魂魄の狐神

天道の真髄は如何に?

【Trump大統領の渡航制限策の是非を米国の移民政策の現状から判断すべし。】

2017-02-06 04:15:09 | 人権

外国人労働者受入政策
アメリカの移民政策

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 2.現行の外国人受入れ制度

 移民としてアメリカの永住権を申請する方法には、1)家族関係による申請、2)雇用関係による申請、3)多様化プログラムによる申請――の3つがある。

 家族関係による永住権の申請は、申請者の移民としての地位及び呼寄せ家族の続柄・年齢によって、優先順位と年間発行枠が設けられている。

 雇用関係による永住権の申請は、スポンサーとなる雇用主が行うもので、労働のカテゴリーに応じて、優先順位と移民ビザの年間発行枠が定められている。また職種によっては、雇用主が永住権申請書類を市民入国管理局に提出する前にアメリカ労働省から労働証明書を取得する必要があり、この審査に数年かかる場合がある。また、アメリカに原則100万ドル以上(雇用促進地域の場合は50万ドル以上)の投資を行い、10人以上の正社員を雇用するなど、雇用の創出に貢献する外国人投資家は、本人が永住権を申請することができる。

 多様化プログラムは抽選式グリーンカードとも言われ、世界各国を6つの地域に分け、抽選で職業や財産などに関係なく、各国平等に移民のチャンスを与えるシステムである。過去5年間の移民データに基づき、移民の少ない地域から抽選で年間5万人に移民ビザを発給する。ただし、年間発給数の上限は、1カ国3500人(年間発行数の7%)となっている。

現行の移民受け入れ制度
(年間総枠67万5000人)
家族関係による申請(年間枠48万人)
最優先 アメリカ市民の配偶者・21歳未満の子供、21歳以上のアメリカ市民の親(年間枠なし)
第1優先 アメリカ市民の21歳以上の未婚の子供(年間枠2万3400人)
第2優先(A優先) 永住権保持者の配偶者と21歳未満の未婚の子供(年間枠8万7934人)
第2優先(B優先) 永住権保持者の21歳以上の子供(年間枠2万6266人)
第3優先 アメリカ市民の21歳以上の既婚の子供及びその配偶者と子供(年間枠2万3400人)
第4優先 アメリカ市民の21歳以上の兄弟姉妹及びその配偶者と子供(年間枠6万5000人)
雇用関係による申請(年間枠14万人)
第1優先 科学、教育、芸術等の専門分野で卓越した能力を有する外国人、顕著な業績の研究者、多国籍企業の役員(年間枠約4万人)
第2優先 修士以上の学位をもつ専門職従事者、際立った才能をもつ外国人(年間枠約4万人)
第3優先 学士以上の学位をもつ専門職従事者、2年以上の見習い又は経験を必要とする熟練労働者(年間枠約4万人)
第4優先 宗教関係者、政府・国際機関関係者等(年間枠約1万人)
第5優先 アメリカへの投資を通じて雇用を創出する外国人投資家(年間枠約1万人)
多様化プログラムによる申請(年間枠5万5000人、うち5000人分はニカラグア・中央アメリカ救済法による特別枠として利用)

 非移民として一定期間アメリカで働くことを目的とする場合には、非移民就労ビザを取得する必要がある。最も一般的な非移民就労ビザは短期就労ビザ(H)であり、1)特殊技能従事者(H-1B)、2)短期・季節農業従事者(H-2A)、3)H-2A以外の短期・季節労働者(H-2B)、4)研修(H-3)――の4種類がある。特殊技能従事者ビザ(H-1B)は、建築、工学、数学、物理学、医学・衛生、教育、経営学、会計、法律、神学、芸術等に係る特殊技能を要する職業に一時的に従事する人のためのもので、代表的な職種には、コンピュータ・エンジニア、会計士、財務アナリスト、建築士、リサーチャーなどがある。H-1Bビザの発給数は、アメリカ人の雇用確保の観点から、年間6万5000人に制限されている。H-1Bビザ資格者の滞在期間は3年間であり、1度だけ更新可能(最長6年間)である。

 その他の非移民就労ビザには、重役・貿易駐在員ビザ、投資家ビザ(E)、企業内転勤者ビザ(L)などがある。

 1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)の補完協定は、アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国間における非移民の一時的な労働移動の円滑化を盛り込んでいる。このNAFTA専門職ビザより、会計士、建築士、技術者、経営コンサルタント、医師、看護人、科学者、教師等の専門資格を持つカナダ・メキシコの市民は、アメリカで非移民として協定に規定された専門職に就くことができるようになった。滞在期間は1年間であり、延長も可能である。ただしメキシコ人の専門職の入国については、協定発効当初より年間5500人に制限されてきたが、2004年1月からこの制限が撤廃された。

3.外国人受入れの現状

 アメリカ国勢調査局の資料によると、2003年のアメリカにおける外国出生者人口は3347万人(全人口に占める割合は11.7%)であり、うち帰化アメリカ市民が1284万人(同4.5%)、非アメリカ市民が2063万人(同7.2%)となっている。

 出生地別の割合は、ラテンアメリカ諸国が53.3%、アジア諸国が25.0%、欧州諸国が13.7%、その他の地域が8.0%となっている。外国出生者は、アメリカ国内で、37.3%が西部、29.2%が南部、22.2%が北東部、11.3%が中西部に居住している。入国時期は、2000年以降が13.6%、1990年代が36.6%、1980年代が24.0%、1970年代が13.7%、1970年より前が12.2%となっている。

 外国出生者の雇用者数は1927万人(男性1146万人、女性781万人)であり、その内訳は、管理・専門職518万人、サービス業449万人、営業・事務347万人、農林漁業30万人、建設・鉱業・整備228万人、製造・輸送・素材355万人となっている。

 2003年の外国出生者の失業率は7.5%であり、アメリカ出生者の失業率6.2%よりも高めとなっている。

 アメリカ移民法は、非常に変化の激しい法律であり、2001年9月の同時多発テロ事件以降は、2004年9月30日から原則全ての外国人渡航者に入国時点で指紋情報の読み取り及び顔画像の撮影を課すなど、申請手続・審査の厳格化等が進められてきた。移民法はまた時々の政治情勢によっても大きく左右される。2004年の大統領選挙においては、マイノリティー票獲得のため、共和・民主両陣営から不法滞在者の永住権取得に道を開く移民希望者に有利な法改正が提案された。アメリカの移民政策は、今後とも時々の情勢に応じ種々の改変が行われていくものと予想される。


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