空海の本を読み、かな文字成立に関心があったので、万葉仮名関連で読んでみたのが本書。
万葉集は全20巻、雄略天皇を始めとして皇族の御歌から始まり、7-8世紀後半までの4500首が収められている。主に大伴家持編集とされるが、橘諸兄、聖武天皇、孝謙天皇、平城天皇など関係者には諸説がある。使われている文字は万葉仮名、つまり全部漢字で書かれているが、原本はなく、平安時代後期に写本された2巻、4巻が残る金沢本、平安中期の写本で15巻が残る元暦校本、完全な形で残る写本は鎌倉時代後期の西本願寺本。
本書では、詠まれている歌から古代史をおさらいしている。万葉仮名の歴史、飛鳥の中での豪族の戦いを象徴するような大和三山の歌、乙巳の変で滅ぼされた蘇我宗家の歴史、中大兄皇子と持統天皇、天武天皇の確執、川島皇子、志貴皇子、大友皇子、草壁皇子、大津皇子、忍壁皇子、舎人親王、高市皇子、長屋王などの運命。柿本人麻呂と藤原不比等、藤原氏と橘氏、東歌に隠された政治的意図、多賀城と出羽柵を結ぶ英断、聖武天皇と藤原仲麻呂の盛衰、道教と和気清麻呂、大伴家持と旅人、大伴氏の系図と女性たち。
万葉集を代表する歌人として、紹介されているのが、謎の女王額田女王、恋多き石川郎女、実在が不明な柿本人麻呂、太宰府に左遷されたのか大伴旅人、民の苦しみを詠んだ山上憶良。本書内容は以上。
驚いたのは、平成28年に福岡県糸島市で1-2世紀に実用されていたと思われる硯が発見されていたという話し。漢字の日本列島輸入は、王仁博士の千字文、論語が4-5世紀とされていたはずなので、ずっと遡ることになる。考えてみれば、「漢倭奴国王」金印は57年にもたらされているはずで、奴国ではその御礼を書物として返礼したはずで、発見場所からしてその詔書を書いた硯かもしれない。銅鏡や勾玉も大量に見つかっている三雲・伊原遺跡が邪馬台国であった可能性だってある。
数年前に、近鉄八木で降りて、畝傍山から香久山まで歩いて登ってみたことがある。そこには甘樫丘、石舞台、飛鳥浄御原宮跡、飛鳥資料館などもあって、なかなか良かった。大宰府に立ち寄った時には、観光地化されていて、少しがっかりしたものだ。しかし、偶然だが、最近たびたび行くようになった近鉄西大寺、ここには平城京跡の広大な場所が整備されていて、どんな場所になるのかが楽しみである。