自民党の裏金問題の真相解明が進んでいません。衆院では、真相を知るキーパーソンとして旧安倍派の会計責任者で事務局長だった松本淳一郎氏の予算委員会への参考人招致を議決しました。しかし、松本氏は出席を拒否しています。石破茂首相(自民党総裁)も「民間人であり、検察の捜査で決着がついている」と述べ、出席を働きかける意志は示していません。参院では、政治倫理審査会に出席の意向を示した旧安倍派の議員27人のうち22人の審査を行いましたが、実態解明はなされていません。
これまで衆参政倫審に出席して証言を行った議員は一様に自身の関与を否定。一方で、パーティー券収入のキックバック(還流)の処理は、旧安倍派の会長と事務局長に慣行的に引き継がれていたとしています。
■不記載の指示濃厚
裏金づくりの中心に安倍晋三元首相と松本氏がいたことは間違いありません。
昨年末の政倫審で、旧安倍派の柴山昌彦衆院議員は2013年までは還流金を派閥側も議員側も収支報告書に計上していたので「法的に全く問題ない対応を取っていた」と主張。しかし、14年ごろ、派閥事務局から秘書に「今後は寄付を収支報告書に計上しないので、同様の対応を取ってほしい」と連絡があったと述べました。
柴山氏は「本当に法的に問題はないか。従来通りの寄付として双方計上し、運用できないか」と問い合わせたものの断られたとしています。旧安倍派の関芳弘衆院議員は、22年春に「法的問題はないのか、あるなら運用を改めるべきではないか」と相談したところ、安倍氏から「他の人からも聞いている」との応答があったと証言しました。
安倍氏や松本氏が違法性の認識を持ちながら、収支報告書への不記載を指示していた疑いが濃厚です。
■食い違う発言内容
さらに、安倍氏の提案で還流中止が決められたものの、安倍氏の死去後、還流が再開された経緯も焦点です。
松本氏は公判で、22年4月の幹部会合で還流中止が決まったものの、同年7月に安倍氏が死去した直後、ある幹部から還流の「再開」を求める声を伝えられたとしています。同年8月の幹部会合で還流再開が決まったと証言しました。
還流再開を決めた幹部会合には、塩谷立、西村康稔、下村博文の各衆院議員(当時)と世耕弘成参院議員(当時)が出席していました。
しかし、政倫審では塩谷氏が「話し合いの中で(還流)継続になった」と証言したものの、他の3氏は「結論は出なかった」(西村氏)「8月の会合で継続を決めたということは全くない」(下村氏)「何か確定的なことは決まらなかった」(世耕氏)と述べており、発言内容が食い違ったままです。
裏金問題の真相解明は今国会の焦点の一つである「政治改革」の大前提です。自民党が自ら真相解明に乗り出さないのであれば、出席を拒否できない証人喚問で関係者を集め、真相を問いただすしかありません。
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