品」「卵及び卵製品」の摂取で食事暴露量が高いことがわかった。
・PFASの健康への悪影響では、
同じく欧州食品安全機関(EFSA)の報告書によると、
PFOAは血清総コレステロールの増加、
PFOSは成人の血清総コレステロールの増加や子供のワクチン接種での抗体反応の低下が特定された。
・血清総コレステロールの増加は、
高脂血症、
動脈硬化、
糖尿病、
甲状腺機能低下症、
肥満他につながる。
・他にも、PFOAとPFOSの双方で、
出生時体重の減少、
PFOAで、
肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の高血清値の有病率の増加について、
リスクがあると判定されている。
※人間の体は巨大な化学工場である。
薬物が入れば、何らかの影響を受けるのは自明の理。
・PCBもそうだったが、
人間の社会活動にとって有益な物質だった。
それが、人体に入ることによって、
とんでない毒物であることがわかり、
製造禁止・使用禁止物質となった。
・新しい物質、
新しい薬物を作った時は、
生物への影響を評価した上で、
工業生産の適否を決めてもらいたいものである。