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意思による楽観のための読書日記

地球の履歴書 大河内直彦 ****

45億7千万年前に誕生したという地球の歴史がたどる軌跡を科学の視点から一般読者にわかるよう、面白く解説した一冊、面白かった。45億3千万年前にティアと呼ばれる火星ほどの大きさの惑星が地球に衝突、地球上は想像を絶するカオスが出現し数十年後に地球から2万メートル離れたところに月が誕生した。現在の月はその距離38万メートルなので、見た目で今の20倍ほどの大きさに見えたはずである。ドロドロに溶解した地球では、重い鉄やニッケルが中心部に沈みコアを形成、続いてケイ素やマグネシウムを含む物質が沈殿、マントルを形成する。表面は硬化して地殻となるが、45億年経過した今でも内部には溶解したままの物質が存在する。その後蒸発していた水分が地上に降り落ちて海が形成され、地上には地殻をすっぽりと覆う海ができた。月がクレーターだらけなのに対して、地球にはない理由はこの水が表面を洗い流したため。

白亜紀は1億4500万年前から6500万年前の8000万年の間、チョークと呼ばれる炭酸カルシウムの殻を作る植物プランクトンが堆積する地層を形成している。石灰石の層であり、もとは水深2000メートルの海底に堆積した堆積物で、地上に見える秋吉台や伊吹山もその一つ。石灰岩の一部には1億2千万年前ころに堆積した黒い頁岩の地層がある、有機物の塊でシェールであり、石油となって人類に恩恵をもたらした。有機物は酸素がある環境では不安定で分解されてしまうが、海底に堆積物やヘドロが溜まり「海洋無酸素事変」が世界的に起きた1億2千万年前と9400万年前の地層には必ず黒色頁岩の地層がある。海底火山が爆発し、海中に火山台地が形成、噴出したマグマが地球上に堆積した。地上には1000万から3000万種の生物が生息していた時代で、二酸化炭素濃度は現在の20倍、温室効果でサンゴ礁は南北40度まで分布、森林も極域まで広がっていた。その時代はユカタン半島に落ちた巨大隕石で終焉を迎えた。

2万年前の地球は海面が現在より130メートル低かったため、黒海は巨大な湖となり水面は下がっていた。9400年前頃、海面上昇があり、ボスポラス海峡が再び形成され黒海が海水化、黒海地方の住民が中央ヨーロッパに移住し、当時遅れていた欧州文明が栄えるきっかけとなる。「ノアの洪水」は本当にあったのである。地中海も600万年前には干上がった歴史を持つ。ジブラルタル海峡が地殻変動で隆起、地質学者がメッシニアン塩分危機と呼ぶこの事件が起きて、海抜マイナス2000メートルの広大な土地は分厚い塩分堆積物で覆われた不毛の土地となった。その状態は60万年ほども続いたあと再び沈下したジブラルタル海峡から滝のように入ってきた海水により、それ以降は二度と閉じられることのない地中海となる。ボリビアのウユニ塩湖、ヨルダンの死海はその名残を留める。

知的好奇心を駆り立ててくれる一冊、読み始めるとページめくりが止められない。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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