命の次に大切なコーヒーを切らすとは何事だ、さすがのマミーだって許すわけにはいかないぜ。押仕入れの中で反省してもらわないとおいらの怒りがおさまらねぇ。そういやおいらの車の修理が終わったってレイノから連絡あったっけ。マミーには悪いけど、試運転もかねてちょいと旅に出掛けて来るぜ。レイノの野郎相変わらずいつ会っても酒クセェ、完全なアル中だなこりゃ。何、お前だってカフェイン中毒だろだって?上等だぜ表に出ろ。でもよこのアル中野郎とはなぜか気が合うんだよ。ロック好きの女嫌いってとこがよ。誰が笑っていいっていった、この野郎。レイノと俺は別に女の子を探しに行ったんじゃねぇぜ、たまたまバスがパンクして困った人があのエストニア人とロシア人の女2人組だったってだけでさ。ベッドの中だって俺りゃ指一本触れたりしなかった、本当だぜ。ホモじゃねえよ、カフェインと葉巻、そしてロックがあればおいらはいつだってご機嫌なのさ。でもレイノはそうじゃなかった。まさかあの痩せの方にゾッコン惚れこんじまいやがるとはな、おいらも意外だったぜ。ウォッカが恋人だって言ってた奴がよ。お礼に紅茶をおごってくれた時にはあの2人張り倒してやろうと思ったけど、デブの方もあれはあれで案外気がきいてたりするんだよ。プレゼントしてくれたコーヒーミル、今でも大事に使ってるからな。おっとそろそろまじて家に帰らないと、俺のマミーが本当にお陀仏になっちまう、少しは痩せたかな。さっきからミシンで何縫ってるかって?そんなのお前らに教えるわけねぇだろ。でもよ一つだけ教えてやるよ。おいらたちの名前の秘密。ヴァルト+レイノ≒バート・レイノルズ?!なっ、なめてんだろ。この映画、往年のロードムービースターに捧げられた分かりにくいオマージュになっているのさ。
愛しのタチアナ
監督 アキ・カウリスマキ(1994年)