本日の地方紙河北新報の読者投稿欄 特集「お弁当」に本日掲載された。少し前に新聞社担当者から電話があり、内容について確認するかのような事を聞かれ、投稿がフェクションでないかの裏付けを取っているんだと新聞社の確たる報道姿勢に感心させられた。
出した内容は、私が福島の片田舎の小学2年のお昼、弁当の時間、当時は未だ給食がなく各自弁当を持参した。私の家は町から遠い田舎で全て自給自足、殆ど全て自前で間に合わせていた。味噌はもちろん、醤油、納豆、お酒(どぶろく)など、その醤油を作る元になるモロミ樽に、採れたキュウリやナスを漬け込んで味噌漬けのようにしたものを、母が麦飯と一緒に弁当箱に詰めてくれた。
オカズはこの漬物一品だけ。机の上に取り出し粗末なおかずを隠すように食べていると、大学を出たばかりの女先生が、「美味そうな味噌漬けね、先生大好きひとつ頂戴」と言われ、自分でつまみ食べられた。「とっても美味しい」と言われ、粗末なおかずで恥ずかしかった気持ちがいっぺんに嬉しくなった。
当時卵焼きなど入れてくる子供は裕福な家の子達で、殆どは、沢庵や梅干しの日の丸弁当か、オカカを乗せたぐらいだった。育ちざかりの子供に少しでも栄養のあるものをと親心に思っても余裕がない家計。先生はそうした家の事情を慮(おもんばか)ったうえで、先生にとってはとても美味しいオカズなんだよと優しくいたわってくれたのだろう。
私はそのことと、描いた絵を上手と褒められたこともあり図画が大好きになった。これは今でも続いている。オルガンしかなかった田舎の学校で、放課後女先生が繰り返し弾くメロディーが永く心に残った。後で曲名が分かりそれは「乙女の祈り」だった。若い女先生がどんな思いでオルガンを弾いていたのか知るすべもなかったが、哀愁に満ちたオルガンの調べと、当時のセピア色になった記念写真、同色のべっ甲色になった古漬けが懐かしく思い出され、貧しかった当時と、その時の女先生の優しさを忘れることが出来ない。
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