80年前に亡くなった詩人に名誉文化博士の称号が贈られました。「彼の詩がうみだす普遍的な力は、国や時代の違いをこえて広く共感を呼び起こした」。
1945年に日本で非業の死を遂げた韓国の詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)。彼が学んだ同志社大は命日の今月16日、戦後の節目に合わせて学位を贈呈しました。戦争の犠牲になった多くの学生の中に尹東柱がいたことを記憶し、歴史の教訓を心に刻みながら新しい時代を展望すべきであると考えて。
〈死ぬ日まで天を仰ぎ/一点の恥じ入ることもないことを/葉あいにおきる風にさえ/私は思い煩(わずら)った〉。死後に刊行された詩集『空と風と星と詩』で知られる「序詩」の一節です。
国民的詩人と愛される韓国をはじめ国境をこえて親しまれる尹東柱の作品。訳者の金時鐘(キム・シジョン)は「その時、その場で息づいていた人たちと、それを書いている人との言いようのない悲しみやいとおしさ、やさしさが体温を伴って沁(し)みてくる作品ばかり」だと。
朝鮮独立を扇動したとして治安維持法違反の罪で逮捕され、投獄先の福岡刑務所で獄死した27歳の詩人。それは自由と平和、人間らしい生活を求めながら、権力の暴虐によって奪われた一つの命のきらめきでした。
暗闇に葬られた尹東柱の詩は戦後、韓国のジャーナリストによって世に送り出されます。そのときに紹介された一編が「たやすく書かれた詩」でした。〈灯(あか)りをつよめて/暗がりを少し押しやり/時代のようにくるであろう朝を待つ/最後の私〉。人間の明日を信じて。
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