ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

のんちゃんのり弁

2009年10月02日 | 映画館で見たばっかり篇
『いつか読書する日』から4年。緒方明が満を持して発表した新作は、なんとモーニングに連載された未完のコミックが原作だというから驚いた。名コンビの青木研次オリジナルの脚本から生み出された前2作はほとんど満点に近い完成度の高い映画だったが、今回は鈴木卓爾(園子温や矢口史靖監督の作品によく出ている俳優さん)と共同で脚本を担当しているというし、メインスポンサーには“木下工務店”というなにやら場違いの会社名がクレジットされていたため嫌ーな予感がしていたのだが、残念ながらその予感は見事に的中してしまった。

『かもめ食堂』の人気フードコーディネーター飯島奈美を招いて映画に登場する料理を監修させるなど、こだわりの緒方監督にしてはあまりにもミーハーなスタッフ起用にまずはげんなり。同じフードコーディネーターを使った凡作『なんきょくりょうりにん』などに比べれば、映画の出来自体は数段上であることは間違いないが、緒方明の実力からすると、この映画製作にあたっては(緒方組の俳優陣が数多く登場しているキャスティングはともかく)プロデューサーサイドの意見がかなり色濃く反映されているとしか思えないのである。

一人娘ののんちゃん(佐々木りお)を連れて甲斐性のない夫(岡田義徳)の家は飛び出たものの、どこ行く宛てもなく母親(倍償美津子)の家に転がりこむ小巻(コニタン)。大人になりきれないシングルマザーの自立をカラッとうたいあげた自分探し物語は、系が違うのかもしれないがタナダユキの『百万円と苦虫女』にちょっと見似ている。そんな過去作品のいいとこどりをしたような形跡が所々に見え隠れする投げやりな演出に、どうしても満腹感を得ることができないのである。

壮絶なガチバトル?を経た後に、早朝の小料理屋でコニタンこと永井小巻が一人黙々とのり弁をこさえながら大泣きするシーンがある。これから小巻に訪れるであろう責任の重さに耐えられず流した涙は、大人になりきれない若年夫婦を描いたダルデンヌ兄弟の秀作『ある子供』で主人公の男がラストに流した涙と同じ味がしたのではないだろうか。この映画の中で唯一緒方監督らしさを感じた一瞬である。次回は是非、青木研次とコンビを戻して(本気の)オリジナル作品を撮ってほしい監督さんである。

のんちゃんのり弁
監督 緒方 明(2009年)
〔オススメ度 


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