私の故郷福島県北地方は明治から昭和初期にかけて養蚕が盛んな土地で、何処の家でも蚕を飼い、繭から絹糸を紡いで機織りをしていた。母も若い頃からそうした仕事に従事しており、近年まで内職で真綿紬をしていたものだ。
結婚当時母が大事にしていた天蚕で作った着物が連れ合いにプレゼントされた。あれから50年余娘に引き継がれていた着物が、娘から染物屋に頼んで染直し、縫い直したと報告があった。天蚕織(てんさんおり)とは山繭(やままゆ)と言われる野生の蚕の薄緑色のきれいな繭から紡いで織る希少品。
私も子供の頃近くの山でよく見かけたものだ。数が少なく高価だと聞いていた。私に似たか着物を着る事が好きな娘は、若かりし頃、御用始めなどに振り袖で出勤、報道写真を撮られたものだが、今回は大学の催しに着て行ったらしい。
大学教員の着物姿は珍しがられたとか。
母が着た古い着物を大事に現代風に染直して、着継いでくれた思いやりがうれしい。早速95歳になる母に報告しようきっと喜んでくれるだろう。
山繭を織った天蚕の着物、自分で着付けたとか