民事訴訟
訴訟審理
裁判関与者の役割分担
当事者主義と職権主義
〇[処分主義] 訴訟の開始及び終了に関しては当事者の意思が尊重される。
[審理過程に於ける当事者と裁判所の役割分担]
〇[弁論主義] 審理のための資料の収集に関しては当事者が支配権を持つ。
〇[職権進行主義] 口頭弁論を中心とする審理の場の設定及び其の運営の面では裁判所が積極的役割を果たす。
〇[釈明の問題] 裁判書が当事者の資料提出に関して当事者に働き掛けることが出来る義務及び権限をいう。
〇[釈明権の問題] 当事者が裁判所の裁判手続が遵法されているかを監視する権限をいう。
弁論主義
意義 弁論主義とは訴訟の審理の為の資料の提出を当事者の権限とする原則をいう。
一、裁判所は当事者が主張して居ることに限って判決の基礎とすることが出来る。⇒訴訟資料と訴訟資料とは明確に区別される。「当事者のどちらであるかは問わ無い」(最判昭和46年6月29日判時636・50〔101〕) (最判昭和27年11月27日民集6・10・1062〔102〕)
二、裁判所は当事者間に争いの無い事実は証拠調べをする事無く判決の基礎としなければなら無い(自白の拘束力)。
三、裁判所は当事者の申し出の無い証拠方法を職権で取り調べることは出来無い。(最判昭和46年6月29日判時636・50〔101〕) (最判昭和昭和27年11月27日民集6・10・1062〔102〕)
※「弁論主義」は当事者と裁判所との間で資料の提出につき当事者の支配権を認めることである。⇒対立当事者間での権限分配の問題では無い。
相手方に有利、自己に不利な事実主張や証拠提出についても、裁判所は此れを認め相手方有利の判決を下す(最判昭和41年9月4日民集20・7・1314〔103〕)。⇒ 一、の法理については、「主張共通の原則」、三、の法理については、「証拠共通の原則」という。
妥当範囲及び根拠 「弁論主義」:民事訴訟の重要な基本原理。民事訴訟法には此れを直接定めた規定は無い。
排除:私人が自由に処分することが出来無い身分関係を巡る訴訟である「人事訴訟」では、「訴訟要件の審理」については「弁論主義」は排除或いは制限される。
人訴(職権探知)第二十条 人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない。
[民事訴訟で弁論主義が採られている根拠]:下の二大説が対立
〇民事訴訟の対象⇒私的自治の原則の妥当する実態法上の権利義務を巡る紛争⇒訴訟の審理に当たっても出来る限り当事者の意思を尊重すべきであると言う要請(処分権主義にも共通の要請)に基づくとする見解(本質説)。
〇此の他(手段説)⇒訴訟の結果(判決)に最も強い利害関係を持つ当事者に資料の提出を任せる⇒裁判の内容を出来る限り真実に近付ける為の最良の手段である。
〇此の他、(多元説)というものがある。
?弁論主義が適用される事実 ?実体法の定める要件に直接該当する事実である「主要事実(直接事実)」?主要事実を推認するのに役立つ「間接事実」、?証拠の信用性に関する「補助事実」
職権探知主義の対義語。通説によると、資料(事実と証拠)の収集・提出を当事者の権限および責任とする建前のこととされ、具体的には以下の三つの内容に分けて考えられる。なお、弁論主義の適用される事実は主要事実に限られ、間接事実や補助事実には適用されないというのが通説である点に注意を有する。詰まり裁判所が此れ等の事実を職権探査し、証拠として採用し判決に生かすと認められていた⇒当事者の一方については、不当に不意打ちを喰らわせられる。
(3)釈明
①意義 (釈明権等)第百四十九条 裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
2 陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる。
3 当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
4 裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。
(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)第百五十七条 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2 攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。
②行使 釈明権:事件を審理している裁判長の権限であるが合議制で審理為される場合は陪席裁判官も裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる(第百四十九条2項)。当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる(当事者の求問権:第百四十九条3項)。
釈明権の行使が出来る時期:
(弁論準備手続における訴訟行為等)第百七十条 裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
5 第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
また、期日外でも出来る(第百四十九条1項前段参照)⇒電話やファックスを使って為してもよいとされている。
〇釈明の内容を相手方に通知しなければなら無い場合⇒第百四十九条4項 裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。⇒「双方審尋主義を実質的に保障」
