食道の解剖と機能の特性
上部食道括約筋:逆流と誤嚥を防ぐ機能
下部食道括約筋:胃内容物の逆流を防ぐ
犬:横紋筋 猫:下部1/2は平滑筋
粘膜、粘膜下織、筋層、外膜の四層構造 漿膜が無い
迷走神経とその側枝神経(舌咽、咽頭、反回)が分布、
脳幹及び自律神経からの食道神経支配、
食道感覚受容器からの求心性神経支配が行われている
食道疾患
症状:
吐出、嚥下障害、嚥下痛、唾液過多
進行により誤嚥性肺炎(粘液濃性鼻汁、肺音異常、発熱、咳)
原因疾患:
先天性(巨大食道、輪状喉頭部機能不全、血管輪による閉塞)
急性 (異物、麻酔による胃食道逆流・嘔吐・腐食性化学物質・
投薬「特に猫のドキシサイクリン」等による食道炎)
慢性(裂孔ヘルニア、食道狭窄、腫瘍、
重症筋無力症・多発性神経炎・アジソン病・甲状腺機能低下症・自律神経失調症・鉛中毒・特発性による巨大食道
診断:
X-RAY(造影)、内視鏡、CK上昇(筋炎)、蛋白尿(免疫介在性疾患)
CBC異常(アジソン、免疫介在性疾患、鉛中毒、肺炎)、
電解質異常・ACTH負荷試験(アジソン)
テンシロンTEST・Ach抗体(重症筋無力症)
内科治療:
粘膜保護剤 スクラルファート懸濁液(0.5~1g PO q8h)
胃運動亢進 モサプリド(0.25~1.0mg PO q12h)
胃酸分泌抑制 ラニチジン(1.0~2.0mg PO q12h)
オメプラゾール(0.7~2.0mg PO q12h)
特異的治療:
重症筋無力症 ピリドスチグミン(1.0~3.0mg PO 8~q12h)
ネオスチグミン(0.04mg IM q6h)
4~6週間毎に抗体価測定 寛解までの期間1~12ヶ月以上
アジソン病 コルチコステロイドとミネラルコルチコイド
自律神経障害 ベサメコール
異物除去や狭窄 内視鏡下にてバルーン拡張術を1~2週間毎に数回実施
施術後ステロイドや抗生剤を使用する
外科治療:
穿孔、内視鏡で取れない異物、狭窄に適応
粘膜・粘膜下織と筋層・外膜を夫々2~3mm間隔で4-0 PDSにて二層縫合する
結び目は食道腔側に出す
長軸方向への伸縮性が乏しいため部分切除は30%が限界
胸骨舌骨筋、肋間筋、横隔膜、心膜、大網フラップにより被覆可能
胸部食道では側副循環は期待できないので術後の血液供給は不十分
大網と漿膜が無いために他の消化管のようなフィブリンによる早期被覆
修復が生じにくい
食道自体の運動性、伸縮、唾液の流入などによる癒合不全が起きやすい
食事療法:
低脂肪・高蛋白食を少量頻回与える
巨大食道症、体重減少や重症例では胃瘻チューブを設置し投薬も
そこから行う
一時的な対応であれば高栄養輸液も有効である
予後:
原因により様々だが誤嚥性肺炎や穿孔を起こすと非常に悪い
大正動物医療センター 06-6551-5106
大正動物医療センター http://www.taisho.animal-clinic.jp/