ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

そこのみにて光輝く

2017年10月21日 | 激辛こきおろし篇


何回も有名文学賞の候補に上げられながら、受賞することなく非業の死をとげた作家佐藤泰志。本作はその佐藤の出身地である函館を舞台にした3部作のひとつだそうである。

同世代の村上春樹や中上健次の影に隠れてほとんど脚光をあびることのなかった佐藤は、晩年文芸新人賞応募作の下読みにまで身を落としたらしい。

作家の死後全著作が絶版状態にあったらしく、熊切和嘉監督『海炭市叙景』の映画化にあたっては函館市民有志たちの呼び掛けもあって実現したという。

そんな人生を悲観した作家の怨念がのりうつっているのか、ストーリー自体ものすごく暗いので注意が必要だ。綾野剛や菅田将暉見たさに無料公開されているYOUTUBEを見てしまうと後悔必至である。

事故のショックで失業中の元発破職人と母親の経営する場末のスナックで体を売りながら生計を立てている女の純愛ストーリーなのだが、TVドラマやCMに引っ張りだこの人気俳優が演じる役柄としては少し荷が重かったのではなかろうか。

地元の植木屋社長に愛人として囲われながら脳梗塞で寝たきりの実父介護を続ける千夏を演じた池脇千鶴の汚れぶりに比べると、綾野と菅田から世間のはみ出し者としての体臭がまったく伝わってこないのだ。

村上春樹の小説のようにやたらとSEXシーンが多いこの映画だが、男の尻ばかりを追い掛ける女性監督目線の濡れ場はちょいとシラケ気味。いつのまにかロリから大人の体付きに変わっていた池脇の脱ぎっプリが良かっただけに残念なカットが多かった。

原作が目指したのかもしれない、中上健次風の土着感が映画から伝わって来なかったのも致命的といわざるを得ない。要するに“街”が描けていないため、函館3部作と聞いていなければここがどこかもわからなかっただろう。

滑舌が悪すぎて脳梗塞オヤジが何を言っているのかはじめ聞き取れなかったラストの台詞を聞いて泣き崩れる〈ち~な~つー〉。もうどこにも逃げられないことを覚悟した女にただ寄り添うことしかできない男は、原作者同様やはり死を選ぶのだろうか。

そこのみにて光輝く
監督 呉美保(2014年)
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