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【政府の行うマクロ経済政策⑧】纏め

2018-02-06 22:00:02 | マクロ経済の基礎の基礎

【政府の行うマクロ経済政策⑦】からの続き

 此処迄学んで来ても、今迄説明されて来たことが一見正しく思わされるが、総てが余りに安易過ぎるのでは疑問を持つ人も多いかも晴れない。「不況が『政府支出の増加』や『減税に依って公債の増加』等で克服出来るならば、1930年代の不況が何故此れ等の方法を使って克服され無かったのか?」と疑問を持つのは当然であろう。
 然し、1930年代に起こった彼の大不況をケインズ派の理論を以て解決出来たとしても、当時の経済学者や政治家は、「経済には完全雇用を齎すような内在的な仕組みが在ることや、赤字支出がインフレーションを齎す」と信じ込んで居たのであり、「物価や賃金が下方に硬直的であれば失業が発生するか?」ということや「貨幣の創出によって賄われる財及びサービスに対する政府需要の増加若しくは減税が其の失業を除去出来るか如何?」という質問すら受けて無かっただろう。

 政府需要を増加させる⇒完全雇用下ではインフレーションを呼び込む。1930年代には完全雇用の状態だったか?
 経済が完全雇用以下の状態であるとき⇒総需要の増加⇒国民所得NNPと雇用を増加させる。

 完全雇用で妥当する命題を完全雇用以下の状態に適用するという誤った論法を理解すれば、1930年代の凡その経済学者や政治家が彼の大不況に為す術が無かったことを理解出来よう。

 

【政府の行うマクロ経済政策】の要約

 ① 国民国内純生産報告書には、其の左側に書かれる「消費C+民間国内純投資NPDI」に、政府支出Gが加算されて書かれることに成る。そして右側には、間接事業税(IBT)が加算されることに成る。

② 政府と外国貿易を無視すると、民間国内純投資NPDIは必ず民間純貯蓄NPSに等しく成る。政府を入れると、民間国内純投資NPDI+政府支出G=民間純貯蓄NPS+純租税NTの等式に変化する。

③ 均衡国民所得NNPの一部は政府需要GDと純租税NTに依存する。国民所得NNPに関与するケインズ理論は、3つの方法で提示することが出来る。
第一に、総需要AD関数と総貯蓄AS関数を描くことが出来る。総需要AD=投資需要ID+政府需要GD+消費需要CDから構成される。消費需要CDは可処分所得DYの関数である。企業貯蓄(留保利潤)=0と仮定すれば、可処分所得DYは純租税NTだけ国民所得NNPと異なる。
第二に、「貯蓄S+租税T」図と「投資需要ID+政府需要GD」図を使うことが出来る。租税、投資需要ID及び政府需要GDは定数として取り扱われ、貯蓄Sは可処分所得DYと、其れに純租税NTを一定とした場合の国民所得NNPに依存すると仮定される。均衡国民所得NNPは、貯蓄S+租税T=投資需要ID+政府需要GDと成る点で与えられる。

最後に、消費需要関数CDを式で表わすことが出来、そして均衡国民所得NNPを代数的に見付け出すことが出来る。

④ 総ての方法が同じ結果を齎さなければ成らない。理論は政府需要GDの増加が政府需要GDの変化に限界貯蓄性向mpcの逆数を乗じた額だけ国民所得NNPを増加させるということを意味して居る。減税は、租税Tの変化に限界消費性向mpcの限界貯蓄性向mpsに対する比を乗じた額だけ国民所得NNPを増加させる。

⑤ 古典派経済学者達は、政府需要GDの増加や減税の効果に関してはケインズ派とは違った結論に達した。租税T又は債権売却の何方かに依って賄われる政府需要GDの増加は、彼等の分析に依れば総需要ADに何の影響も及ぼさ無いとしたのだ。古典派は、調達された総ての資金は兎も角支出されて居た筈である⇒需要の如何なる増加も起ら無いとした。
 ケインズ理論は、貯蓄Sの減少若しくは貨幣市場に於ける資金を巡る競争の激化に依って投資需要IDは影響を受け無いと仮定して居る(☜殆どの場合これは正しく無いと思われる)⇦ 若干の貯蓄は投資を誘発するであろうし、若干の投資需要は信用のコストが増加すると現れて来無いだろうとして居るにも拘らず、ケインズ理論は質的には正しいとして居る ⇨政府は他の人々に利用され得る資金を其の額だけは減少させること無しに貸し付け可能資金市場から若干の資金を引き上げることが出来るとした☜ そうで無ければ流通して無かったであろう貨幣が貸し付けられ支出される。

⑥ 古典派の間違いは、「経済は常に完全雇用の状態に在り、需要の如何なる増加も総需要ADを過剰にして終う」と仮定して居たことで⇒貨幣の創出に依って作り出される政府需要の増加は、物価騰貴を齎すであろうと信じて居た。然し現実の社会経済は完全雇用に達して無いことが常態で、貨幣を増出することに依って賄われる政府支出は国民所得を乗数倍だけ増加させる。

⑦ 公債は、一国の政府に依って発行され且つ政府外で保有されて居る証券を包含する。公債は、何時か将来に於いて償還され尽くして仕舞う必要は無い。政府は多くの会社が行うのと同じことを行うことが出来るのであって、古い債券が満期に成った時に新しい債券を発行する。債権に対しては利子を払わなければ成らないが、或る一定数の人々は「此れは未来世代に掛かる負担である」と信じ込んで居る。然し未来の世代は利子を支払わなければ成らないと同時に利子を受け取る立場にある。然し、利子を賄う為に未来世代が支払う租税が、彼等の活発な経済行動を抑えると考えるならば、「公債は負担に成り得る」と考えることは強ち間違いとは言え無い。

⑧ 公債が負担に成るか如何に拘わらず、完全雇用政策は必ずしも公債が増加することには繋がら無い。政府が政府需要GDの増加若しくは減税に依って総需要ADを増加し様とするならば、政府は貨幣を創出することに依って赤字を賄うことが出来る。議会が此のことに反対するとしても、政府は債券を連銀に売ることは可能である。連銀が受け取る利子は財務省に還って来るので、此の方法は債券を増加することには成ら無い。議会が、財務省が連銀に直接債権を売ることを許可し無いとしても、財務省が人々に債権を売却することで連銀が人々から其の債権を買い入れれば。当初の財務省の思惑は達成される。以上のことは財務省と連銀との意思疎通が成されて居る必要無く起こることである。連邦準備当局が其の時点での経済常態を財務省や議会と同じ様に評価するならば、財務省が人々に債権を売って居る債券を連邦準備当局は自動的に買い入れるであろう。

⑨ ケインズ理論は「不十分な需要の為に生ずる不況は長続きするとは限ら無い」ということを我々に教えた。「完全雇用を前提とした古典派の分析に依る政策の主張」に惑わされて「完全雇用以下の状態での赤字」を、古典派の主張通りに受け止めては成らない。

 

つづく

 

 ※ 本投稿文中の綴りや語句の使い方や理論分析の誤りは、適当に解釈して貰うか、コメント欄で指摘して頂きたい。


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