魂魄の狐神

天道の真髄は如何に?

【失業とインフレーションの解析①】

2018-02-07 19:43:00 | マクロ経済の基礎の基礎

 マクロ経済学を学ぶ為の最大の目的の一つは、「非摩擦的失業は如何にして発生するか」、更に「其の失業が発生した時に、如何にすれば其れを除去出来るか」を学ぶ為である。其れ等について学びを進める上で、「インフレーション」に関して次の様な説明を受けた。
 総需要が完全雇用を超えるとき⇒物価が上昇し⇒インフレーションが発生する☜ 総需要の増加は完全雇用に達して無い状況の下ではインフレーションを引き起こさ無い☜「完全雇用が達成される前迄は、需要の増加は賃金と物価に重大な影響を及ぼさ無いで産出高と雇用を増加させることが出来る」と学んだ⇒「インフレーションが存在し無い完全雇用」は達成可能な目標と成り得る☜ 物価が上昇しつヽあるときは、需要は超過してなければ成らないし、失業を発生させ無いで需要の少減が可能と成る。結論として、「非摩擦的失業が存在するならば、インフレーションを発生させ無いで総需要を増加せしめつヽ、失業を除去を出来る」のである。
 然し此処迄行き着いた経緯は、多くの仮定を置いて、社会経済の現実とは掛け離れた前提の下で、辿り着いたというものである。完全雇用と物価安定の両立は、こと程左様に難しいのである☜ 摩擦的失業の程度の不確実さから、非摩擦的失業を経験して居るか如何かを知ることが出来無いので、失業自体すら検証出来無ければ其れを阻止することは適わ無い。更に、物価の安定と完全雇用は両立出来無い目標であるかもしれ無いということであれば、何方か一方を棄捨する以外無いという厄介な問題が横峠って居るのだ。

 安土桃山時代から始まったとされる江戸時代に定着して居たとされる里山文化や循環型社会の様に静的経済社会で可能であったろう社会経済の変化が緩慢であった時代には、社会経済が動的な現在の様に摩擦的失業は存在し無かったであろと想像出来る。現在は、他の要因が一定とすれば、変化が激しければ激しい程、摩擦的失業は頻繁に発生する。経済の変化の程度は様々であるので、摩擦的失業の比率も区々で在り、此のことが健全な経済政策の実現を困難なものにして居る。
 時々の失業率の把握は出来るが、其の失業率で占める摩擦的失業を捉えることは極めて困難と考えられて居る。であれば、其れを除去する為に総需要が何れ程必要であるかも失業統計から見分けることは出来ず、金融・財政処置も施し様が無いのだ。もし誤った推論で摩擦的失業率を割り出せば、総需要の増加がインフレーションを誘発し兼ねないことも起こり得るのだ。
 摩擦的失業率を把握出来る確実な方法が見当たら無い限り、金融、財政に対する緩和策の孰れに対しても賛成派と反対派に分かれるだろう。摩擦的失業率を解消するのに、此れ自身が把握出来無ければ総需要が現在充分であるか如何かも把握出来無いので、総需要は政府に依って規制出来るし、又そうするべきと大多数の人が考えて居るとしても、総需要が現在充分であるか不足して居るかを把握出来無い限り、人々は政府の政策に不安を抱くことに成るのである。

 1958年の米国で「物価の上昇と非摩擦的失業が同時に存在する」と疑られるべき状況があった。今迄説明して来たインフレーション理論に依ると「物価は需要が完全雇用産出高を超えるときだけ上昇する」というものだったが、「物価は左の様な状況以外でも上昇することがあると思われることが起きた」と思った人が多かったのだ。其処で「インフレーションに対する新しい説明が必要である」と言うことに成った。1958年の出来事に対して探ると、経済が何か新しい現象を経験したかは確実では無かったが、「独占力」に依るものであることが如何やら原因であると意見が一致した様であり、こういう原因で起こった物価の上昇の現象を、新たに「コストプッシュ・インフレーション」と名付けた。
 一方、物価指数と失業指数は不完全であり、更に失業のうち何れだけの比率で摩擦的失業が存在したかは正確に把握出来無いから、「インフレーションの唯一の原因が総需要の超過である」と強く信じる人には、上の様な新たなインフレーションの形を認め難いかもしれ無いが、かといってコストプッシュ・インフレーションを可能性の無いものだと捨て切れるものでは無い。
 「賃金と物価が競争の不完全性の為に、下方に硬直的であるならば、其の同じ不完全性が総需要を超過させずに賃金と物価の上昇を齎させ得る」と考えは説得力があるし、十分有り得ることである。「極めて競争的な経済では、賃金は雇用機会に比較して求職者が多い場合に下落し、此の様な経済では物価は生産能力が過剰である場合下落する」が、譬え失業が存在しても組合が賃金の引き下げを阻止出来、又譬え生産能力の過剰が在ったとしても企業が価格の引き下げを阻止出来るならば、賃金と物価を受給の関係で説明出来無いことに成る。組合が独占力を保持して居るならば、失業が存在して居るにも拘わらず組合が賃金の引き上げを要求し、然も時には其れを実現することを阻止する手立ては見当たら無い。企業が独占力を保持して居るならば、生産能力の過剰が存在するにも拘らず、企業が価格を引き上げるのを阻止する手立ては無い。不完全競争経済下では、コストプッシュ・インフレーションの発生する可能性は確実に存在すると言える。


つづく

 ※ 本投稿文中の綴りや語句の使い方や理論分析の誤りは、適当に解釈して貰うか、コメント欄で指摘して頂きたい。


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