民事訴訟規則63 (期日外釈明の方法・法第149条)
1 裁判長又は陪席裁判官は、口頭弁論の期日外において、法第149条(釈明権等)第1項又は第2項の規定による釈明のための処置をする場合には、裁判所書記官に命じて行わせることができる。
2 裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について前項の処置をしたときは、裁判所書記官は、その内容を訴訟記録上明らかにしなければならない。
③釈明処分 ③釈明処分
(釈明処分) 第百五十一条 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
二 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
「釈明処分」の目的⇒訴訟関係を明瞭にすること、証拠資料を得ることは無い。然れども、
(自由心証主義) 第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
④釈明処分の範囲
当事者の申し立て、主張などの不明瞭な点(消極的釈明)を指摘するだけでなく、当事者に勝訴の為に必要な新たな申し立て、主張、立証を示唆すること(積極的釈明) も含まれる(訴えの変更を示唆する積極的釈明を赦した例→最判昭和45年6月11日民集24・6・516[108])。⇒一般論としては、相手方投資背者に偏雛裁判を受けたとの印象を受けたとの印象を与える恐れがあるので、裁判所は積極的釈明を行うことは慎重でなければなら無い。裁判所はあらゆる自事情を斟酌して此処の事件ごとに積極的釈明を行うか如何かを事件ごとに判断する以外ない。←抽象的基準を設けることは極めて困難である。
⑤釈明義務 (釈明権等) 第百四十九条 裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
⇒釈明は裁判所の権限とされるが、一般には「(釈明権等)
第百四十九条 裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。⇒裁判氏の権利。
然し、一般には「一定の場合」には釈明権の行使は裁判所の義務であると解釈されている[=釈明義務」。
釈明義務は裁判所の「後見的」な活動の中心を成すものとして認められている。裁判書が釈明義務を果たさずに判決した場合には、其の判決は上級審により是正される。⇒
〇事件が控訴審に継続している場合、新たに釈明することになる。
〇上告審は法律審であり当事者に資料の提出の補充を赦すことは出来無い→原判決破棄→釈明よる資料提出の機会を与える為に源信に差し戻す。
※最高裁判所に対しては、釈明義務違反[法令違反」を理由に上告をすることは出来無い。⇒上告受理の申し立てが出来るに過ぎ無い。民訴312・318条参照。
〔釈明権の不行使が上級審で違法とされるような釈明義務は如何なる場合に認められるか?〕
〇一般論、釈明義務<釈明権、消極的釈明
〇積極的釈明:当事者の法律的知識、代理人の力量、事案の態様 、訴訟の具体的展開等の要素(此れは釈明の範囲と同様)から、此処の事件毎に判断する以外無い。⇒
弁論主義⇔裁判所の後見的・積極的役割→以下に調和させるか?の問題。
954判例の動向:釈明義務の範囲を拡大する傾向(最判昭和39年月6日民集18・5・954[109]、最判昭和44年6月24日民集23・7・1156[110]、最判昭和51年6月17日民集30・6・592[111]、最判平成8年2月22日判時1559・46[112]、最判平成9年7月17日判時1614・72、最判平成12年4月7日判時1713・50等)
② 期 間 期間とは一定の継続的な時間を言う。
〇職務期間(不真性期間)~徒過しても違法の問題は生じ無い。⇒裁判所に設定される。
第二百五十一条 判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。
民事訴訟規則159 (判決書等の送達・法第255条)
1 判決書又は法第254条(言渡しの方式の特則)第2項(法第374条(判決の言渡し)第2項において準用する場合を含む。)の調書(以下「判決書に代わる調書」という。)の送達は、裁判所書記官が判決書の交付を受けた日又は判決言渡しの日から2週間以内にしなければならない。
〇固有期間(真性期間)~尊寿し無ければ期間を適用された者の訴訟行為は違法となる。⇒当事者其の他訴訟関係人に設定される。
(期間の種類)
〇行為期間 一定の行為を其の間に行うことを義務付けるのが通常である。
(訴訟能力等を欠く場合の措置等)
第三十四条 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる。
(法定代理の規定の準用)
第五十九条 第三十四条第一項及び第二項並びに第三十六条第一項の規定は、訴訟代理について準用する。
(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律 (昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
(準備書面等の提出期間)
第百六十二条 裁判長は、答弁書若しくは特定の事項に関する主張を記載した準備書面の提出又は特定の事項に関する証拠の申出をすべき期間を定めることができる。
(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条 5 第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
(控訴期間)
