時間グスリ

　世の中にいくら高価な妙薬を使っても治らない病を、時間の経過によって治すことを時間グスリと言うとか。身体的な病気でなく気の病（やまい）の場合は「時間グスリ」による治療法が最も効果があるそうだ。
　東日本震災で故郷や肉親を失った人々の、喪失感心のダメージは経験しない人には到底計り知れない程のスケールであると思う。また、当事者でない者が安易に口先だけの慰めの言葉をかけるのは、空々しい感があり、つい躇われる。
　そんな時は前出の「時間グスリ」に頼るしかないのだろうか。よしんば気持ちの病は時間で治療出来たとしても、住まいや働く処、津波防御策など、環境ハード面の復旧が進まなければ病気は再発し、より重篤になるだけであろう。
　真の復興への道程は遙か遠くなってしまう。被災地域以外では早くも風化現象が普遍化しつつある昨今。世界の何処かで「絆グスリ」と言う特効薬、妙薬は発見されないものだろうか。