私は訪問してリハビリを提供する仕事をしています。
先日、咽頭癌や心不全など沢山の既往歴がある89歳男性、独居のAさんの所へ伺いました。
その方は原因が分からない頭痛や吐き気、めまいに悩まされていました。
先日は大学病院の定期受診の後だったので、医師に診てもらいどのような診察だったか聞いてみました。
利用者「医者は異常なしやと言いました」
私 「異常がなくて良かった」
利用者 「でもな、異常なしと健康は違うやろ」
私はハッとしました。
大きな病気が見つからなかった点においては良かったかもしれません。
しかし、体調が優れない原因は分からず、苦しさや不安は解決していません。
検査結果には現れない症状は継続しています。
検査で異常がなく、慢性的に続く頭痛や吐き気、眩暈などの症状は自律神経や心理面が影響しているかもしれません。
その方は最近よく鍋を焦がしたり、自宅での転倒、デイサービスでのトラブルなどがあります。
一人暮らしの中、身体機能、認知機能の低下が進行していく。
測り知れない不安があるでしょう。
健康とは検査で異常がない状態ではなく、
“心理的安心”が担保されている状態であると再認識できました。
反対に言えば少々身体に問題があっても、心理的に安定していれば穏やかに過ごせるケースも少なくありません。
今回はもちろん医師は悪くなく、家族やケアマネジャー、ヘルパー、デイサービススタッフなどAさんに関わる全ての人でAさんの不安をいかに軽減できるかを話し合う必要性を感じました。
現代は数字など根拠を大切にする風潮があり、検査異常なし=問題なし(健康)と考えてしまう傾向があります。
しかし、この0か100かの思考は非常に怖いと思います。
何事も一つの視点だけで判断するのではなく、多面的にみる事が大切だと改めて学ぶことができました。