第二百八十五条 控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。
(控訴の規定の準用)
第三百十三条 前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。
(即時抗告期間)
第三百三十二条 即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
(再審期間)
第三百四十二条 再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から三十日の不変期間内に提起しなければならない。
〇中間期間 期間経過後に一定の行為を赦したり効果を発生させる為の期間。
(公示送達の効力発生の時期)
第百十二条 公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
2 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。
3 前二項の期間は、短縮することができない。
(公示催告の期間)
第百三条 前条第一項の規定により公示催告を官報に掲載した日から権利の届出の終期までの期間は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、二月を下ってはならない。
(差押債権者の金銭債権の取立て)
第155条 金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
〇期間の長さ
法律で規定されている場合=法定期間~(例)上訴・再審の期間
裁判所が個々の事件で決定する場合=裁定期間~(例)補正期間、準備書面提出期間
〇法定期間~不変期間と通常期間がある。
法定期間のうち通常期間と裁定期間とついては、裁判所は。裁判所が此れを伸縮することが赦されている。
第九十六条 “裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。”ただし、不変期間については、この限りでない。
〇不変期間~裁判所が此れを伸縮することが出来無い(例)上訴期間
(期間の伸縮及び付加期間)
第九十六条 裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。ただし、“不変期間については、この限りでない。 ”
※此れ等の場合であっても伸縮が禁じられる場合
(訴訟行為の追完)
第九十七条 当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。ただし、外国に在る当事者については、この期間は、二月とする。
2 前項の期間については、前条第一項本文の規定(第九十六条 裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。ただし、不変期間については、この限りでない。 )は、適用しない。
(公示送達の効力発生の時期)
第百十二条 公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
2 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。
3 “前二項の期間は、短縮することができない。”
(期間の伸縮及び付加期間) 2 不変期間については、裁判所は、遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができる。⇒此の付加期間については本来の期間と一体となって一つの不変期間となる。
〇期間の不尊守と追完
当事者差のほかの訴訟関係人の期間不尊守⇒行為期間の場合:その行為出来無くなる。⇒当事者の帰せ無い不尊守の場合救済→通常期間亦は裁定期間(裁判所による伸縮可能な期間)~対処可能。不変期間の場合~期間経過後の訴訟行為を一定の要件が備わっている場合に許容することによって救済が図れる。⇒「訴訟行為の追完」当事者の籍に帰すべきことが出来無い場合(訴訟行為の追完) 第九十七条 当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。ただし、外国に在る当事者については、この期間は、二月とする。
※当事者の責に帰すべきことが出来無い事由とは、当事者として勝訴を目指して訴訟の追行をする者に通常期待される注意を尽くしても避けることが出来無かったと言える事由と解される。→(大判明治43・10・19民録16・713、大判大正7・7・11民録26・1197)(大判大正13・6・13法律新聞2335・15)等天変地変に限定はされず。 年末の混雑(最判昭和55・10・28判時984・68〔116〕)。
訴訟代理人亦は補助者(使用事務員等→本人に指揮監督権が及ば無い場合疑義あり)の過失→当事者本人の過失と看做す。⇒通説・判例(最判昭和24・4・12民集34・97、最判昭和27・8・22民集6・8・707〔117〕)。
〇公示送達を知らずに上訴出来無かった当事者への追完の許容の問題
原告が被告の住所を知っていた悪意の場合~追完許容(最判昭和42・2・24民集21・1・209〔118〕)、この場合であっても何らかの事情により被告が公示送達が為されることを十分に予測できた場合は控訴の追完は赦されない(最判昭和54・7・31判時944・53〔119〕)。
[裁判所の訴訟指揮]
期日の指定、期日の実施其の他種々の行為
〇訴訟の進行の指揮
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