大正動物医療センター(大阪市大正区)のブログ

大阪にある大正動物医療センターのブログ

食道疾患

2009-12-03 16:25:23 | 吐き気や嘔吐

食道の解剖と機能の特性

上部食道括約筋:逆流と誤嚥を防ぐ機能

下部食道括約筋:胃内容物の逆流を防ぐ

犬:横紋筋 猫:下部1/2は平滑筋

粘膜、粘膜下織、筋層、外膜の四層構造 漿膜が無い

迷走神経とその側枝神経(舌咽、咽頭、反回)が分布、

脳幹及び自律神経からの食道神経支配、

食道感覚受容器からの求心性神経支配が行われている

食道疾患

症状

吐出、嚥下障害、嚥下痛、唾液過多

進行により誤嚥性肺炎(粘液濃性鼻汁、肺音異常、発熱、咳)

原因疾患

先天性(巨大食道、輪状喉頭部機能不全、血管輪による閉塞)

急性 (異物、麻酔による胃食道逆流・嘔吐・腐食性化学物質・

    投薬「特に猫のドキシサイクリン」等による食道炎)

慢性(裂孔ヘルニア、食道狭窄、腫瘍、

     重症筋無力症・多発性神経炎・アジソン病・甲状腺機能低下症・自律神経失調症・鉛中毒・特発性による巨大食道

診断

X-RAY(造影)、内視鏡、CK上昇(筋炎)、蛋白尿(免疫介在性疾患)

CBC異常(アジソン、免疫介在性疾患、鉛中毒、肺炎)、

電解質異常・ACTH負荷試験(アジソン)

テンシロンTESTAch抗体(重症筋無力症)

内科治療

粘膜保護剤  スクラルファート懸濁液(0.51g PO  q8h)

胃運動亢進  モサプリド(0.251.0mg PO  q12h)

胃酸分泌抑制 ラニチジン(1.02.0mg PO q12h)

       オメプラゾール(0.72.0mg PO  q12h)

特異的治療

重症筋無力症 ピリドスチグミン(1.03.0mg PO  8q12h)

   ネオスチグミン(0.04mg IM  q6h)

 4~6週間毎に抗体価測定 寛解までの期間112ヶ月以上

アジソン病  コルチコステロイドとミネラルコルチコイド

自律神経障害 ベサメコール

異物除去や狭窄 内視鏡下にてバルーン拡張術を1~2週間毎に数回実施

        施術後ステロイドや抗生剤を使用する

外科治療

穿孔、内視鏡で取れない異物、狭窄に適応

粘膜・粘膜下織と筋層・外膜を夫々2~3mm間隔で4-0 PDSにて二層縫合する

結び目は食道腔側に出す

長軸方向への伸縮性が乏しいため部分切除は30%が限界

胸骨舌骨筋、肋間筋、横隔膜、心膜、大網フラップにより被覆可能

胸部食道では側副循環は期待できないので術後の血液供給は不十分

大網と漿膜が無いために他の消化管のようなフィブリンによる早期被覆

修復が生じにくい

食道自体の運動性、伸縮、唾液の流入などによる癒合不全が起きやすい

食事療法

低脂肪・高蛋白食を少量頻回与える

巨大食道症、体重減少や重症例では胃チューブを設置し投薬も

そこから行う

一時的な対応であれば高栄養輸液も有効である

予後

原因により様々だが誤嚥性肺炎や穿孔を起こすと非常に悪い

大正動物医療センター 06-6551-5106  

http://www.taisho.animal-clinic.jp/

大正動物医療センター http://www.taisho.animal-clinic.jp/


腸炎

2009-10-20 16:31:37 | 吐き気や嘔吐

1_2 はじめに胃のポリープ、リンパ球プラズマ細胞性腸炎について簡単にお話します。

2_7 胃ポリープの定義は「胃粘膜上皮が局在性増殖により胃内腔に隆起した病変で悪性でないもの」となります。一般に無症状であり、幽門を閉塞した場合に嘔吐などの症状が見られることがあります。胃の排出障害を起こさない限り、治療の必要がないと言われていて、外科的な切除により完治が期待できます。また、ヒトにおいては約半数が癌へと移行すると報告されていますが、小動物においては癌化するという証拠は得られていません。

3 次にリンパ球プラズマ細胞性腸炎(LPE)です。IBDにおいて最も多く認められるパターンであり、その原因として、腸粘膜バリア機能の低下、食事抗原に対する反応などが考えられていますが、現在のところ、その病理発生は十分に解明されていません。軽度では無症状のものから、重度では慢性の嘔吐、下痢、体重減少などが認められます。治療は主に食事療法、薬物療法が行われます。

4_2

それでは症例に入ります

未去勢、9歳のチワワで、急性の頻回嘔吐(二日間で5-6回)を主訴に来院されました。数ヶ月に一度程度の嘔吐はあったそうですが、その他に既往歴、投薬歴などはなく、稟告によると便の性状に異常はないとのことでした。

5_2 初診時の検査所見です。身体一般検査においては明らかな異常は認められませんでした。

6_2 血液検査結果です。

白血球数の上昇。カリウム、クロールの低下。ALPの上昇が認められました。

7_2 初診時のレントゲン像です。

胃内に液体の貯留を疑わせる、透過性低下領域が認められます。

8_4 図は幽門前庭部の横断面を示しています。複数の塊状病変が認められます。

9_2 次に内視鏡検査を実施したところ、幽門部に複数のmassを認めました。